見落とすと痛いコストを知っていますか?

不動産投資ブームが続く中、既に収益不動産をご購入なさっている方、これから購入しようという方も多いでしょう。

その中で、1棟目を購入したばかりの方から購入前の業者の事業計画と実際の収支が合わないということをよく相談されます。

原因は様々ありますが、事業計画のシミュレーションが甘いケースがほとんどです。事業計画の中でも見落としがちなコストはいくつかあるのですが、その中で今回は入退去コスト、修繕費についてお話します。

物件の管理運営でかかる費用とは?

入退去コスト・修繕費などはひとまとめにすると運営コストです。これは物件を維持管理するうえでは必ずかかってくるため、見落とすと手痛い出費です。

物件を維持管理していくために必要なコストは管理委託費、固定資産税、銀行返済などがメインです。業者の事業計画にも載っているかと思います。

ただ、細かな費用が抜けがちですのでしっかりと確認してください。それは下記のような、いわゆるビルメンテナンス(BM)費用です。

  • 清掃費
  • 設備点検費
  • 共用部電気代、水道代

さらに、事前で見込んでおいたほうが良いものとして、先ほど挙げた「入退去コスト」と「修繕費」が挙げられます。

これは事業計画の段階では考慮されないことがほとんどで、物件を運営して始めてわかった、という人も多く見られます。

いつかは必ず出る費用:入退去コスト

入退去と大規模修繕は日常的にあるわけではありません。これらはいつ来るとはっきりとはわかりませんが、物件をしっかりチェックすれば大体の時期と概算コストは試算可能です。

まずは入退去コスト。退去のあった部屋の原状回復費と次の入居者をつける際の広告費が主な費用です。

入退去はどんな物件でも必ず発生しますので、ほぼ固定費と考えるべきです。

入居者が高齢者や生活保護の場合には退去が少ない前提で考えることもできますが、基本的には毎年一定数が入れ替わる前提でコストを見込んでください。

賃貸物件の平均的な入居期間をご存じでしょうか。単身者で4年、ファミリーで6年です。逆算すると1年間で入れ替わる入居者の割合が分かります。

単身者は25%(1 ÷ 4 = 0.25)
ファミリーは17%(1 ÷ 6 = 0.17)

物件やエリアによって多少違いはあるかと思いますので、そのあたりは物件の周辺相場を調べてください。

事業計画を立てる上では、全体の17~25%程度の入居者が入れ替わると考えておくのが妥当です。戸数が20のマンションなら年間で3~5戸は入退去があることになります。

次に、入退去に伴う具体的な費用である原状回復費と広告費です。

原状回復費は本当にマチマチです。ワンルームで清掃のみなら数万円、ファミリーでクロスも床も全面張替えとなると100万円近くになることもあります。

経験則からは、月額家賃の3~10カ月分といったところでしょうか。家賃5万円の部屋なら、15万円~50万円になります。

広告費も地域差があります。ただし、ゼロというところはほとんどありません。

都市部では概ね月額家賃の0.5~3カ月分。入退去があるたびに発生します。地方ではさらに2~5カ月分などもざらです。このあたりは地域と物件により差が大きいので、管理会社にヒアリングをして概算金額を想定しましょう。

いつかは必ずかかる費用:大規模修繕

次に大規模修繕やリノベーション。屋上、外壁、共用部など防水関連は10〜15年サイクルで修繕が必要です。部屋の設備や間取りも古くなってくると入居者ニーズとマッチしなくなります。

ただし、毎年発生するわけではないので長期計画の中で見積るコストになります。

修繕する箇所によってタイミングが様々ですし、コストの見積もりも物件の状態によって個別判断になってきます。これらの試算は購入前に管理会社や業者に確認をしてもらう必要があります。

たとえば、物件にエレベーターがある場合、形式にもよりますが古くなり全交換となると300万円〜800万円かかることもあります。これは、想定して積み立てていないといきなりは出せない金額ですよね。

費用は見落とさず、事業計画を確認しよう

順調に経営していても家賃収入の5~25%が入退去コストとして出ていきますから結構な割合です。新築だったり、賃貸ニーズが強かったりすると原状回復費や広告費が少なくてすみますが、基本的には見込んでおかないといけません。

入退去コストを忘れて事業計画を立てたら「実際には意外ともうからない」となるのは当然です。今後物件を購入される際には気を付けてくださいね。

以上村上俊介でした。