ファッションショッピングサイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」を運営するスタートトゥデイが2017年11月22日に発表した内容に、日頃のZOZOTOWNユーザーだけではなく株式市場もが驚き、株価は大きく反発した。株式市場は何を期待したのだろうか。

スタートトゥデイはプライベートブランド「ZOZO」と「ZOZOZUIT」を発表

スタートトゥデイは、ZOZOTOWNや近く導入予定のプライベートブランド 「ZOZO」 で活用する採寸用ボディースーツ「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」の無料配布の予約受付を、11月22日より開始すると発表した(送料は別途負担要)。予約された「ZOZOSUIT」 は2017年11月末頃より順次配布される。

ソーシャルメディアではこの発表が多数シェアされた。また、株式市場も大きく動き、祝日明け24日の株価は対22日比で+14%を超える上昇を示している。

プライベートブランドを立ち上げるという話は以前からあったものの、ZOZOSUITの件は今回が初披露であった。では、このZOZOZUITとはいったい何なのか。

テクノロジーをアパレルに持ち込むZOZOSUIT

ZOZOSUIT はスタートトゥデイがニュージーランドのソフトセンサー開発企業 「StretchSense Limited」 と共同開発した伸縮センサー内蔵の採寸用ボディースーツ。トップスとボトムスの上下を着用し、スマートフォンとBluetooth通信で接続することで人体のあらゆる箇所の寸法が瞬時に計測され、そのデータをZOZOTOWNアプリに保存できる。

ZOZOSUITは、同時に発表されたプライベートブランド(PB) ZOZO から展開される商品で「究極のフィット感」を実現するために活用される。

これまでネットショッピングでは、魅力的な価格が購入につながるものの、リアル店舗のように試着で着心地を確かめてから購入することは難しかった。その点、ZOZOSUITはサイズの不安などのようなネットショッピングのマイナス面をニュートラルに引き上げ、さらにはプラスにまでもっていく可能性も秘めている。

PBのZOZOの魅力は何か、今後は様々なシーンで議論されるであろうが、まずはテクノロジーを活用したデータに基づく提案ということがその一つの特徴とも言えるであろう。

今回の取り組みは、素材の機能性で世界のアパレル業界に存在感を示したファーストリテイリングの「ユニクロ」を彷彿とさせる。株式市場がどこまで同社のポテンシャルを織り込んでいるかは現時点では測りかねるが、そうした可能性を少しでも見出したのではないかというくらいの大きな株価の反発である。

時価総額が1兆円近くある銘柄が、今回の発表で10%以上も値が動いたことを考えればそのサプライズ度合いが測れるというものである。

ZOZOTOWNの事業規模を整理する

ZOZOTOWNはアクティブ会員とゲスト購入者を含め、約700万人が利用する。アクティブ会員の女性比率は67%、男性が33%と、現状では女性の比率が高いネットショッピングモールだ。地域分布としては、関東が41%(うち東京14%)、近畿・東海28%。平均年齢は32.7歳で、女性は33.1歳。

こうしたデータから、平日は仕事をしている女性で、週末もショッピングだけを楽しむためだけに時間を使えないユーザーが多いのではないかと考えられる。

年間の購入金額は平均で約4万7,000円弱、11点程度を購入している。また、ユーザーが利用するデバイスはスマホが全体の約8割を占めるまでになっている。

同社は、商品をZOZOTOWNに出店をするショップから商品を受託する形で消費者に販売をするのが基本的なビジネスモデルである。出店するショップ数は約1,000店となっている。

海外のネット市場はどう変化しているのか

海外では、米国アマゾン・ドット・コムに見られるように、Eコマース事業者がリアル店舗を持つ小売業者を凌駕しつつある。

たとえば、アマゾンがホールフーズを買収した例のように、インターネットプレーヤーがリアルを取り込みつつあるというのが現状だ。リアル店舗を持つ小売業も、ネットで集客ができなければ売上高を拡大するのが困難な状況と言える。

また、アマゾンもその集客力や調達力からすると、PBを展開できるような状況にまでなっている。Eコマースプレーヤーから、販売も手掛けるメーカーになれる環境が整いつつあるのだ。このように、ネットでの集客や販売が圧倒的になると業態すらも変化させることができる。

スタートトゥデイはファッションショッピングサイトという位置づけであるが、今後もアクティブ会員を中心に顧客層を広げることができれば、現在の事業の延長線上にないものも期待できるというわけだ。

スタートトゥデイの業績をどう見るか

では、ZOZOTOWNの今後の売上高の伸びはどのように考えればよいのか。売上高をけん引するドライバーとして、出荷数と1回当たりの出荷額をベースに考えてみるのはどうであろうか。

出荷数はユーザー数の伸びやユーザー当りの年間の買い物回数、出荷額は商品単価と点数のそれぞれ掛け算である。

ユーザー数の伸びを拡大させるためには引き続き認知度を上げていくのが王道であるが、会員数が加速度的に増える「クリッキング・ポイント」が何になるのかは今後も注目である。今回のZOZOSUITもそのきっかけの一つにはなり得よう。

また、買い物回数を増やすには、魅力ある商品の品揃えを充実させるだけではなく、キャンペーンやセールなどのイベントの活用などが有効となろう。

ユーザー数が拡大した時に商品単価のアップを実現できるのかどうかは不透明であるが、点数増とのトレードオフの関係にあると考えるのが普通であろう。こうした点について、同社が今後どこに軸足を置くのかには注目である。

2018年3月期も会社の業績予想によれば、売上高は対前年比で30%近く成長する見通しとなっており、営業利益も320億円近くになる見込みである。

バランスシートも総資産が550億円を超えるのに対してネットキャッシュが220億円を超えており、ZOZOSUITのような先端テクノロジーを利用したユーザーへの積極的な提案ができる企業となっている。

アパレル企業からすれば、こうしたテクノロジーを駆使できなければならない時代に突入したとも言えるし、リアル店舗を運営する小売業からすれば、さらに差別化を突き付けられたとも言えるであろう。今後の競争環境の変化に注目だ。

泉田 良輔