1. 花王(4452)は構造改革への期待感が株価を下支えか

2023年第2四半期の花王の決算においては、利益ベースでの業績見通しの下方修正があったのですが、構造改革費用の計上に伴うものでした。

また、前年比で為替を加味すれば増収、影響を除くと減収でした。売上高は7385億円で、単純比較では前年同期7339億円から+0.6%です。為替の上振れ要因が+2.9%でした。

一方で、売り上げベースでは従来の業績見通しを維持できるという情報も公表しています。

また、この決算のタイミングでは、業績見通しの下方修正を実施しています。

税引前利益で従来の1200億円から610億円へ減少するという見込みです。

こちらは「構造改革費用」にあてるのが理由で、売上げ自体の減少を見込むものではありません。

非効率事業の見直しや人材育成などを想定したもので、2025年以降は年300億円程度の利益改善効果をみこんでいます。

2. 資生堂(4911)は中国事業に対する懸念なども

資生堂は、営業利益は2023年上期で136億円(前年同期170億円)と減益です。

日本市場はコロナ禍前の2019年と比べて、売上高で▲31%(2023年12月期第2四半期時点)ほど落ち込んだままとなっています。

また、同社は2022年通期のコア営業利益ベースで、中国が赤字となっています。

次の2023年12月期第1四半期決算でも、中国の売上が前年比減少となっていました。

第2四半期決算では中国の売上が前期比プラスに転じましたが、前年はコロナ禍のロックダウンで売上が落ち込んでいた要因もあったため、本格的に回復が進むという確信が持てていないと思われるでしょう。

以上のような業績における不透明要因が、資生堂の株価の上値を抑える要因の一つとも考えられます。

3. 花王や資生堂のリスク要因

花王「事業等のリスク」や資生堂「事業等のリスク」をふまえると、両社の主なリスク要因は次の通りです。

  • 消費者の価値観変化
  • 地政学的リスク
  • 商品の品質

花王も資生堂も一般消費者向けの商品が主であるため、消費者の趣向やトレンドにより売上・利益が変化します。

いずれの企業もグローバルに事業を展開していることから、日本だけでなく世界各国のトレンドを捉えて、それにマッチした商品を提供し続けられるかが重要でしょう。

また、ロシアによるウクライナ侵攻を始めグローバルな地政学リスクの上昇が、株価下落要因となるリスクがあります。

販売先の情勢悪化が売上の減少要因となり得るほか、原材料調達や流通網の寸断といった形で影響を受ける可能性もあります。

消費者の安全への意識は年々高まっており、さらにSNSの普及などにより安全を脅かしたときのレピュテーションリスクも高まっています。

商品の品質で何か問題が生じたときには、株価が大きく下落する恐れがあります。