「関西の人って東京に住んでも絶対に関西弁を捨てないよね」――そんな東京人の言葉を聞くことがあります。
一方で、テレビなどでも頻繁に芸能人の関西弁を耳にするようになった昨今は、関西弁を聞き慣れてきた、という方もいらっしゃるかもしれませんね。ただ職場によっては「関西弁NG」というところもあるようですし、東京にいる以上、普段は標準語で過ごすのが当然だと考える東京在住の関西人もいます。
では実際のところ、東京人(あるいは東京在住の関西以外の地方出身者)は東京で聞こえてくる関西弁をどのように聞き、どんな反応をしているのでしょうか。
You? それとも I?「自分」って誰のことを話しているの?
「次、自分の番」――もし関西人がこう言ってきたら、誰のことを話しているのだと思いますか?「次は私の順番ですからね」と確認しているのでしょうか。いえいえ、実は、東京人と関西人では「自分」が示す対象が違います。
一般的に“自分”といえば「自分自身」のことを指すと思う方が多いかもしれません。しかし、関西人が“自分”というときには「あなた」という意味になることがあるのです。つまり、関西人が「次、自分の番やで」と言ってきたら「次はあなたの順番ですよ」と相手に伝えていることになります。
ただ、東京人にとっては「自分=自分自身」なので混乱してしまい、話がかみ合わなくなることがあるのだそうです。
魔法の言葉!?「知らんけど」で全部リセットされる
関西出身者がいる投信1編集部で、先日次のような会話がありました。
「千葉の海沿いってなんとなく和歌山っぽいよね。知らんけど」
「あ~わかるわかる! 知らんけど」
「わかったのか、知らないのか、どっちだ!?」と思う人も多いでしょう。「知らんけど」――関西人の放つこの言葉には恐ろしい魔力があります。
関西人は「こういう話を聞いたことがあるが確証はない」というような意味にも、「あくまでも個人の意見です」というような意味合いにも、つい無意識に使ってしまいがちな言葉ですが、それまでに語られてきた内容のすべてをなかったことにする魔法の言葉だ、という東京人もいます。生まれも育ちも東京だという女性も、関西人の「知らんけど」について、こう話します。
「あれって、東京人のいう『なんちゃって』をきつくした言葉でしょうか。すごく丁寧に解説してくれたことも、熱心に同意してくれたことも、最後に『知らんけど』と言われると“信じるか信じないかはあなた次第です”みたいな雰囲気になって、すべてリセットされてしまいますよね…」
何かと「しばくぞ」と言われて怖い
ある男性はかつて同じ職場にいた関西出身の先輩が何かと「しばくぞ」と言っていたのが忘れられないと言います。
「あるとき仕事上のやり取りの中で『お前しばくぞ!』と言われたのですが、何のことだかわからなかったんです。それで『しばくって何ですか』と尋ねたら、火が付いたように怒って。『知らんのか!! しばくぞ』って…」
本来「しばく」とは「叩く」といった意味のある言葉ですが、本気で叩いたり、痛めつけようとしているわけではなく(恐らく)、「何言ってるんだ」「いい加減にしろ」というようなニュアンスで日常会話の中で頻繁に使う人がいるのかもしれません。でも、知らない人からすれば怖いですよね。
「〇〇してはる」は、とても上品で丁寧な言葉に聞こえる
関西から東京に引っ越してきたある女性は、旅立つ際に知人女性から「東京では関西弁というだけで下品に思われるから気を付けて」と忠告されたそうです。
「でも、その話を今の東京の職場でしたら、東京出身の人たちが『別に下品だなんて思わないけど』と言うんですね。『“〇〇してはる”なんて特に丁寧で上品に聞こえる』そうですよ」
「してはる」は、「~されている」「しておられる」というような意味で、関西では尊敬表現として使われています。ただ、この女性は次のようにも話します。
「京都の人は『してはる』をもっと広い意味で使っている気がします。友達のXXちゃんが勉強してはる、とか、猫がひなたぼっこしてはった、とか。関西弁も地域によってちょっとずつ違うんですよね」
まとめにかえて
関西弁に対する受け止め方は人によって違うでしょうし、印象も異なるでしょう。逆に「関西出身だけどそんなこと言わない」という人もいるかもしれません。みなさんはいかがでしょうか。
LIMO編集部