イタリアの郊外へ車を走らせると、路上できのこ売りを目にする季節になりました。収穫の秋、各地で豊かな食を楽しむイベントが数多く開催されます。
小さな町や村の人々の素朴なサービスが人気のお祭りは「サーグラ」と呼ばれ、過疎化に悩む町には経済的なてこ入れの役割も果たしています。
イタリアの人びとが楽しみにする食の祭、その歴史や物価高に伴う危機について、解説いたします。
イタリア各地で開催される食のお祭り「サーグラ」
バカンスが終わって日常に戻ったイタリア人たち。それでも週末は郊外へと出かけ、田舎や自然の中で過ごす人はたくさんいます。そんな都会人たちを迎え入れる郊外の町では、秋になると特産品の収穫を祝うお祭りが開催されます。
イタリア語で「サーグラ」と呼ばれるこのお祭り、実は地域によって開催される時期は異なります。しかし、きのこや栗が旬を迎える秋、田舎の風景を楽しみながらおいしいものを食べようという人が増えるのです。
サーグラは古代ローマ時代、神々にいけにえを捧げた儀式に由来します。本来は村の人々が収穫を祝って、村人たちだけで祝った行事でした。
ところが最近は、おいしい食べ物を販売したり、楽しいイベントを開催するようになって、村以外からも人が集まるようになりました。方言を交えた地元の人たちのサービスがウリのお祭り、といった趣きです。
バカンス後も秋祭りでお金を落とすイタリア人たち
テーマとなる食べ物以外にも、郷土色豊かな食がずらりと並ぶお祭り。町の人たちがコスチュームに身を包んだ行列があったりして、家族連れにも人気なのです。
秋祭りの会場では、地元のマンマたちの郷土料理が路上や臨時のレストランで売られて、その素朴なおいしさが美食家たちを唸らせます。
イタリアが発祥の「スローフード」の概念にも合致していて、都会の洗練とは異なる味が人々を魅了するのでしょう。
バカンスが終わったイタリア人たちも、高級レストランに行くお金はなくても、秋祭りで楽しむくらいなら財布のひもを緩めます。
食べ物だけではなく工芸品やアートの展示・販売も行われ、訪れる人の目を楽しませてくれるのです。過疎化が進むイタリアの田舎町にとっては、経済的な効果が大きいお祭りなのです。