連合は49の産業別組織が加盟するナショナル・センター(全国中央組織)
報道などで「連合」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。特に衆院選や参院選などの国政選挙では、連合がどの党派を支援するのかが話題になります。
連合は「民進党最大の支持団体」とも言われますが、10月に行われた衆院選では、民進党を飛び出し「希望の党」や「立憲民主党」に加わる議員や無所属で出馬する議員などに分かれたことから、特定の政党ではなく民進党出身者を個別に支援しました。
「連合」は、「日本労働組合総連合会」の略称です。労働組合は労働者が団結して、賃金や労働時間などの労働条件の改善を図るためにつくる団体です。労働者が団結し、使用者と団体交渉を行い、ストライキなどの団体行動をする権利は、憲法で保障された基本的な権利です。
日本の労働組合は企業別組合または産業別組合という形が中心です。連合は、自治労、UIゼンセン同盟、自動車総連、電機連合など49の産業別組織が加盟するナショナル・センター(全国中央組織)です。また、47の地方連合会があり、それぞれの地域で運動を行っています。
中でも、連合愛知は傘下にトヨタグループや中部電力の労組があり、組合員54万人を誇ります。政治活動でも発言力を持っています。先の衆院選では、民進党を離党した山尾志桜里氏(愛知7区)の推薦を見送ったことも話題になりました。
4つのナショナル・センターが統一して誕生
連合は1989年、2大ナショナル・センターだった日本労働組合総評議会(総評)と全日本労働総同盟(同盟)に、中立労働組合連絡会議(中立労連)、全国産業別労働組合連合(新産別)という労働4団体が統一して誕生しました。
このとき、連合の発足を「反共・労使協調路線」と批判した日本共産党系労組は、これに対抗し同年、全国労働組合総連合(全労連)を結成しました。さらに、総評の中の社会党系左派労組を中心に、「どちらにも行かない、行けない」組織として、全国労働組合連絡協議会(全労協)が結成されました。
こうした経緯から日本には現在、連合、全労連、全労協の3つのナショナル・センターが並立しています。ただし加盟組合員は、連合約675万人に対して、全労連約55万人、全労協約10万人と、大きな差があります。産業別組合の協議会の中には、全労連や全労協よりも組合員数の多いところもあります(2016年6月30日現在:厚生労働省の調査より)。
労働組合が政治活動を行う理由
ところで、労働組合がなぜ政治活動を行うのでしょうか。連合はホームページで「労働組合は『働く人の意見を政治に反映する大事な役目』も担っている」と説明しています。
大きく分けると、連合=民進党支持、全労連=共産党支持、全労協=社民党支持と言えます。各ナショナル・センターは選挙で支持党派を支援するだけでなく、傘下の労組が自ら候補者を擁立することもあります(組織内候補と言います)。
特に連合は、ひとたび選挙となるとその組織力により結果を左右するほどの存在感を発揮してきました。2009年には民主党(当時)による政権獲得も実現しました。
ただし最近になって、その求心力も弱まりつつあります。大きな要因は組合員数の減少です。発足時に800万人だった組合員数はその後100万人以上減少しています。
背景には、雇用者に占める労働組合員の割合(組織率)が低下していることも挙げられます。つまり労働組合に入らない人が増えているのです。現在、労組の組織率は17%台前半まで低下しています。
日本の就業者数は6544万人(2017年10月労働力調査)であり、シェアが1割強にすぎない連合が労働者の代表と言えるのかという疑問もあります。
傘下の労組との意見対立も目立つなど課題に直面
連合だけでなく、労働組合の存在自体も危ぶまれています。
かつての労働組合には、春闘やメーデーなどにより企業と対峙(たいじ)し権利を勝ち取るという役割がありました。ところが最近では、政府・与党が賃上げを要請する「官製春闘」が続いています。
働き方改革の推進などについても政府主導です。また、連合の傘下労組は組合員の大半が正社員であることからか、非正規労働者の処遇改善についてもこれからという印象を受けます。
さらに連合はもともと右派系からリベラル系まで、考え方の異なるナショナル・センターが集まってできたこともあって、組織内で意見が分かれやすいという傾向があります。特に昨今は、ライフサイクルや働き方が多様化する中で、執行部と傘下の労組との意見対立も目立ちます。
政治活動についても労組ごとに温度差があります。化学大手の労働組合でつくる全国化学労働組合総連合(化学総連)は2016年、民進党が共産党と選挙協力に踏み切ったことへの反発から連合を離脱しました。
原発政策でも電力系労組とそれ以外では溝があります。一部の専門職を労働時間の規制から外す「高度プロフェッショナル制度」の導入を巡っても、連合執行部と傘下の労組間で対立が起きました。
さまざまな課題に直面し、連合は今、厳しい状況にさらされています。これらの課題をどう解決するのか。そして、どこに向かうのか。日本最大の労働組合のナショナル・センターとして、その存在意義が問われています。
上山 光一