「人生100年時代」という言葉をよく耳にするようになりました。100歳まで生きなくとも、仮に60歳で定年を迎え、平均寿命を全うすることになれば、退職後20年近くも生活をしていかなければなりません。

健康であることが重要な要件の一つにはなりますが、皆さんは定年後どのように生活したいでしょうか。また、仕事ができるとすれば、どのような就労形態を望むのでしょうか。今回は平成28年度の厚生労働白書からデータを見ていくことにします。

60歳以降に希望する就労形態とは

同白書には、2014年に内閣府が行った「高齢期に向けた『備え』に関する意識調査」による60歳以降に希望する就労形態の調査結果があります。

これは全国の35歳〜64歳を対象にしており、調査の中で「60歳以降も収入を伴う仕事をする場合、どのような形態での就労を希望するか」と尋ねたものです。

まず調査結果からお示ししましょう。

男性の主な希望就労形態とその比率

  • パートタイム(短時間勤務など)の社員・職員:37.0%
  • フルタイムの社員・職員:36.7%
  • 自営業・個人事業主・フリーランス(家族従業者を含む):19.3%
  • 農林水産業:4.7%
  • 在宅就労:1.0%

女性の主な希望就労形態とその比率

  • パートタイム(短時間勤務など)の社員・職員:69.4%
  • フルタイムの社員・職員:12.7%
  • 自営業・個人事業主・フリーランス(家族従業者を含む):12.7%
  • 農林水産業:1.2%
  • 在宅就労:3.0%

男性は60歳以降もフルタイムの社員や職員でいたい

調査結果を見ると、男女で大きく異なるのは、男性は60歳以降もフルタイムの社員や職員でいたいと考える一方、女性はパートタイムの社員や職員をより多く希望している点です。

米国では「ギグ・エコノミー」という言葉が生まれているように、フルタイムの社員を採用するというこれまでの就業形態に加えて、プロジェクトごとに適切な人員を任命するような形態が拡大しています。

企業からすれば、平時は固定費を抱えることなく、優秀かつ適切な人材をプロジェクトごとに獲得していくほうが、費用対効果が高いということが認識されつつあるのでしょうか。

もっとも、労働市場で適宜人材を確保できる環境でなければ、「ギグ・エコノミー」は成立しにくいと言えるでしょう。問題は日本の労働市場が今後どのように変化していくかです。

この先、日本企業でもフルタイム採用の位置づけが変わってくれば、男性が希望する「60歳以降もフルタイムの社員・職員」という形での就労は難しくなってくる可能性があります。そうなると、需要と供給のミスマッチという状況も発生し得るでしょう。

女性はパートタイム希望者の比率が高い

一方、女性は圧倒的にパートタイムでの就業を希望しています。60歳以降も女性の場合は家事などに時間が割かれ、フルタイムでの仕事はしにくいということなのでしょうか。

ただ、採用する側からすると女性のほうが就労形態に関しては柔軟でありそうに見えるため、職種により差は出るでしょうが、女性にとっては職を手にする選択肢が多くなることもあるでしょう。

まとめにかえて

「人生100年時代」、そして「ギグ・エコノミー」というフリーランス時代が到来しつつあります。あなたは60歳以降にどのような仕事の仕方を望みますか。そしてそれはフルタイムですか、パートタイムですか。

青山 諭志