介護士不足の影響は深刻「ビジネスケアラー・ヤングケアラー問題」
介護士が不足すると、必要な介護が受けられない高齢者が増えていきます。そうなると、憲法で保障された「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」が守られなくなってしまうわけです。
困るのは、介護を受けられない高齢者自身だけではありません。子ども側が介護離職せざるを得ないという事態も、容易に起こり得るでしょう。
ちなみに筆者は母親を在宅で介護していました。
大学教授という職業柄、コロナ前から在宅勤務が比較的自由に可能だったため、何とかしのげたわけです。
これが普通の会社員だったらどうだったでしょうか。親が介護施設に入所できなかった場合、介護離職を余儀なくされたことは間違いありません。
介護施設であれば、一人の介護士が複数の高齢者の面倒を見ることができます。
しかし、在宅介護の場合、たいていは一人の子が一人の親の面倒を見るわけです。しかも介護に関しては素人ですから、その場その場で適切な対応がとれるとは限りません。
ビジネスケアラーたちの問題
「介護士が一人減る」その裏で、複数の働き手たちが介護離職に追い込まれているかもしれない現実。この「ビジネスケアラー」の問題について考えてみましょう。
働きながら家族などの介護をおこなう「ビジネスケアラー」たちは、離職や生産性の低下で苦悩するケースが少なくありませんね。これは、国民経済的に考えて非常にもったいないことです。
経済産業省の推計でも、ビジネスケアラー発生による経済損失額は2030年時点で約9兆円近くまでに膨らむとされています。
リーマン・ショック後の不況期で失業者があふれている時であれば、さほど問題はなかったのかも知れません。
しかし今は少子高齢化による労働力不足の時代です。貴重な労働力を在宅介護に振り向けなければならないのは辛いですね。
ヤングケアラーたちの問題
さらに問題なのは、孫が祖父母などの介護を担う「ヤングケアラー」たち。彼らの勉学が疎かになってしまう可能性がありますね。
家庭によっては、子が介護離職すると収入が減ってしまうため、孫に介護を頼むというケースもあるでしょう。
しかしこれは、長期的に見ると非常に深刻な影響が生じかねません。