2019年に金融庁が提出した、金融審査会市場ワーキング・グループ報告書による「老後2000万円問題」は、メディアなどでも取り上げられ話題となりました。

この報告書には、高齢者夫婦無職世帯の平均的な家計収支が記載されており、実収入が20万9198円に対し、実支出が26万3718円となっています。

昨今は収入を増やすために副業を始める方や、新たに投資を始める方が増えるなど、お金に関する不安が高まっています。

とりわけ年金については、どのぐらいもらえるのか気になってらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

今回は、老後の実収入となる厚生年金「月額20万」を目安に、シニアの年金事情について確認していきましょう。

1. 日本の公的年金制度「国民年金・厚生年金」の仕組み

年金受給額を見る前に、簡単に日本の公的年金制度の仕組みを確認しておきましょう。

日本の公的年金制度は「国民年金」と「厚生年金」で構成される2階建て構造です。

それぞれの特徴は次のとおりです。

1.1 国民年金:1階部分

「国民年金」は、原則、日本に住む20歳~60歳未満のすべての人が加入対象となります。

保険料は全員一律で、年度ごとに見直しが行われます。40年間、すべての保険料を支払えば、老後に満額の国民年金が支給されます。

ただし、第2号被保険者に扶養される配偶者である第3号被保険者は、個人で保険料支払う必要はありません。

1.2 厚生年金:2階部分

「厚生年金」は、主に会社員や公務員などが国民年金に上乗せする形で加入する年金です。

厚生年金の保険料は、毎月の給与や賞与などの報酬よって決定し、会社側と折半して負担します。

厚生年金保険への加入期間中は、国民年金の保険料は厚生年金制度により負担するため、個人で支払う必要はありません。

老後に受け取る年金額は、保険料と年金加入期間によって決定し、国民年金に上乗せして支給されます。

2. 国民年金:2023年度の満額は「月額6万6250円」

本記事では厚生年金の実態に迫るのですが、年金制度のベースとなる国民年金にも触れておきましょう。

先述したとおり、国民年金は全員一律の保険料を支払い、40年間全ての保険料を支払った場合に満額を受給することができる仕組みです。

では、その満額とはどれくらいなのか?

2023年度の67歳以下新規裁定者の国民年金の満額は月額6万6250円です。

2023年度の67歳以下新規裁定者の年金額は前年度から2.2%の増額となりました。既裁定者は1.9%の増額です。

年金額は毎年度、物価や賃金の動向を見ながら見直しが行われます。

しかし、年金制度を維持するために、被保険者や平均寿命を睨みながら調整が行われるため、物価や賃金と同レベルの年金額引き上げとはいかない仕組みになっています。

では、この国民年金(基礎年金)に、現役時代の報酬や加入期間によって決定する報酬比例部分が上乗せされる厚生年金の場合、どのくらいの支給額になるのでしょうか。

3. 厚生年金:平均年金月額と受給額分布

全体平均:14万3965円

3.1 厚生年金:男女全体の受給額分布

総数:1618万445人

  • 1万円未満:9万9642人(0.6%)
  • 1万円以上~2万円未満:2万1099人(0.1%)
  • 2万円以上~3万円未満:5万6394人(0.3%)
  • 3万円以上~4万円未満:10万364人(0.6%)
  • 4万円以上~5万円未満:11万1076人(0.6%)
  • 5万円以上~6万円未満:16万3877人(1.0%)
  • 6万円以上~7万円未満:41万6310人(2.5%)
  • 7万円以上~8万円未満:70万7600人(4.3%)
  • 8万円以上~9万円未満:93万7890人(5.7%)
  • 9万円以上~10万円未満:113万5527人(7.0%)
  • 10万円以上~11万円未満:113万5983人(7.0%)
  • 11万円以上~12万円未満:103万7483人(6.4%)
  • 12万円以上~13万円未満:94万5237人(5.8%)
  • 13万円以上~14万円未満:91万8753人(5.6%)
  • 14万円以上~15万円未満:93万9100人(5.8%)
  • 15万円以上~16万円未満:97万1605人(6.0%)
  • 16万円以上~17万円未満:101万5909人(6.2%)
  • 17万円以上~18万円未満:104万2396人(6.4%)
  • 18万円以上~19万円未満:100万5506人(6.2%)
  • 19万円以上~20万円未満:91万7100人(5.6%)
  • 20万円以上~21万円未満:77万5394人(4.7%)
  • 21万円以上~22万円未満:59万3908人(3.6%)
  • 22万円以上~23万円未満:40万9231人(2.5%)
  • 23万円以上~24万円未満:27万4250人(1.6%)
  • 24万円以上~25万円未満:18万1775人(1.1%)
  • 25万円以上~26万円未満:11万4222人(0.7%)
  • 26万円以上~27万円未満:6万8976人(0.4%)
  • 27万円以上~28万円未満:3万9784人(0.2%)
  • 28万円以上~29万円未満:1万9866人(0.1%)
  • 29万円以上~30万円未満:9372人(0.05%)
  • 30万円以上~:1万4816人(0.09%)

※厚生年金受給額には、基礎年金(国民年金)の金額を含みます。

厚生年金の男女全体の平均受給額(月額)は「14万3965円」です。

ボリュームゾーンは「9万円以上~11万円未満」、「17万円以上~18万円未満」です。

しかし、個人差が大きいのが見て取れますね。

3.2 厚生年金:男女別の受給額分布

  • 男性平均:16万3380円
  • 女性平均:10万4686円

厚生年金の平均年金月額は、男女で約6万円の差が生じています。

女性の労働環境やワークスタイルなどが、こうして老後生活の柱となる年金にも影響するのですね。

4. 厚生年金「月額20万円」を超えるシニアは多い・少ないどっち?

では、今回目安としている厚生年金「月額20万円」を超えるシニアはどれくらいいるのでしょうか。

  • 厚生年金受給者総数:1618万445人
  • 厚生年金(老齢基礎年金を含む)20万円以上:250万1594人

250万1594人 ÷ 1618万445人 = 15.46%

厚生年金を月額20万円受給する人は、全体の約15.5%です。

男女別では、以下の通りです。

  • 男性:約22%
  • 女性:約1%

手厚いと言われる厚生年金でも、月額20万円以上を受け取ることができる人は少ないようです。

5. 夫婦2人世帯のパターン別年金収入

夫婦世帯の場合、年金収入が2人分になりますので、月額20万円以上の年金収入を得られる世帯が増えるでしょう。

国民年金と厚生年金の平均月額より、パターン別に見てみましょう。

なお、国民年金の平均受給額は以下のとおりです。

【国民年金の平均受給額】

  • 男性:5万9013円
  • 女性:5万4346円

5.1 夫「厚生年金」・妻「厚生年金」

  • 夫:16万3380円
  • 妻:10万4686円

合計:26万8066円

5.2 夫「厚生年金」・妻「国民年金」

  • 夫:16万3380円
  • 妻:5万4346円

合計:21万7726円

5.3 夫「国民年金」・妻「厚生年金」

  • 夫:5万9013円
  • 妻:10万4686円

合計:16万3699円

5.4 夫婦ともに国民年金

  • 夫:5万9013円
  • 妻:5万4346円

合計:11万3359円

平均年金月額で試算すると、「夫婦ともに厚生年金」、「夫が厚生年金」のパターンであれば夫婦二人で月額20万円超の年金収入となりました。

あくまで平均に基づく試算です。

単身世帯も夫婦二人世帯も、それぞれ「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で年金見込額を確認した上で、老後の年金暮らしについて考えることをおすすめします。

6. 安心した老後を迎えるためには早めの老後対策を

今回は今のシニア世代の公的年金受給額について確認していきました。

将来的に年金収入だけでは、やはり不安という方も多いのではないでしょうか。

今後は年金支給額が減少する可能性もあるため、早い時期から老後のライフプランを立てておくことが大切だといえます。

老後資金への対策としては、働けるうちはなるべく長く働くことや、節約して貯蓄しておくことができます。さらに、若いうちから投資を始めることで、長期的に少しずつ資産を増やしていくとよいでしょう。

現在低金利の日本では、銀行預金にお金を置いておいても増えてくれません。

そこで活用していきたいのが、お金に働いてもらう「資産運用」です。

資産運用にはリスクは伴いますが、リスクをできる限り抑え、運用の効果を期待するためには「長期・分散・積立」の3つのポイントが重要になります。

資産の積み上げには時間を味方につけることが鉄則です。

是非自分に合った方法を取り入れ、お早めに老後対策をスタートしてみてはいかがでしょうか。

参考資料