多彩な食文化を誇る大阪は、その多彩さゆえにラーメンに対するこだわりが東京など他の都市と比べて少ないと言われることがあります。
しかし、カップ麺の代表的な商品である「カップヌードル」を販売する日清食品の創業の地は大阪。大阪府池田市にはカップヌードルミュージアムもあります。また、外国人観光客の急増を背景に、難波の街にラーメン専門店が増加しています。
ラーメン文化不毛の地・大阪で、新しいラーメン文化が生まれるのでしょうか。
ラーメン専門店の数が少なかった大阪
ここ数年で大阪にも随分とラーメン専門店が増えましたが、以前はそれほどではありませんでした。
「金龍」、「神座」、「横綱」などの有名ラーメン店はありましたが、東京ほどのラーメン店密度はなく、味も東京=醤油、博多=豚骨に匹敵するような“大阪独特の味”と言えるものはありません。
一方、出汁文化の大阪にはおいしいうどん店が多く存在しています。さらに、たこ焼き、お好み焼きといった日本式ファーストフードも多種多彩です。
それがラーメンに対する強いこだわりが生まれなかった理由とも、ラーメンは中華料理店で食べるものとされラーメン専門店の出店余地が少なかったとも言われています。
大阪で創業した日清食品
とはいえ、チキンラーメンやカップヌードルを発明した、インタントラーメンの生みの親とも言うべき日清食品(日清食品HD)の創業の地は大阪府泉大津市です。ラーメン文化不在とも言える大阪で日清食品が創業されたのは、興味深い歴史の綾と言えるかもしれません。
そして日清食品の創業者、安藤百福氏がチキンラーメンの開発にいそしんだのが池田市にある自宅です。そして、梅田から電車で約30分の池田市にはカップヌードルミュージアムがあり、インタントラーメンの歴史を今に伝えています。
カップヌードルミュージアムとNHKの連続テレビ小説
今は横浜にもあるカップヌードルミュージアムですが、1999年に第一号として建てられたのは大阪です。
カップヌードルミュージアムはオリジナルのカップヌードル製作体験、チキンラーメンの製作体験(要予約)が楽しめる施設として知られています。昨今は外国人観光客急増もあり、内外問わず多くの観光客で盛況です。
また、同ミュージアムには、チキンラーメン発明当時の安藤家の様子を再現した模型や歴代のカップ麺の展示もあり、インスタントラーメンの歴史を詳しく知ることができる施設となっています。
ところで、NHKは2018年10月から連続テレビ小説「まんぷく」を放送すると発表していますが、「まんぷく」は日清食品創業者の安藤百福氏とその妻がモデルです。来年はカップヌードルミュージアムの訪問者が、さらに増加するのではないでしょうか。
難波界隈に増えるラーメン専門店
ここ数年の大阪、特に難波界隈の外国人観光客の急増には目を見張るものがあります。その大阪の食、“大阪めし”と言えば、お好み焼きにタコ焼きが定番で、多少お金を出せばフグも食べられます。
そんな中、難波~心斎橋界隈にはラーメン専門店が確実に増加し、多くの店が繁盛しています。道頓堀の金龍ラーメンにはかつてない長蛇の列ができているほどで、ここにも外国人観光客増加の恩恵が行きわたっているようです。
難波界隈のラーメン店を覗けば、外国人観光客にラーメン人気が高いということが理解できます。このインバウンドのトレンドを背景に、大阪のラーメン文化も変わりつつあると言えるでしょう。
今後の大阪のラーメン文化がどのように進化していくのか、ラーメン好きの一人として注目を続けたいと思います。
石井 僚一