楽しそうな英国の金融教育
前回の記事で紹介しましたように、英国では2013年9月に金融教育が4000校ほどある公立のセカンダリー・スクールの教育カリキュラム(National Curriculum)に組み込まれ、2014年9月から実施されています。
具体的に組み込まれたカリキュラムの科目は、公民(Citizenship)、算数、PSHE(Personal, Social, Health and Economics)の3つです。
2015年の冬に金融教育の授業をメディアに取材してもらって、その収録ビデオを見ることができました。「とても楽しそうだ」というのが筆者の最初の印象です。
記事末に2本の動画を貼り付けていますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
消費税と携帯料金体系
ちょっと内容を紹介しましょう。
取材したのはロンドンにある公立学校で、12-13歳のクラスです。2回にわたって授業を収録させていただいたのですが、1つ目の授業では日本の消費税に相当する英国の付加価値税(VAT)をテーマに取り上げていました。
英国では、例えばサンドイッチを買っても、持ち帰る場合とお店で食べる場合では税率が違っていることや、他の国の消費税と比較することなどでVATへの理解を深めようとしていました。
こうした身近なテーマを取り上げてお金に関する理解を深めることが目的ですが、このカリキュラムのなかでは、ほかには収入と支出のバランス、クレジットカード、ローン、年金、金融商品などなかなか難しいテーマも含まれています。
またもう一つのクラスでは、携帯電話の料金体系といったより実践的な勉強もしていました。携帯電話の利用状況に合わせた最適な料金プランや保障プランを選ぶためのグループ・ディスカッションを授業の中で行い、どのプランを選ぶかについて真剣に議論しています。
日常生活で役立つお金の知識や能力を養うことが目標であり、数学などの他の教科と違って実践的なテーマだからこそ、子どもたちも楽しんで学んでいますし、生活の中の問題を解決する力を養うこともできるのではないでしょうか。
子どもたちからは「効率的にお金を使えるようになりたい」とか「金融に関する知識を持つことで、不安な生活にならないようにしたい」といった意外に堅実なコメントも聞かれました。
なお、教育カリキュラムに金融教育を組み込むための中心的な役割を担った超党派グループAPPG(All Party Parliamentary Group)は現在、この新しいカリキュラムの現状分析を行っていて、130校を対象とした検証結果を2020年6月までに報告書として公表する予定とのことです。その成果を早く知りたいものです。
<<これまでの記事はこちらから>>
合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史