2023年8月19日にログミーFinance主催で行われた、第59回 個人投資家向けIRセミナー Zoom ウェビナーの第1部・バリュエンスホールディングス株式会社の講演の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:バリュエンスホールディングス株式会社 取締役CFO 佐藤慎一郎 氏
元・ファンドマネージャー/元・ディーラー 坂本慎太郎(Bコミ) 氏
経済アナリスト/経営コンサルタント 増井麻里子 氏
第59回 個人投資家向けIRセミナー
佐藤慎一郎氏(以下、佐藤):バリュエンスホールディングスの佐藤です。当社は世界中の実物資産を不要になった人から必要な人にマッチングし、モノを循環させるサーキュラーデザインカンパニーです。
私たちは循環型社会における重要な取組の1つであるリユースを事業の中核に据え、持続可能な世界の実現を目指しています。本日は当社の強みや特徴、中長期的に目指す姿などをご説明します。
Corporate Profile 会社概要
佐藤:会社概要です。代表は嵜本晋輔、元Jリーガーという経歴を持っています。本社は表参道にあり、資本金は12億円、現在の従業員数はグループ全体で1,000名を超え、連結子会社11社、持分法適用会社1社の計13社で事業運営を行っています。
創業、そして事業拡大へ
佐藤:スライドは創業からこれまでの事業沿革です。先ほどご説明したとおり、2001年に当社代表の嵜本がガンバ大阪に入団します。選手として3年間活躍した後、2004年にサッカー界から引退し、嵜本の父が経営するリユースショップに入社しました。その中でもブランドリユース事業に着目し2011年に独立し、当社の前身であるSOUを設立します。
その後、2018年に東証マザーズに上場、2020年に社名をバリュエンスホールディングスに変更しています。同じく2020年に「VG1000」という中期経営計画を発表しました。現在は2025年に向けて中期経営計画を実行している段階です。
Purpose パーパス
佐藤:当社は「Circular Design for the Earth and Us」、日本語にすると「地球そして私たちのために循環をデザインする」というパーパスを掲げています。
2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」が叫ばれるなど、サステナビリティが世界的に非常に重要なテーマとなっています。
当社が営むリユース業はサステナビリティの中心に位置する事業です。だからこそ、これまでのように売上や利益のみを追求するのではなく、環境問題や社会課題を解決できる企業となるため、パーパスとともに企業活動を行っています。
Mission ミッション
佐藤:ミッションは「大切なことにフォーカスして生きる人を増やす」としています。リユースはもちろん、スポーツなどの事業活動を通じ、本当の幸せや豊かさに気づいてもらうきっかけを提供していきたいと考えています。
Circular Design Company 2030年に目指す姿
佐藤:以上のパーパスとミッションのもと、2030年に「Circular Design Company」の実現を目指しています。循環をデザインする会社として、「顧客とパートナーとの関係を通じてValuenceを中心にモノが循環する世界を実現」し、新たな収益機会を創出していきます。
主なビジネスモデル
佐藤:現在のビジネスモデルを簡単にご説明します。当社の場合、商品を売る一般的な小売業と物流が逆になっています。仕入サイドとして一般消費者からブランド品や骨董・美術品などを購入し、主に事業者へ売っていく「CtoBtoB」というビジネスモデルです。
主に「なんぼや」「BRAND CONCIER」「古美術八光堂」という屋号での店頭買取、お客さまのもとへ出向く出張買取や、品物を送っていただく宅配買取、オンラインで商談を行うオンライン買取を通じ、お客さまから品物を購入します。
そして、オークションという形式でブランド品や美術品・骨董品などを同業のリユース事業者へ販売します。一部は「ALLU」というブランドで一般消費者に小売で販売していますが、全体の約85パーセントから90パーセントは事業者、つまりB向けの販売となっています。「CtoBtoB」というビジネスモデルが、他の業界と異なるモデルであることをご理解ください。
収益構造
佐藤:収益構造です。当社の売上ですが、一般消費者から仕入れた品物をオークションなどを通じて事業者に販売する金額が商品売上として計上されます。さらにオークションで落札された商品に関しては、落札金額の5パーセントを手数料収入としていただいています。原価は、一般消費者から仕入れた金額です。この2つの差分が売上総利益となります。以上が当社の主な収益構造です。
事業紹介/サービス紹介 〈買取〉
佐藤:当社は、品物を買い取り、事業者のお客さまに販売する事業を、いくつかの屋号をもって運営しています。ブランド品等の買取に関して、日本国内では「なんぼや」「BRAND CONCIER」、骨董品・美術品は「古美術八光堂」という屋号で、全国に約130店舗展開しています。海外の買取は「ALLU」という屋号で行っています。
そのほか、三越伊勢丹さまと連携している「i'm green」事業のように、最近は他の事業者とのアライアンスによる仕入も増えています。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):アライアンスとして三越伊勢丹さまとのお話がありましたが、これ以外にもいろいろな可能性があると思います。競合になるような他の百貨店とは連携できるのかなど、今後のイメージについてさらに詳しく教えていただけると助かります。
佐藤:当社の買取品は骨董品・美術品、ブランド品、純金などがメインになっています。そのため、富裕層がお客さまになるケースが比較的多いです。
三越伊勢丹さまのように、特に外商ビジネスなどにおいて富裕層を顧客に持っている場合は連携できるかと思います。三越伊勢丹さまは、「i'm green」を通じてお客さまの大事にされていたものを捨てずに何らかのかたちで次につなげていくことを、販売後のサポートとして百貨店が存在する社会的意義になるという考えのもとで、当社とアライアンスを組んでいただいています。
坂本:一度売ることである程度の資金が手に入り、さらに新しい商品を仕入れることもできるという考えですね。
佐藤:日本橋三越、伊勢丹の新宿店・浦和店に「i'm green」のスペースがあります。そこで買取させていただいた後、店舗内で新しいものをお買い物されるお客さまが多いとも聞いています。
坂本:そのように考えれば、他社もそれほどバッティングせず、ウィンウィンといいますか、協業できそうな感じではあるのですね。
佐藤:そのような意味では、他の百貨店とも十分運営できる事案だと思いますし、いくつかお話しさせていただいている中で、一番進んでいるところが三越伊勢丹さまになっています。また、それ以外に富裕層を持っている事業体として、証券会社や銀行などの大手金融機関とすでにいくつかのアライアンスを組んでおり、お客さまをご紹介いただいています。
事業紹介/サービス紹介 〈オークション〉
佐藤:販売面のブランドとして、事業者向けにブランド品や時計のオークションを行う「STAR BUYERS AUCTION(以下、SBA)」があります。また、古美術など美術品のオークションは「THE EIGHT AUCTION」という名前で展開しています。
事業紹介/サービス紹介 〈小売〉
佐藤:現在、小売向けに「ALLU」という屋号で銀座、表参道、大阪の心斎橋で3店舗を展開しているほか、ECサイトも運営しています。今後は日本国内のみではなく、海外にも展開していく予定です。先ほどtoBのオークションとして「SBA」があるとお話ししましたが、一般消費者、いわゆるtoCに、現在は時計のみを扱っている「ALLU AUCTION」も開始しています。
坂本:御社はこれまでtoBオークションで成長し続け、toCも始めたということですが、toBとtoCではどちらの利益率のほうが高いのでしょうか?
佐藤:toBは基本的にどのような方も触れやすい商品を中心にしているのに対し、toCの「ALLU AUCTION」は比較的レア、限定品などの珍しい商品が中心です。時計を愛用し、趣味にしている方を対象にしているような需要特性があります。ですのでtoCのほうは、愛好者が「ある程度値が張っていても欲しい」と考える商品が中心になっているため、現在はtoCのほうが比較的利益率が高いと考えていただいてよいです。
坂本:今後の「ALLU AUCTION」の展開について、品目を増やしてtoBに近いかたちにしていく、もしくは特化型としてこのまま続けていくというようなイメージがありましたら教えてください。
佐藤:現在でも事業者も参加できるようなかたちになっています。加えて時計以外のジャンルを増やしていくことや、当社のみが出品している現状のかたちから、「SBA」と同じように同業他社の商品も出品できるようにすることで、商品数やラインナップを増やしていきたいと思っています。
坂本:toCのほうは誰でも登録できるのでしょうか?
佐藤:おっしゃるとおりです。インターネットでも落札できますし、銀座にある当社の「VALON」というラウンジでリアルタイムのオークションを開催しています。
坂本:そこに行くこともできるのでしょうか?
佐藤:お越しいただいて大丈夫です。「ヤフオク!」のようなインターネットオークションのかたちではなく、リアルに落札額の競り上がりを見ることができます。エンタメ性もあり非常におもしろいと思いますので、時計が好きな方がいらっしゃいましたらぜひご参加ください。
事業紹介/サービス紹介 〈自動車〉
佐藤:新たな事業として自動車買取事業を行っており、株式会社米自動車をM&Aし、YONE MOTORSというブランドで自動車事業を展開しています。
坂本:自動車事業を始められたとのことですが、新車販売のメーカーは、外車中心でしょうか?
佐藤:新車よりも中古車のほうが多いですが、YONE MOTORSは高級車のメンテナンス、整備事業を非常に得意としています。主に高級車を扱っており、販売も富裕層を中心としています。
単価が非常に高く、「ポルシェに乗っている方の多くがロレックスを身に着けている」と言われることから、事業の関連性もあります。「まったく関連性のない事業ではないか」と思う方もいるかもしれませんが、当社としては高級自動車を愛用している方と当社が扱うブランド品や時計は親和性が非常に高く、将来的にアップセルやクロスセルも期待できる分野だと考えています。
事業紹介/サービス紹介 〈不動産〉
佐藤:不動産事業として「なんぼや」にお越しになるお客さまを中心に不動産仲介サービスも行っています。
バリュエンスグループの強み
佐藤:事業の強みである集客力、買取力、販売力の3点を簡単にご説明します。
集客力/独自のO2O(Online to Offline)モデル
佐藤:集客力についてです。当社が一般的な小売業と大きく違う部分は、お客さまから品物を買うところです。一般消費者に売るのではなく、買うのです。一般的な消費行動として、歩いている時に路面店で衝動買いというケースはよくあります。しかし、物を売る時に「今日、急に時計を売りたくなった」ということはなかなかないと思います。
「時計を売る」という行動を起こす場合、スマホで「Google」などから「時計」「売却」などと検索し、買ってくれる業者が近くにないかを調べてから来店する方が非常に多いです。ですので、当社はまずSEOやリスティング広告などを中心としたWebマーケティングに力を入れています。そこで、できるだけコンテンツを豊富にし、当社のホームページに来たお客さまを近くの店舗に誘導します。
もしくは、事前に写真を撮ってお送りいただくことで「LINE」で査定を行い、どのくらいの金額で売れるのかを提示し、お客さまを店舗に誘導するというところは、当社がいち早く取り入れた集客方法です。Webマーケティングや、「UI×UX」の最適化、「LINE」での査定などに非常に強みを有しています。
買取力/接遇を重視した買取スタイル
佐藤:買取力についてです。当社の店舗に来ていただくとよくわかると思うのですが、個室のブースを用意しており、お客さまのプライバシー性を非常に重視した、清潔感あふれた入りやすい店舗作りを心がけています。
単に金額を提示するだけではなく、個室のブースで飲み物を提供し、お客さまの気持ちに寄り添った接客で商品の価格を設定させていただき、リラックスした中で気持ちよく売っていただくことを心がけています。その結果、成約率90パーセント以上を実現しています。
買取力/高精度プライシングの仕組み
佐藤:一方、一番気になる買取金額に関してですが、当社はオークションで、その商品がどれくらいの価格で販売されているのかという情報がリアルタイムにわかります。それを本部スタッフがサポートすることで、より実勢値に近い金額での買取金額をお客さまに提示できる体制が整っています。
販売力/業界のハブとなるオークションプラットフォーム
佐藤:販売力についてです。当社の場合、買取したものを基本的には仕入れた月の翌月には、オークションで販売します。落札するパートナーは日本だけではなく世界中におり、現在約3,000社のパートナーがいます。その方々にオークションで販売しているという販売力を持っていることが特徴になっています。
坂本:こちらについて、当然自社の出品はあるのですが、他社の受け入れもされているということで、自社・他社比率はどのくらいなのかを教えてください。
佐藤:オークションの全体の20パーセントくらいは、他社の商品を扱っています。
坂本:ほぼ自社がメインなのですね。
佐藤:はい、そのとおりです。当社は世界中のパートナーから札が入り、また、買取力もあるため、商品が非常に豊富です。世界中からパートナーが集まってきているということで、非常に高く商品が売れると評判になっています。
他社というのは、買取面では競合になる会社なのですが、そのような方々からも、高く売るために売らせてほしいということで、こちらが今、非常に伸びています。
坂本:落札は世界からというお話ですが、国内外比率はどのくらいなのでしょうか?
佐藤:現在、全体の3割から4割くらいが海外のパートナーです。今は円安のため、海外の方にとっては非常に買いやすい環境にあり、積極的に参加いただいています。
販売力/オークションプラットフォームでの同業他社への販売
佐藤:当社の特徴は、買取という場面では競合になるリユース事業者に対してオークションで販売しており、同業他社とはフレネミー的な関係にあることです。
また、買い取ったものを素早く売るという体制をとっており、一般のリユース事業者が個人に売っているのに対し、当社は事業者に翌月に売ることで、在庫回転期間が約半分になっています。このように、資金効率が非常に良いビジネスモデルだというところで、他社とは少し違った特徴を持っているとご理解ください。
売上高推移
佐藤:沿革のところでお話ししましたが、2025年8月期の売上高1,000億円を目標とした中期経営計画を2020年に発表しています。
ビジネスモデル
佐藤:これまでのCashCowモデルの既存事業をベースに、新規領域への投資を行っています。 toC事業、toB事業のそれぞれに投資を行っており、大きなテーマとしては、エンゲージメントを高めることを目的とした投資を行っています。
一般消費者とのエンゲージメント強化(toC事業)
佐藤:toCに関しては、エンゲージメントを高めるために、先ほどお話ししたような「ALLU AUCTION」を実施し、ファン層を囲い込みます。また、自動車事業や不動産事業といった他の領域に進出することによって、お客さまから買い取れる商品の領域を増やします。
実物資産をワンストップで取り扱い、お客さまの悩みを解決できるような関係性を構築していくことで、これまでの単にお客さまの物を買うだけの関係から、違う物を買い取ったり、修理・メンテナンスを受け付けたりなど、一度だけではなく、二度、三度と繰り返し使っていただけるような関係になっています。
小売事業も強化していくことで、今度は当社が販売した商品をお客さまが売り、また違う商品を再度当社から買っていただくような循環的な関係値、双方向の関係値を強化していけるよう、新しいサービスの領域に対して投資を行っています。
パートナーとのエンゲージメント強化(toB事業)
佐藤:toBに関しても、これまでのようにオークションに参加して商品を買う、もしくは委託で商品を預けていただくという関係値から、委託の事業者に関しては、商品を送っていただければ、写真撮影や検品などをすべて当社が行う「おまかせ出品」というサービスを提供します。
それに加えて、落札した商品を当社小売ブランドの「ALLU」で、委託で販売します。当社に商品を預けていただければ、最終的なtoCの販売まですべて行い、事業者は買い取った物を売る努力をせずに最終の消費者に届けられます。
事業者にとって便利なサービスを提供していくことで、事業者とのエンゲージメントも高めていきたいと考えています。
Global Reuse Platformer の実現
佐藤:今は、このようなtoB、toCサービスを日本全国で展開していますが、グローバルに展開していくことが当社の最終的な目標で、それが「Circular Design Company」だと考えています。
つまり、事業者も一般のお客さまも、リユース品を当社に売っていただき、当社のプラットフォームから買っていただくような「グローバルリユースプラットフォーム」を、2030年には実現させたいと考えています。
中期経営計画『VG1000 ver2.0』の位置付け
佐藤:「VG1000 ver2.0」の位置付けについてです。2030年に「Circular Design Company」となることを実現していく中で、2025年までの5年間は投資期間だと位置付けています。そのような意味で、「量的投資」「質的投資」「人的投資」「領域拡大」「グローバル」の5つのテーマを持って、この5年間は積極投資を行っています。
中期経営計画『VG1000 ver2.0』の重点投資領域
佐藤:実際、これまでにFY21は量的投資ということで、M&Aなどを実施して店舗数を増やしました。FY22は質的投資ということで、DX投資を積極化し、フルフィルメントサービスや顧客のデータ基盤の整備、AI査定の開発などを行っています。
今期のFY23に関しては、人的投資ということで、積極的な人員の採用、研修、ダイバーシティの推進などを行っています。来期以降は、領域の拡大やグローバルなどを中心に、積極投資を続けていきたいと思っています。
仕入拡大に向けた取組
佐藤:仕入れ拡大に向けた取組としては、店舗の拡大のほかに、パートナーとのアライアンスの強化、海外の出店強化などを買取拠点の拡大として考えている一方、既存のお客さまにリピーターになっていただくためにCRMのマーケティングを強化します。
特に、「LINE」を通じた1to1マーケティングというのを積極的に行っていきたいと思っています。
販売拡大に向けた取組
佐藤:販売拡大に向けた強化としては、より魅力的なtoBプラットフォームの実現ということで、先ほどお話しした施策を行っています。
toCの強化としては、グローバルECの構築や小売の出店強化などを行っており、グループシナジーを創出することによって、収益を最大化していきたいと思っています。
ジャンル拡大による収益機会の最大化
佐藤:ジャンル拡大による収益機会の最大化ということで、先ほどお話ししたとおり、自動車事業や不動産事業への参入をすでに行っています。それ以外にも、実物資産を中心に、ジャンル拡大による新たな収益も、今後検討していきたいと思っています。
心の豊かさを提供価値としてビジネスを拡大
佐藤:心の豊かさを提供価値として、スポーツ事業においてプロサッカークラブの南葛SCへの出資や、プロダンスリーグのD.LEAGUEへの参画なども行っています。
人材の価値を最大限に引き出す
佐藤:人材の価値を最大限に引き出す人的投資として、人材育成に加え、多様性強化によって、いろいろな人が、さまざまなライフスタイルに合わせて働きやすい環境を実現していくことと、成長機会をきちんと与えていくことの両面を重視しています。
このように、働きやすい環境を整え、人的資本を最大化することによって、事業拡大につなげていきたいと考えています。
VG1000 ver2.0 重要経営目標
佐藤:投資期間としている一方で、利益成長もきっちり行っていくために、経営目標としてはFY22の営業利益をベースに、FY25までにCAGR40パーセント、FY25にはROE20パーセントを達成したいと考えています。株主還元指標としては、毎期、配当性向30パーセント以上を掲げています。
中期経営計画「VG1000 ver2.0」主要KPIの進捗
佐藤:KPIの進捗です。売上高は、前期は633億円、今期の目標は750億円で、第3四半期までで536億円を達成しています。また、その他の指標も、FY25に向けて順調に進捗していると考えています。
坂本:FY25の店舗数について、ここから国内外でけっこう伸びるかたちになっていると思います。買取と販売の店舗がいろいろとあると思うのですが、FY24、FY25で平均的に伸びていくのか、FY25にかけて伸びていくのか、そのイメージを教えていただけたらと思います。
佐藤:基本的には、FY24、FY25のどちらかに集中しているというよりは、分けてというかたちです。特に海外に関して言いますと、パートナーとの協業店舗を中心に順調に伸ばしていけるのではないかと考えています。
坂本:国内は買取中心ということでしょうか?
佐藤:そのとおりです。小売店舗も数店舗出す予定にはなっていますが、ここでお示ししている計画は買取店舗数になります。
事業活動として取り組むテーマ
佐藤:サステナビリティについてです。当社は、事業の特性やステークホルダーからの期待を踏まえ、18個のマテリアリティを特定しています。そのマテリアリティをもとに、当社が目指すESGのそれぞれについて、スライドに記載のように定めています。
サステナビリティへのコミットメント
佐藤:持続可能な社会への貢献と当社の持続的な成長を目指し、こちらのスライドに記載のコミットメントを定めています。企業としての責任を果たしていくため、カーボンニュートラルを目指すとともに、働く環境の改善やガバナンスの強化を行っていきます。
FY22のResale Impactを算出、公開
佐藤:当社は独自の取組として、リセールインパクトの算出、公開を行っています。リセールインパクトとは、リユースすることによる、二酸化炭素や水などの環境負荷削減貢献量を見える化したものです。リユースにより新たに製品が生産されないと仮定し、新品の資源調達から輸送、廃棄における環境負荷削減に貢献できたという考え方で算出しています。
Resale Impactの事業展開強化
佐藤:リセールインパクトは、小売店の「ALLU」の商品タグや、ECサイトの商品説明、「なんぼや」のサイトの店舗ページにも記載しており、リユースが環境に良いことだとお客さまに気づいてもらうきっかけになるように、事業面でも展開を進めています。
取締役の体制
佐藤:取締役の体制についてです。社外役員で過半数を占め、しっかりとガバナンスが効く体制を構築しています。
STAR BUYERS AUCTION(SBA)でのSaaS型新機能の提供開始
佐藤:直近の取組についてです。まず、「SBA」のSaaS型新機能の提供についてご説明します。先ほどお話ししたとおり、「SBA」が非常に好評だということで、これをSaaS化し、同業のお客さまが自分たちのオークションの屋号を使ってオークションができる仕組みを提供していきます。
システムは当社が提供しており、そのシステム利用者には当社がすでに開拓しているお客さまがいます。そのため、市場主となるお客さまとしては、自分のオークションを開催できることに加えて、国内外の事業者により高く売ることが期待できるということで、非常に好評なサービスです。2023年3月から提供を開始しています。
フルフィルメントサービスの開始
佐藤:先ほどお話しした、フルフィルメントサービスについてです。これは「SBA」で落札した事業者が、今度は当社の小売店の「ALLU」に委託出品するというサービスです。
2023年5月からサービスを提供しており、すでにお客さまに活用されています。
小売のグローバル展開加速
佐藤:小売のグローバル化として、ECシステムを活用した小売店をグローバルに展開します。具体的には現在、日本やアメリカで展開している「ALLU」のECシステムを香港やシンガポール、UK、フランス、ドバイなどでも展開し、今後は在庫連携により、ワンストップで日本のものを海外に販売していくシステムの構築を推進していきます。
坂本:グローバルECがすべて立ち上がるのはいつくらいでしょうか? また、在庫連携によって世界中から商品を買えるようになる時期も含めて教えてください。
佐藤:これは来期の重点投資領域になります。来期1年間をかけて、これらの地域での展開は完了すると考えています。世界中の在庫と日本の在庫をワンストップで連携していき、自国の商品を買うように日本の商品を買えるシステムになっています。
坂本:フルフィルメントサービスでもお話がありましたが、御社と他社のシステムで同時に販売できるように整備していく予定ですか?
佐藤:先ほどお話ししたフルフィルメントサービスともつながっており、他社からの委託商品も含めてこちらのECサイトで販売できます。そのようにすることで海外との内外格差により、今は円安のため海外のほうが高く売れます。
特に小売は高く売れる傾向があります。日本のリユース品は非常に綺麗に使われており海外から大変評判が高く、そちらをより高く売るための委託も増えてくると考えています。そこの力を付けることによって当社の利益率向上に貢献するだろうと思っています。
株主還元
佐藤:株主還元についてです。先ほどお話ししたとおり、当社は基本的に株主の配当性向を30パーセント以上と掲げています。今期の配当に関しては1株当たり30円を予定しています。
質疑応答:インバウンドの回復による影響について
坂本:御社は買取が基本だと思いますが、インバウンドが回復してきている影響はありますか? また、外国人観光客が御社の「なんぼや」などに売却することもあるのかを含めて教えてください。
佐藤:本人確認書類があれば外国人観光客からも買取は可能です。当社の販売面では小売が1割程度ですが、この小売店でも来店客の半分以上は外国人観光客です。
一方で、toBのお客さまもインバウンドという商機を逃さないよう仕入れを強化していることもあります。先ほど海外の比率が高いとお話ししましたが、それに負けじと入札するお客さまもおり、日本勢の巻き返しを足元で感じています。
当社としては、より高く売れるチャンスにつながると思っており、買い取ったものを高く売るという意味では、インバウンドは絶好の機会と捉えています。
質疑応答:海外での店舗名について
坂本:海外の買取店舗の名前は「なんぼや」ですか?
佐藤:海外は「ALLU」という名前で展開しています。国内では、小売店が「ALLU」で買取店が「なんぼや」ですが、名称が共通のほうがお客さまの認知もよりよいと考えているためです。
国内では「なんぼや」が非常に広まっているため、今からこれを変えるのは難しいと思っています。しかし、海外でこれから事業展開していくには買取も販売も「ALLU」で統一したほうがお客さまの認知は進むだろうと考えています。
坂本:観光客が自国に帰ってから、同じ店があることを実感できるかもしれないと思ってうかがってみました。ありがとうございます。
質疑応答:円安の影響について
坂本:円安の影響はあるのでしょうか? 先ほどは外国人観光客の来店者数が非常に多いというお話でしたが、コロナ禍での日本の閉鎖的政策が解禁されたことと円安は売上においてリンクするものでしょうか?
佐藤:「SBA」は日本円でオークションをしていますので、外国の事業者からすれば同じ100万円でも、1ドル120円の時と140円の時では、ドルベースで値下がりしているかたちになります。
そのような意味では円安の方が、海外の事業者が参加しやすい環境になっており、他社と比べるとオークションの開催頻度が高いのが当社の特徴ですので、外国人がいることによって札が上がりやすい傾向があるところに、円安の影響が表れていると思っています。
質疑応答:競合環境について
坂本:リユース業界について、一部にそうではない企業はあったものの、概ね業績がよい状況でした。特に御社は買取が基本だと思いますが、その競合環境を教えてください。
佐藤:競合に関しては今も昔も厳しい環境です。基本的に参入障壁が低い業界であり、警察庁から古物商の免許が取れれば開業できますが、一方で廃業する業者も中にはいますので新陳代謝が激しい業界です。
その中で明確に差別化していくことと、仕入れたものをより高く売る力を付けていくことが、競争力の源泉ではないかと思っています。
また、リピーターを増やすということも重要です。新規顧客の争奪戦は厳しい環境ですので、一度来ていただいたお客さまに満足していただき、次も使っていただくことによって、マーケティングコストの削減につながっていきます。そのため、今の当社の方向性としてお客さまとのエンゲージメント強化を掲げています。
質疑応答:相場の影響について
坂本:御社の取り扱う商品は高額であったり、嗜好性が高かったりして相場がぶれるものが比較的多いと投資家の方は認識していると思います。御社のビジネスモデルは買い取ってすぐにオークションに出すため、在庫として持っている期間が非常に短く、それほど影響しないと思っているのですが、相場の変動は業績に影響がないのでしょうか?
佐藤:相場が業績にまったく影響しないとは言いにくいです。相場が下がっている時では買取量も少なくなりますし、上がっているから売ろうとするわけで、下がっているのに慌てて売る人はあまりいないため、ある程度の影響は受けます。
坂本:事業関係としては、どちらかというと上がっているほうがよいですか?
佐藤:おっしゃるとおりです。
質疑応答:新型コロナウイルス感染症の影響について
坂本:新型コロナウイルス感染症の影響はあったのでしょうか? 今後アフターコロナでさらに上向くのか、ブランド品と新型コロナウイルス感染症の関係を含めて教えてください。
佐藤:当社は店頭での仕入が9割を占めているため、コロナ禍の行動制限によって仕入量が非常に大きな影響を受けましたが、その中でもいろいろ工夫し、収益を着実に上げることができました。
リオープンでお客さまが非常に増えてきたことによって仕入量も増えている事実がありますので、コロナ禍でも着実に投資を行ったことで、回復した時にそれを享受できていると考えています。
坂本:確かに宅配のイメージはほとんどないですね。本などは宅配買取を利用しても、ブランド品だと少し心配になるように思います。コロナ禍だからこそ生まれた文化もあるのですかね。
佐藤:そのとおりですね。オンライン買取などは、コロナ禍によって生まれたところがあります。最初は感染症対策として行っていたのですが、いざ始めてみると夜間の商談という新しい需要を見つけることができました。
お客さまが働いて家に帰ってから、店が閉まっている時間帯に商談をするという夜間の商談がオンラインで非常に増え、ニーズが高いことを実感しました。
そのような商談も増えており、最初はそのようなことを想定せずに進めた新しいサービスでしたが、新しいニーズを見つけることができたと思っています。
質疑応答:フルフィルメントサービスについて
増井麻里子氏(以下、増井):フルフィルメントサービスを始めて、投資がかさむなど、体制にそのような影響はなかったのでしょうか?
佐藤:2023年5月にローンチしたばかりで、今はそれほど物量がない状態です。すぐに進めたからといってスムーズにできるわけではなく、オペレーション確立に向けた問題点などが出てきますので、今はそのようなところに丁寧に対処している段階です。来期くらいからアクセルを踏んで営業活動し、物量を増やしていくことができるのではないかと思っています。
増井:展開しながら改善していくということですね。
佐藤:そのとおりです。今は導入期間の段階です。委託ビジネスもサービスを開始してから立ち上げまでに1年から2年かかっていますので、フルフィルメントサービスもやはり1年から2年かけながらお客さまに支持されていくのではないかと考えています。
今後、グローバルECなどが着実に進んでそこでの販売などが増え、当社のサイトでより高く売れるとなると、委託しようというお客さまも増えてくると思います。フルフィルメントサービスは、グローバルECや小売の強化と特にパラレルな関係にあると思っています。
質疑応答:フルフィルメントサービスのフィーについて
坂本:フルフィルメントサービスについてさらに詳しくおうかがいします。在庫を委託で受け販売まで一貫するというものですが、これはどこでフィーが発生するのか教えてください。
佐藤:事業者が落札したものを当社が梱包し出荷するのですが、ECで再度売られるケースが多いです。そこで当社に落札から販売までを委託するとなると、倉庫保管料と出荷手数料、売れた金額に対する一定量の委託手数料が発生することになります。
これまでのお客さまの場合は出品して落札されたものをまた梱包し、写真を撮ってからECに載せていましたが、この手間が省けます。
坂本:これは非常によいサービスだと思います。
佐藤:今後の成長を期待しているところです。
坂本:ひとまず載せておくということもでき、ビジネスの機会が非常に増えると思っています。
質疑応答:海外駐在員の有無について
増井:「海外には自社駐在の方はいますか?」というご質問です。
佐藤:もちろん、います。今は香港、シンガポール、フランス、イギリス、アメリカ、ドバイに現地法人を作り、そこに当社の駐在員がいます。
質疑応答:今後強化していく点について
坂本:今後伸ばしていく屋号としては先ほどのお話のとおり「なんぼや」で、基本的に日本国内では買取をもう少し増やしていくということでよいでしょうか?
佐藤:おっしゃるとおりです。また、「なんぼや」を増やすのと合わせて小売店「ALLU」を強化していきたいと考えています。法人の販売力は十分ありますが、小売の販売力は今後の当社の成長の鍵の1つと位置づけています。
買取をしたお客さまに、これからは販売もしたいと考えており、その意味で「ALLU」を強化していきたいと思っています。
質疑応答:買取店舗の開発について
坂本:「なんぼや」について「日本国内はこれでもう大丈夫だ」と考えられるイメージとしては、どのくらいの出店規模になるのでしょうか? ある程度の大都市から中規模都市までを網羅できるくらいではないかと思っているのですが、FY25の170店舗からまだ増やす必要はあるのかというのも含めて、買取店舗のお話を教えてください。
佐藤:買取店舗の余力はまだあると思っています。大都市圏の主要なターミナルにはすでに出店していますが、郊外のターミナルや地方の県庁所在地などはまだ出店の余地があります。
特に地方店で言いますと、これまでは駅チカに出店していましたが、郊外のロードサイト店なども新しい商圏だと思っています。当社が知らないところに店舗開発の余地がまだあるのではないかと思っています。
坂本:非常によくわかりました。郊外は意外でした。
佐藤:郊外は車文化ですので、目的をもって車でパッと行ってパッと帰ります。ターミナル店のどこかに車を置いてそこから動き回るというよりは、目指すものがあるところに直接車で向かうというのが郊外の方の行動パターンではないかと思っています。
坂本:確かに、車に絡ませると商圏が30キロ以上でもカバーできるため、中核都市との間に作ると意外な結果をもたらすかもしれませんね。
佐藤:そのとおりです。そのようなニーズは今後もあるだろうと思っています。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
<質問1>
質問:外国人の購入や買取の割合について、「中国人が2割、欧米人が2割」などのように詳細を教えてください。
回答:小売店舗においてはインバウンド売上のうち、中国のお客さまが約4割、東南アジアのお客さまが約2割、アメリカのお客さまが約1割となっています。
<質問2>
質問:買取商品で多い物を上から順に3つ教えてください。
回答:時計・バッグ・ジュエリーの順となっています。
<質問3>
質問:販売力について「多言語対応」と記載されていますが、どのくらいの言語に対応しているのでしょうか?
回答:「SBA」では日本語のほかに、英語・ドイツ語・フランス語・イタリア語・中国語に対応しています。
<質問4>
質問:今後のグローバル展開について詳しく教えてください。
回答:仕入面においては、海外での買取店舗の展開のほか、マーケティングに注力することにより仕入量を増やしてまいります。また販売面では、海外拠点でのECサイト開設により、在庫連携をしながら世界中で日本にある商品を同時に出品できるようになることを目指しています。