皆さま こんにちは。アセットマネジメントOneで、チーフ・グローバル・ストラテジストを務めます柏原延行です。

このコラムは、『ドイツの政局混乱はインフレ要因となるのか?(1)』の続きです。

(前回の1では)ドイツにおける連立協議の決裂をうけて、「①ドイツの政局混乱や米トランプ大統領勝利、英EU離脱決定は、1980年前半頃以降採用された新自由主義的な経済政策に対する反発」であり、かつ「②この政治勢力は、これからも拡大する可能性があり」、「③この政治勢力の拡大は経済・投資環境に対してインフレ要因として働く」との私の見方をご紹介しました。

まず、「①ドイツの政局混乱や米トランプ大統領勝利、英EU離脱決定は1980年前半頃以降採用された新自由主義的な経済政策に対する反発」であると考える理由をご説明します。

私は、新自由主義について、競争促進グローバル化市場重視自己責任を基本思想とした上で、原則として「①小さな政府(緊縮財政志向)を推進し、鉄道や郵政事業などの公営事業の民営化、公共サービス(福祉を含む)の縮小」、「②規制緩和による競争促進、労働市場改革(労働者保護の後退)を志向する経済政策」を行う資本主義経済体制をいうと理解しています。

これらの経済政策を実行した政治家としては、英マーガレット・サッチャー首相や米ロナルド・レーガン大統領、我が国の中曽根康弘首相が代表的です(日本でも、国鉄がJRへ、日本電信電話公社がNTTとなり、公営事業の民営化が行われました。このこともあり、労働運動も以前より低調になった面があると考えます=労働市場改革)。

上記の3人は、1980年代前半頃に活躍した政治家であり、この頃から現在まで、先進国の主要な政権は、新自由主義を基本にした経済政策を実施してきたと考えています。

この政策は、競争を促進することで、社会全体の成長性を確保しようとします。一方で、競争では勝者と敗者が生まれる可能性が高いわけですから、格差が拡大する方向に働くと考えることが自然です。

加えて、中国などの新興国が製造拠点として発展を遂げる中(グローバル化)、先進国における産業は、製造業からサービス業に移行せざるを得ない面があります。サービス業の賃金は高い職から、低い職まで広範に分布するため、このことも格差を広げる方向に働いたと思われます(ご参考:2017年3月6日付コラム「産業の高度化?」)。

格差が広がることは、新自由主義にとっても必ずしも好ましいことではないため、「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちる(トリクルダウンする)」との考え方も提唱されましたが、どうもあまり現実化しているようには思えません。

このような状況を受け、「新自由主義」と「これに反発する政治勢力」の対立が先鋭化していると考えます。

図表1:対立先鋭化のポイント

出所:2017年6月10日公開の『日本株への影響は限定的か〜英国選挙結果の影響に関する仮説』中の図表を一部修正したもの。


サッチャーやレーガンが新自由主義を推進した英国(EU離脱決定)、米国(トランプ大統領誕生)に続いて、現時点のG7首脳で在任期間が最も長く政治的なリーダーシップが強いと思われるメルケル首相率いるドイツにおいても、政治的な混乱が発生していることは、新自由主義に反発する勢力の拡大が継続する可能性を示唆しているように思います。

次回以降の本コラムでは、この政治勢力の拡大がインフレ要因として働くと考える理由をご説明します。

(2017年11月27日 9:00執筆)

柏原 延行