寒い毎日、冬は魚がおいしい季節
冬本番と呼ぶには若干早い気がしますが、今年は本当に寒い日が続いています。地球温暖化とは一体何なのだ?と言いたいくらいです。
ところで、寒くなると一層おいしくなるのが魚です。刺身、焼き魚、煮魚など料理方法もたくさんあります。もちろん、魚の種類によって違いはありますが、晩秋から真冬にかけてが一番おいしい季節ではないでしょうか。
激減する日本の漁獲量、ピーク時の3分の1未満に
しかし、既に報じられている通り、多くの魚で漁獲量が激減しています。
日本の海面漁業漁獲量(注:海で獲れる魚の量)は、ピークだった1984年の1,150万トンから2015年には355万トンへ減少し、2016年(速報値、以下同)は322万トンへと減少幅が拡大しました。
ピーク時からの減少率は▲72%となっており、この30年強の間に3割水準まで激減しているのです。
その中には、クロマグロのように資源保護の観点から国際規約に従って漁獲を抑制している魚もありますが、それを割り引いても“魚が獲れなくなった”というのは厳然たる事実です。
漁獲量の増加が続く数少ない魚「ブリ」、30年間で一時3.8倍増へ
一方で、全ての魚で漁獲量が激減しているわけではありません。中には年々漁獲量が増加し、過去最高水準にある魚もあります。その代表格が鰤(ブリ)です。ブリは不漁知らずの数少ない魚なのです。
こう書くと、“ブリは養殖がほとんどでしょ?”と思われる人もいるはずです。
しかし、ブリの養殖漁獲量は年によってややバラツキはありますが、1980年以降は年間平均14~15万トンで概ね一定しています。ピークは2012年の約16万トン、2015年は14万トン、2016年は14万1千トンでした。
一方、ブリの海面漁獲量は、1980年代は4万トン前後でしたが、1990年代に入ってから増加に転じて2014年は過去最高の12万5千トンとなりました。最低漁獲量だった1985年の約33,400トンのおおよそ3.8倍です。
確かに、まだ養殖ブリのほうの比率が多いですが、一般家庭の食卓に普通に並ぶ“大衆魚”の中で、ここまで漁獲量が増加した魚は他にないと言えます。
なお、この統計上では正確には「ぶり類」となっており、ブリの他にヒラマサやカンパチも含まれています。
ブリの漁獲量が増加している2つの要因を推測
では、なぜブリの漁獲量が顕著に増加しているのでしょうか?
筆者が見た限り、農水省の資料では明確な理由は示されていません。ただ、2つの要因が考えられます。
漁獲時期の季節性が薄れ1年間獲れるようになった
1つ目は、ブリの漁獲時期の季節性が薄れ、ほぼ1年間を通して獲れるようになったことです。これは海水温度の上昇の影響が少なからずあると言われています。
その一例かどうかわかりませんが、今年は北海道で秋以降の鮭(サケ)漁が記録的な不漁ですが、サケの代わりに網に大量にかかっているのがブリだというニュースが報じられていました。ブリの単価はサケ(正月用の荒巻鮭)の3分の1以下のため、漁師さんが死活問題だと悲鳴を上げていました。
こうした理由によってブリの漁獲量が増えているならば、それは手放しで喜ぶことはできません。
アジア諸国でブリを食する慣習が根付いていない
2つ目は、中国などアジア諸国ではブリの人気が低いというか、ブリを食する習慣がまだ根付いていないと思われることです。
2015年のブリ生産量(漁獲+養殖)は、日本が圧倒的第1位であり、第2位の中国はその約10分の1に過ぎないというデータもあります。韓国、台湾、フィリピンなどはさらに低い漁獲量です。
また、中国メディアで日本で食したブリの握り寿司などブリ料理を絶賛する記事が配信されていることなどを鑑みると、ブリはアジア諸国ではまだ馴染みが薄い魚と考えられます。
ブリのおいしさに気付かれてしまった可能性も
逆に言うと、アジア諸国の消費者、とりわけ、中国の消費者がブリの美味しさに気付くと、他の魚のように乱獲に遭う可能性もあります。
実は、前述したブリの海面漁獲量は、2014年をピークに減少に転じています。2015年はほぼ横ばいでしたが、2016年は104,800トン(前年比▲15%減)でした。まだ判断するのは早いかもしれませんが、漁獲量の減少局面に入ったシグナルかもしれません。
これから日本では“寒ブリ”の最盛期です。ほどよく脂が乗った寒ブリは、冒頭写真の寒ブリ丼だけでなく、ブリしゃぶやブリ大根にしても美味しい季節です。おいしいブリがいつまでも安心して食べられる時代が続いて欲しいものです。
LIMO編集部