老後を迎えるにあたり、一時は年金以外に2000万円が必要という試算が話題になりました(老後2000万円問題)。2023年10月11日に公表されたアンケート調査によると、8割以上の会社員が老後の生活費について心配していると回答しています。
実際に必要な老後資金はそれぞれの家庭によってさまざまであると考えられますが、物価上昇や年金不安により、老後に漠然とした不安を抱える方は多いとうかがえます。
実際、今の60歳代はどれぐらいの割合で「貯蓄2000万円以上」を達成できているのでしょうか。
今回は60歳代世帯のお金事情にフォーカスをして、貯蓄額の中央値や「貯蓄ゼロ世帯」の割合についても見ていきます。
「老後の生活費」8割以上の会社員が心配
ベンチャーサポートグループ株式会社が2023年10月11日に公表した「老後資金と働き方の調査」によると、約8割の50歳代会社員が「老後の生活費が不安」と回答したことがわかりました。
同調査においては、50歳代会社員の約半数が老後資金として準備している金額の平均が「500万円未満」と回答しています。
現役世代においては、老後資金以外にも教育費や住宅ローンの繰上げ返済資金など、貯蓄の用途はさまざまです。そのため、純粋な老後資金は「2000万円」から程遠いということも多々あります。
こうした影響を受けてか、定年後も働き続ける予定と回答した方は46.4%、働き続ける可能性があると回答した方は39.0%にのぼりました。
では、今の60歳代はどれぐらいの貯蓄を保有しているのでしょうか。2000万円以上という割合とともに見ていきます。
60歳代で「貯蓄額2000万円以上」の世帯は何パーセントか円グラフで見る
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]」をもとに、60歳代・二人以上世帯の金融資産保有額を確認してみましょう。
こちらの調査では、金融資産について「定期性預金・普通預金等の区分にかかわらず、運用の為または将来に備えて蓄えている部分とする。…(中略)…日常的な出し入れ・引落しに備えている部分は除く」と定義しています。
【60歳代】二人以上世帯の金融資産保有額の平均値と中央値
※金融資産を保有していない世帯を含む
- 平均値:1819万円
- 中央値:700万円
60歳代・二人以上世帯の貯蓄額は、平均1819万円と中央値700万円と大きく乖離しています。
平均は一部の大きな数値に引き上げられる傾向にあるため、実態に近いと考えられる中央値がより参考になるでしょう。
【60歳代】二人以上世帯の貯蓄額ごとの割合
- 金融資産非保有:20.8%
- 100万円未満:6.1%
- 100~200万円未満:5.5%
- 200~300万円未満:3.3%
- 300~400万円未満:3.2%
- 400~500万円未満:3.4%
- 500~700万円未満:5.3%
- 700~1000万円未満:6.1%
- 1000~1500万円未満:8.6%
- 1500~2000万円未満:5.7%
- 2000~3000万円未満:8.8%
- 3000万円以上:20.3%
- 無回答:2.9%
貯蓄額ごとの割合をみると、2000万円以上は29.1%であることがわかります。
二人以上世帯において、約3割は「老後2000万円問題」をクリアしていることがわかりますね。
ただし、冒頭でお伝えしたように「2000万円」は全ての世帯にあてはまる金額ではないため、「2000万円に満たなくても老後は安泰」という世帯や、「2000万円あっても生活が厳しい」という世帯もあると考えられます。
また上記を見ると「貯蓄ゼロ」が20.8%いるため、二極化している様子がわかります。
すでに退職金を受け取った世帯やこれから受け取る予定の世帯、もしくは退職金がない世帯もあり、60歳代はさまざまな事情から大きく帰路に立たされる年齢だと言えるでしょう。
「家庭により事情が異なる」という大きな前提に立った上で、もし「貯蓄ゼロで老後を迎えるとどうなるか」について見ていきましょう。