3. 2023年度の公的年金は最大2.2%引き上げに

2023年度の年金額は、2022年度分から原則「67歳以下の方は2.2%」、「68歳以上の方は1.9%」の引き上げとなりました。

国民年金の満額とモデル夫婦の年金額例は以下のとおりです。

3.1【2023年度 国民年金・厚生年金の年金額例】

  • 国民年金(老齢基礎年金の満額):6万6250円
  • 厚生年金(会社員の夫と専業主婦のモデル夫婦):22万4482円※夫婦2人分の国民年金を含む

上記のモデル夫婦は「平均標準報酬(賞与含む月額換算)43万9000円)」で40年間就業した場合の「老齢厚生年金」と「2人分の老齢基礎年金(満額)」の受給額です。

老後をご夫婦で迎える世帯は、「どちらも厚生年金」、「どちらも国民年金」、「どちらか一方が厚生年金」かで世帯収入が大きく異なりますので、ご夫婦の年金額を確認しておきましょう。

なお、年金見込額は日本年金機構の「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で確認できます。現時点の加入記録に基づくものですので、年に1回など定期的に確認しましょう。

「ねんきん定期便」は年に1度、誕生月に郵送されますので、「ねんきん定期便が届いたら必ず年金見込額の確認と、老後の生活設計にズレがないかをチェックする」というように決めておいてもいいですね。

4. 老齢年金に月額5140円上乗せされる人とは?9月1日に「年金生活者支援給付金」の請求書が送付

実は、老齢年金に月額5140円を上乗せされる人がいます。厳密にいうと最大5140円で、これより低い金額の人もいます。

この「月額5140円※」は、年金生活者支援給付金という制度によるもので、公的年金等の収入金額やその他の所得が一定基準額以下の人に、「生活の支援を図ること」を目的として支給されるものです。

※2023年度10月時点の金額

なお、年金生活者支援給付金は「老齢年金」、「障害年金」、「遺族年金」に適用される制度です。

4.1 年金生活者支援給付金の対象者(老齢年金の場合)

老齢年金の年金生活者支援給付金は、以下の支給要件をすべて満たしている方が対象となります。

  •    65歳以上の老齢基礎年金の受給者である。
  •    同一世帯の全員が市町村民税非課税である。
  •    前年の公的年金等の収入金額※1とその他の所得との合計額が878,900円以下※2である。

※1:障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。
※2:778,900円を超え878,900円以下である方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。

4.2 年金生活者支援給付金の給付額

年金生活者支援給付金の給付額の計算方法を見てみましょう。

年金生活者支援給付金の給付額は、月額5140円を基準に、保険料納付済期間等に応じて算出され、次の(1)と(2)の合計額となります。※1

    (1)保険料納付済期間に基づく額(月額) = 5,140円 × 保険料納付済期間※2 / 被保険者月数480月※4
    (2)保険料免除期間に基づく額(月額) = 11,041円※3 × 保険料免除期間※2 / 被保険者月数480月※4

※1:前年の年金収入額とその他の所得額の合計が77万8900円を超え、87万8900円以下の場合、(1)に一定割合を乗じた「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。

※2:給付金額の算出のもととなる保険料納付済期間等は、お手持ちの年金証書や支給金額変更通知書等でご確認ください。

※3:保険料免除期間に乗ずる金額は、毎年度の老齢基礎年金の額の改定に応じて変動します。

・昭和31年4月2日以後生まれの方…保険料全額免除、3/4免除、半額免除期間については11,041円(老齢基礎年金満額(月額)の1/6)、保険料1/4免除期間については5,520円(老齢基礎年金満額(月額)の1/12)

・昭和31年4月1日以前生まれの方…保険料全額免除、3/4免除、半額免除期間については11,008円(老齢基礎年金満額(月額)の 1/6)、保険料1/4免除期間については5,504円(老齢基礎年金満額(月額)の1/12)

※昭和16年4月1日以前に生まれた方は、生年月日に応じて被保険者月数が少なくなります。

【給付額例】

上記の給付額の例のとおり、年金生活者支援給付金の全ての支給要件を満たす方で、被保険者月数480月のうち全期間の保険料を納付し、全額免除期間がない場合、月額5140円の年金生活者支援給付金が支給されます。

4.3 年金生活者支援給付金の注意点

①年金生活者支援給付金の支給要件を満たす方には「年金生活者支援給付金請求書」が送付されますので、手続きを行ってください。(2年目も支給要件を満たす場合には、手続きは不要)

②年金生活者支援給付金は、毎年度、前年の所得情報等に基づき継続支給の判定が行われ、継続の場合には、毎年10月分(12月支払)から1年間反映されます。

③支給要件を満たさなくなった場合、「年金生活者支援給付金不該当通知書」が送付されます。

④給付額は毎年度、見直しが行われます。

⑤年金生活者支援給付金は、老齢年金の支給日に同じ受取口座に別途振り込まれます。

⑥以下に該当する場合は、年金生活者支援給付金は支給されません。

  • 日本国内に住所がないとき
  • 年金が全額支給停止のとき
  • 刑事施設等に拘禁されているとき

5. 年金は「まだ先のこと」ではない。老後への備えは「いま」から始めよう

いまのシニア世代の老齢年金について、実際にどれほどの受け取っているのかを65歳~89歳まで1歳刻みで確認してきました。

また、年金生活者に対する支援制度の概要についても見てきました。

国民年金や厚生年金の保険料を当たり前のように支払っているものの、年金について知らないことはたくさんあるものですね。

老後、わたしたちの収入の柱となるであろう公的年金。ご確認いただいたとおり、年金だけで長い老後生活をやりくりできるのか?と不安になる状況です。

老齢年金の受け取りは、まだまだ先のことかもしれませんが、老後に向けて「備え」を始めるのは「いま」ではないでしょうか。

まずは、ねんきんネットやねんきん定期便でご自身の年金見込額を把握し、老後を迎えるまでに「いくら」貯めるかを決めるところから始めてみましょう。

参考資料

和田 直子