市場に並ぶトマトもそろそろ種類が減ってきて、代わりにブロッコリーやかぼちゃが並ぶようになりました。バールの常連さんたちの間でも、「昨晩はパジャマを長袖にしたよ」なんておしゃべりが聞こえてくることも。

イタリアの全土にあるバールは、日本のコンビニくらいに身近な存在。バールの主人や顔なじみのお客さんと、ほぼ毎日顔を合わせてはコーヒーを飲み、雑談に興じます。

その一方でイタリアの観光名所にもなっているのが格式のある老舗カフェ。もしこちらでコーヒーをゆったりと楽しむ場合はどのぐらいの金額になるのでしょうか。今回はイタリアの老舗のバール事情を解説します。

18世紀から大盛況!ヨーロッパのカフェ文化

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ヨーロッパで最初にコーヒーというものを飲んだのは、オーストリア人であったといわれています。

しかし苦みのあるコーヒーを最初に愛したヨーロッパ人は、イタリア人でした。ある歴史家によると、イタリア人はことのほか「苦味」を愛する民族であり、コーヒーはその代表格だ、というわけです。

コーヒーを飲むいわゆる「カフェ」の創業も、イタリアが最初といわれています。18世紀に入ると、イタリアに続いてフランスやイギリスにもカフェ文化が普及していきました。当時のカフェは、インテリたちが集う社交の場でした。

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ちなみに、現在パリにあるカフェの老舗「ル・プロコップ」は、創業者がシチリア出身のイタリア人。シチリア生まれのジェラートを、初めてフランスで販売したことでも知られています。

ヨーロッパのカフェ文化を牽引したイタリアには、今も当時の面影を伝える老舗がいくつか残っています。

カフェ文化の黎明期には「カフェ」と呼ばれていたお店が、イタリアでは「バール」という名に変わったのは19世紀の終わりごろといわれています。トスカーナ州でその風習が一般的になり、イタリア全土に広がっていきました。

日本人がイメージする「カフェ」は、イタリア語では「バール」と呼ばれます。長い歴史を持つ老舗は、現在も創業当時そのままに「カフェ」と名乗るところが多いのは、そんな事情があるのです。