日本の成長企業はマザーズとジャスダックの統合で増えるのか?

東証1部偏重への変化にも注目

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マザーズとジャスダックが統合準備を開始との報道

2018年1月6日に読売新聞は、日本取引所グループ(8697)が新興企業向け株式市場の「マザーズ」と「ジャスダック」を統合する方向で検討に入ると報じています。記事によると、統合の目的は日本を代表する新興市場としての位置づけを明確にして投資家の資金や上場企業を呼び込みやすくし、市場を活性化させることにあるとされています。

ちなみに、日本取引所グループ(JPX)は、これまでのところ統合に関して正式には発表を行っていません。そのため、実際にいつから統合が行われるかは現時点では不明です。また、統合後の新市場の名称が「東証3部」となるのか、あるいはそれ以外の名称になるのかなども不明です。

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とはいえ、今後の日本の株式市場の行方を考えるうえでは重要なニュースであると思われます。そこで今回は、その背景や今後の影響について考えてみたいと思います。

東証1部偏重のきらいがある日本の株式市場

まずは、東京証券取引所(東証)のなかで、新興市場がどのような位置づけにあるかについて簡単におさらいをしたいと思います。

2018年1月9日時点での東証における上場企業数は3,603社となっています。このうち、東証1部が2,065社(全体の57%、以下同)、東証2部が521社(14%)、マザーズが246社(7%)、ジャスダック(スタンダード及びグロース)が749社(21%)、さらにTokyo Pro Marketが22社となっています。

一方、2017年11月の1日平均売買代金は、東証1部の3.7兆円(93%)に対して、東証2部は701億円(2%)、マザーズが1,076億円(3%)、ジャスダックが862億円(2%)と東証1部に大きく偏っています。

また、2017年12月末時点の時価総額は、東証1部が674兆円(96%)、東証2部が10兆円(1.5%)、マザーズが5兆円(0.8%)、ジャスダックが11兆円(1.6%)となっており、ここでも東証1部の存在感が圧倒的に大きくなっています。

今回報道された統合案は、東証1部に一極集中している現状を、新興市場であるマザーズとジャスダックを統合し活性化させることで変えていこうとしているということになります。

マザーズとジャスダックの違いとは

次に、マザーズやジャスダックが、そもそもどのようなコンセプトでできたのかを振り返ってみたいと思います。

マザーズは、1999年に既存の東証1部、2部(本則市場)とは異なる新興企業向けの市場として創設されています。特に重視されたのが「高い成長可能性」です。

このため、マザーズには成長企業のステップアップ市場という位置づけが与えられ、2011年にはそのコンセプトがより明確化されました。具体的には、比較的穏やかな上場廃止基準の適用は上場後10年までとされ、それ以降は本則市場と同水準の上場廃止基準が適用され、マザーズへの上場継続か市場2部への上場変更を選択することが求められるようになっています。

一方、ジャスダックの起源は、1963年に日本証券業協会が非上場企業の資金調達の場として設けた株式店頭市場にまで遡ります。これが1983年にベンチャー企業の資金調達の場として新店頭市場に改められ、その後、2004年に取引所免許を取得し、ジャスダックに名称を変更しています。

このように、マザーズと比べると歴史は古い一方、ジャスダックはベンチャー向けではあるものの、とりたてて「高成長」だけを強調した市場ではなく、多様な業態・成長段階の企業向けの市場というコンセプトになっています。

なお、上場申請時に求められる要件を見ると、流通株式の時価総額はマザーズ、ジャスダックともに5億円以上、東証1部および2部は10億円以上、流通株式比率はマザーズが25%以上、ジャスダックは条件なし、東証2部は30%以上、東証1部が35%以上などとなっており、ジャスダック、マザーズともに本則市場に比べると条件が緩くなっています。

マザーズやジャスダックの有力企業は?

直近のマザーズやジャスダックで、時価総額上位3社にランクされる企業は以下の通りです。

<マザーズ>
1位:ミクシィ(2121)
2位:CYBERDYNE(7779)
3位:そーせいグループ(4565)

<ジャスダック>
1位:ハーモニック・ドライブ・システムズ(6324)
2位:日本マクドナルドホールディングス(2702)
3位:セリア(2782)

まとめ

上述のように、東証における取引売買代金の9割強が東証1部に集中しています。また、新興市場の売買の中心は個人投資家となっており、海外投資家の存在感は大きくありません。

このため、新興市場を活性化させることで東証1部への偏重を改めるという発想それ自体は好ましい変化であると考えられます。また、新興市場に多数の新たなベンチャー企業を呼び込むことで、日本でも米国におけるフェイスブックやグーグルのような新興企業が大きく育つことにも期待したいところです。

とはいえ、それがマザーズとジャスダックの統合だけで実現されるとは限りません。新興市場に上場している、あるいはこれから上場を目指す企業の全てが高成長を求めているとは限らないこと、また、言葉は悪いですが、上場だけを目的として安住する企業も(本則市場も含めて)存在していると見られるためです。

今後は、日本に成長企業を増やしていくために、マザーズとジャスダックの統合においてJPXが上場要件を「より成長を重視」したものに変えていくのか、さらに、統合以外にも成長企業を増やすための新たな施策を提示していくかを注視していきたいと思います。

LIMO編集部

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