2. 繰下げ受給の8つの注意点とは

日本年金機構によると、繰下げ受給の注意点として以下の8つが提示されています。

  1. 加給年金額や振替加算額は増額の対象にならない。また、繰下げ待機期間(年金を受け取っていない期間)中は、加給年金額や振替加算を受け取ることができない。
  2. 65歳に達した時点で老齢基礎年金を受け取る権利がある場合、75歳に達した月を過ぎて請求を行っても増額率は増えない。
  3. 日本年金機構と共済組合等から複数の老齢厚生年金(退職共済年金)を受け取ることができる場合は、すべての老齢厚生年金について同時に繰下げ受給の請求をしなくてはいけない。
  4. 65歳の誕生日の前日から66歳の誕生日の前日までの間に、障害給付や遺族給付を受け取る権利があるときは、繰下げ受給の申出ができない。ただし、「障害基礎年金」または「旧国民年金法による障害年金」のみ受け取る権利のある方は、老齢厚生年金の繰下げ受給の申出ができる。
  5. 66歳に達した日以降の繰下げ待機期間中に、他の公的年金の受給権(配偶者が死亡して遺族年金が発生した場合など)を得た場合には、その時点で増額率が固定されるため、年金の請求の手続きを遅らせても増額率は増えない。
  6. 厚生年金基金または企業年金連合会(基金等)から年金を受け取っている方が、老齢厚生年金の繰下げを希望する場合は、基金等の年金もあわせて繰下げとなる。
  7. このほか、年金生活者支援給付金、医療保険・介護保険等の自己負担や保険料、税金に影響する場合がある。
  8. 繰下げ請求は、遺族が代わって行うことはできない。繰下げ待機中に亡くなった場合で、遺族の方からの未支給年金の請求が可能な場合は、65歳時点の年金額で決定したうえで、過去分の年金額が一括して未支給年金として支払われる。ただし、請求した時点から5年以上前の年金は時効により受け取れなくなる。

例えば、税金や保険料の負担があがることは大きな注意点と言えるでしょう。「その分額面があがるから大丈夫」と感じるかもしれませんが、税金や保険料は定率をかけて算出するわけではありません。

急に負担が高まるラインが存在するため、「額面があがったほどには手取りが増えない」という可能性も十分あります。

また、夫婦の場合は加給年金との兼ね合いに注意が必要です。

3. 年金を増やしすぎた夫婦を待つ悲劇

繰下げ受給のデメリットとして1番目に挙げられている「加給年金額」ですが、これは年下の妻や子どもがいる場合に支給される手当てのことです。

年下の配偶者が一定の要件を満たす場合、1年あたり22万8700円(生年月日に応じて加算あり)が年金に加算されるます。

繰下げ待機期間(年金を受け取っていない期間)中は、加給年金額や振替加算を受け取ることができないとされるため、仮に5年間繰り下げる場合は、約114万円が受給できなくなります。

さらに年金が増えるため、前述のとおり税金や保険料(健康保険料や介護保険料)が高くなり、手取りは思ったほど増えないケースがあるのです。

こうしたデメリットを理解しないまま「年金を増やす」という点だけを見ていては、効率的な老後対策から遠ざかってしまうでしょう。

ただし、繰下げ受給は年金額を増やす方法という位置づけで間違いないため、年金が少ない方は検討の余地があります。

影響が出る項目をしっかり認識した上で、総合的に判断できるといいでしょう。