2022年10月から始まった「所得上限限度額」とは
前述したように、現行の児童手当には「所得制限」が設けられており、一定の収入以上の場合は「特例給付」に該当し、支給される手当額が一律5000円となります。
さらに2022年10月以降は、特例給付においても「所得上限限度額」が設けられるようになりました。
つまり、子どもを2人養育している世帯で年収103万円以下の配偶者がいる場合、収入額目安が1200万円以上の世帯では特例給付も廃止となるため、児童手当が1円も受け取れなくなっています。
上記の法改正により影響を受けた児童の数は、内閣府の調査データでは約61万人(全体の4%)とされています。
数十万人の子どもやその世帯に影響を与えた法改正となりましたが、所得制限の変更により特例給付の廃止がされたことで、いくつか課題が見えてきました。
児童手当所得制限で新たに生まれた課題と背景とは
児童手当所得制限による「特例給付の廃止」から約1年が経過しましたが、新たに生まれた課題もいくつか存在します。
1つ目の課題として、「所得制限の制度の趣旨に矛盾が生じる」ことが多く指摘されるようになりました。
児童手当は、冒頭でもお伝えしたとおり「次代の社会を担う児童の成長に資することを目的」に支給されており、所得額に応じて支給額を変えたり廃止したりすることは、本来の支給の趣旨に反していると言えます。
さらに2つ目の課題として「所得制限の対象となる基準」においても問題視がされています。
現行の児童手当の所得制限を判断する基準となる収入は「世帯収入」ではなく、「世帯のうち年収が高いほう」の収入が基準となります。
たとえば、3歳以上の子ども2人を養育している世帯において、夫婦二人が「共働き」をしている家庭では下記のケースが存在します。
- 世帯主の年収が900万円で、配偶者の年収が500万円
- 世帯主の年収が1200万円で、配偶者の年収が100万円
この場合、それぞれの世帯が受け取れる児童手当は下記表のようになります。
1の場合は、年間の世帯収入が1200万円を大幅に超えた額となりますが、所得制限の対象にならないため児童手当が支給されます。
一方で2の場合は、1よりも年間の世帯収入が少ないのにもかかわらず、所得制限限度額を超えていることから、児童手当・特例給付ともに対象外となります。
このように、「世帯のうち年収が高いほう」の所得額を基準にしていることから、合計の世帯年収は高いにもかかわらず、児童手当ももらえるケースが出てきてしまうのです。
こういった「児童手当の趣旨に反する内容」「働き方による支給の不平等さ」といった課題が生まれた背景から、所得制限の撤廃を求める声が多く挙げられるようになりました。