2. 損をしないために知っておきたい!繰下げ受給をする場合の3つの注意点
繰下げ受給は、受給開始時期を遅らせることで年金額を増やすことができますが、場合によっては「かえって損をしてしまうケース」もあります。
本章では、繰下げ受給を選択する前に知っておきたい「3つの注意点」について解説していきます。
2.1 注意点1.税金や保険料が上がる可能性がある
1つ目の注意点は、「税金や保険料が上がる可能性がある」ことです。
老齢年金を受給する際、現役時代の給与と同様に、年金から「税金」や「社会保険料」が天引きされた状態で振り込まれます。
「収入」に値する年金額が上がればその分、税金や社会保険料の金額も上がるため、実際の手取り額はそこまで変わらないといったケースも考えられるのです。
年金を増額することで、かえって年金から天引きされるお金が増えてしまう可能性があるため、繰下げ受給を選択しない人が多いのかもしれません。
2.2 注意点2.加給年金が受給できなくなる
2つ目の注意点は、「加給年金が受給できなくなる」ことです。
加給年金とは、年金の「家族手当」や「扶養手当」と言われているもので、一定の要件を満たす配偶者や子どもがいる場合、上乗せして受け取れる年金を指します。
加給年金は繰下げ受給を選択した場合、受け取れなくなってしまうため、最大39万7500円の上乗せ額を逃してしまう可能性があります。
加給年金を受け取れるはずだった世帯も、繰下げ受給を選択してしまったことで受け取れなくなり損をしてしまうケースがあるため、該当する世帯の場合は「どちらがお得になるのか」を十分に検討してから選択する必要があります。
2.3 注意点3. 受給期間によっては受け取れる額が従来より少なくなる
3つ目の注意点は、「受給期間によっては受け取れる額が従来より少なくなる」ことです。
繰下げ受給を選択した場合、従来よりも受給開始年齢が遅れることから、寿命によってはトータルで受け取れる受給額が少なくなる可能性があります。
たとえば、厚生労働省「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の平均月額は14万3965円でした。
上記の年金額を参考に、1万円未満の端数は切り捨て、年金月額を「14万円」と仮定して試算した場合、「65歳」と「75歳」で年金を受け取った場合で、下記のような違いが出てきます。
上記表をみる限りだと、90歳時点で75歳受給のほうがトータルの受給額を上回ることになるため、受給期間によっては「かえって損をするケース」も出てくるかもしれません。
寿命は誰にも分からないため、人によっては65歳から受給したほうがお得になる可能性も十分に考えられます。