2007年4月より、離婚時に年金分割ができるようになりました。

会社員の夫と専業主婦(またはパートなど)の妻が離婚した場合、夫は高額の年金を受け取れるのに対し、妻は少額の年金しか受け取れないという不都合を解消するため、この制度が設けられました。

以前は結婚後は会社を辞めて家庭に入る女性も数多くいましたが、女性の社会進出に伴い、男女の就業形態も多様化しています。

そのため、年金分割は、女性だけでなく場合によっては男性にとってもメリットのある制度となりました。

本記事では、妻が厚生年金で夫が自営業のケースでの年金分割について解説します。

離婚を検討中の人は、制度内容を理解して利用するかどうかを判断しましょう。

1. 年金分割とは

まず最初に、年金分割の仕組みについて解説します。

1.1 年金分割とは厚生年金の加入記録を分割すること

年金分割とは、受け取る年金額を夫婦で分割するものではありません。

分割するのは、老齢厚生年金の計算基礎となる婚姻期間中の厚生年金加入記録(標準報酬月額、標準賞与額)です。

標準報酬月額や標準賞与額は毎月の給与額や賞与額とは少し異なり、4~6月の報酬を基に報酬月額を1等級(8万8000円)から32等級(65万円)までの32等級に区分し、原則9月から翌年8月まで適用します。

厚生年金加入記録を分割する割合(按分割合)は、双方の合意によって決まります。

分割前後の夫婦の標準報酬月額を、具体的に見てみましょう。按分割合は50%とします。

出所:LIMO編集部作成

婚姻期間中の各月、賞与支給月すべての標準報酬月額と標準賞与額が分割されます。

1.2 年金分割によって老齢厚生年金の受給額が変わる

厚生年金加入記録を分割すると、将来受け取る(または受給中の)老齢厚生年金額が変わります。

老齢厚生年金額は、厚生年金加入記録を基に計算するからです。

会社員の夫の扶養期間が長い妻の年金額は低額になりがちですが、離婚して年金分割すると厚生年金加入記録が追加され、老齢厚生年金額がアップします。