皆さま こんにちは。アセットマネジメントOneで、チーフ・グローバル・ストラテジストを務めます柏原延行です。

これまで、株価が急騰する局面において、「割安・割高についての見方」を予想PERという頻繁に利用されるバリュエーション指標を利用してご説明してきました。

予想PERが株価の割安・割高の判断に有益であることは、疑いのないことであると考えます。

一方で、予想PERは、(通常)次期の予想利益と株価から算出されるバリュエーション指標であり(「予想PER=株価/1株当たり予想利益」と定義されます)、 2017年11月7日公開の『株価は既に割高なのか?(その3)』でご説明したように、どう考えても、株価の割高、割安が、「次期の予想利益と株価」のみによって判断されると考えることは不自然です。

そこで、今回のコラムでは、予想PER以外のバリュエーション指標について、考えてみたいと思います。

企業の利益水準が高い中、企業が「お金を貯め込んで、使わないこと」が政治的に問題とされている風潮があり、このため、設備投資を促進させる政策や賃金を上昇させる政策が色々と議論されていると考えます(例:設備投資減税など)。

それでは、企業がお金を貯め込んでいることは企業価値(=株価)にどのような影響を与えるのでしょうか?

仮に、「お金を貯め込んで潤沢な資産(例:預金)を持つ企業A」と「資産が少ない企業B」があったとしましょう(厳密には1株当たりの純資産です)。

株価が同じであった場合、皆さんはどちらの企業に投資したいと考えますか?

通常の場合、企業Aに対する投資が有利です。なぜなら、株主は配当などの形で利益の分配を受ける権利を保有するとともに、(会社法の定める要件を満たせば)会社を解散してその残余価値の配分を受ける権利も有するからです。

このように株価は、会社の保有する資産とも連動するはずです。

この観点から、株価の割高・割安を判断しようとしたバリュエーション指標が株価純資産倍率(PBR:Price Book-value Ratio)です。株価純資産倍率は、「株価/1株あたり純資産額」と定義され、簡単にいうと、株価が1株当たりの純資産の何倍であるかを示したものです。

倍率が1未満であれば、株価は企業の解散価値を下回るほど割安です。多くの企業が継続的に利益を確保できる通常の経済環境であれば、株価純資産倍率が1を下回ることはない(orまれ)と考えるべきです。逆に、何倍以上であれば割高であるかは、予想PERの場合と同様に明確な答えを得ることができない問題であると考えます。

そこで、予想PERと同じように、 PBRにおいても、他の市場(or銘柄)との比較で、割高・割安は判断する必要があると考えます。

それでは、我が国、米国、欧州の代表的な株価指標を分析してみましょう(図表1)。

図表1:PBRと予想PERの比較

出所:ブルームバーグのデータを基にアセットマネジメントOneが作成。
※2017年11月16日基準

日経平均株価とNYダウ工業株30種平均のバリュエーションを比較すると、予想PERは19倍前後とほぼ同じである一方、日経平均株価の株価純資産倍率(PBR)は、NYダウ工業株30種平均と比較して、半分程度に留まっています(日経平均株価が割安)。

このように、PBRで見た場合、(米国株と比較して)日本株が割安であることが分かります。

次回以降の本コラムでは、PBRについて、資産効率の観点も交えて、もう少し掘り下げて考えたいと思います。

(2017年11月17日 9:00執筆)

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柏原 延行