2. 繰下げ受給の注意点
繰下げ受給の注意点にはいくつかありますが、まず主なポイントを押さえておきましょう。
2.1 長生きできないと損をする
繰下げ受給の注意点として、早く亡くなってしまうと損をするということが挙げられます。
増額できても、亡くなる時期によっては総額が少なくなり、結果として「繰下げ受給をしない方がたくさんもらえていた」ということも起こり得るのです。
ただし、それぞれの寿命は誰にもわかりませんから、ここは割り切って選択することが大事になるでしょう。
単純計算で、受給開始から約12年が損益分岐点となります。
2.2 所得税や社会保険料の負担があがる
年金の受給額が増えるということは、その分所得があがるということです。所得は税や社会保険料に影響するため、支払うお金が増えるため、結果的に手取り額が少なくなります。
低所得者には軽減措置が設けられているため、額面と手取りは単純に比例するわけではありません。
この結果、額面ほどには手取りがあがらないということも起こりうるので注意が必要です。
また、医療や介護の自己負担割合があがる可能性もあります。
1割負担だった方が、2割負担や3割負担になることも。単純に医療費や介護費が2倍、3倍になるということなので、注意が必要です。
2.3 加給年金が受け取れない
年の差夫婦が気をつけたいのが、加給年金についてです。
加給年金とは、厚生年金に20年以上継続加入かつ65歳未満の配偶者または18歳未満の子供がいる場合に受け取ることができる年金です。
もし厚生年金を繰下げすると、加給年金を受け取ることができません。
総合的な年金を考えるときは、慎重に判断することが重要になるでしょう。
3. 75歳まで働ける?日本の健康寿命とは
繰下げ受給で注意したい点として、「長生きできないと損をする」と説明しました。
平均寿命が伸びている日本において、老後期間が長いとあれば「繰下げ受給のデメリット」は払拭できるように思えます。
しかし、健康寿命も忘れてはいけません。
2019年時点の健康寿命は、男性が72.68年、女性が75.38年です。
最大75歳まで繰下げられることもあり、最近では70歳以上も働くシニアが増えています。
確かに「人生100年時代」とはいいますが、しかし「75歳まで働くこと」を前提としたライフプランの設計は、少し不安が残ります。
今後も平均寿命が伸びる可能性はあるものの、誰もが健康的に働ける保障はないでしょう。
「働けなくなる」というリスクから目を背けることなく、対策をしておくことが大切になります。
働けないリスクへの対策方法は、保険や資産形成などいろいろあります。中には老後も資産運用を続けることで、資産が減るスピードをゆるやかにしているシニアもいます。
それぞれの資産状況や価値観に合わせ、適切に備えておきたいですね。