2023年7月28日、厚生労働省の審議会は2023年度の最低賃金の目安を「全国平均で時給1002円にする」旨をとりまとめました。
初めて1000円を超えることになる最低賃金ですが、このまま日本の平均年収の底上げにつながるのでしょうか。
国税庁が公表した「令和3年分 民間給与実態調査」によると、2021年の平均年収は443万円です。
こう見ると、年収1000万円を超えると「お金持ちな人」というイメージをする人も多いのではないでしょうか。
そんなお金持ちに分類されることが多い「年収1000万円超」ですが、果たして達成の難易度はどのくらいなのか気になるものです。
本記事では、年収データの割合から「年収1000万円超」に到達する難しさについて解説していきます。
年収1000万円超世帯の貯蓄額や生活費などの実態についても紹介しているので、参考にしてください。
※編集部注:外部配信先では【図表】などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
年収1000万円超は難しい?日本に5%も存在しない
冒頭でお伝えしたように、日本の平均年収は443万円であることから、その倍以上となる「年収1000万円超」はハードルが高いというイメージがありますが、実際はどうなのでしょうか。
国税庁の調査によると、2021年の日本で1年を通じて勤務した給与所得者数5270万人のうち、年収が1000万円超の人は4.9%という結果となりました(【図表1】参照)。
上記表から、日本では給与所得者の約20人に1人しか、年収1000万円超を突破できていないことがわかります。
なお、国税庁の同調査データをみると、年収1000万円超の割合はほとんどが「男性」となっています。
「年収1000万円超」の割合が男性で7.6%、女性で1.2%であり、その差は6分の1以下となっています。
なお、上記の年収の割合調査のデータは「給与取得者の統計」であるため、個人事業主は含まれていません。
会社員として「年収1000万円以上」を目指し到達している人は、全体で4.9%、男性で7.6%、女性で1.2%と、ほんの一握りであることがうかがえます。
「世帯年収」年収1000万円超は日本で何割?
前章では「年収1000万円超の会社員」の割合ついて解説しましたが、「世帯年収1000万円超」の場合は、割合はどのくらい変わるのでしょうか。
厚生労働省の調査データでは、世帯年収が1000万円超の割合は12.6%となっています。
「年収1000万円超の会社員」の場合は4.9%でしたが、「世帯年収1000万円超」の場合は12.6%であり、約8世帯に1世帯は年収が1000万円超であることがわかります。
現代では、以前よりも共働きが主流となっているため、夫婦で働いている場合は世帯年収1000万円超は比較的目指しやすくなっています。
実際に、総務省の公表した家計調査のデータにおいて、世帯年収1000万円超の世帯では共働き率が「65%以上」という結果となっています。
【図表4】を見ると、世帯年収が増加するとともに、共働き率が上がっていることがわかります。
近年、共働き世帯はますます増えており、厚生労働省が発表した調査では、共働き世帯の割合は、2019年で66.2%にのぼります。現代では世帯の過半数以上が共働きをしている状態です。
上記のことから、夫婦で協力し合って年収1000万円超を目指して、家計を豊かにする世帯が増えつつあることがうかがえます。
年収1000万円超の貯蓄額はいくら?
前章で、日本の12.6%の世帯が年収1000万円超であることがわかりましたが、そのような世帯はどのくらい資産を保有しているのでしょうか。
今回は、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」から、年収1000万円超の二人以上世帯の貯蓄事情をみていきましょう。
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」によると、世帯年収1000万円超の平均貯蓄額は【図表5】の結果となりました。
平均値は、すべてのデータ数を足してその個数で割った数値であるのに対して、中央値はデータを小さいものから順に並べたときのちょうど中央に位置する値です。
平均値は貯蓄額が極端に多い人がいるとその値に偏ることがあるため、実態に近い数値としては「中央値」を目安にすることをおすすめします。
世帯年収1000万円超の平均貯蓄額の中央値をみると、どちらも1000万円以上であることがわかります。
また、金融広報中央委員会の同調査における、世帯年収1000万円超の貯蓄割合は【図表6】の結果となりました。
最も割合として多いのが3000万円以上であり、年収1000万円超の世帯の半数以上は貯蓄1000万円を保有していることがわかります。
一方で、資産を保有していない「金融資産非保有」の割合が1割を超えていることから、一概に「年収1000万円超なら貯蓄も多い」というわけでもなさそうです。
年収1000万円超の世帯はどのような生活をしている?
では最後に、年収1000万円超の世帯がどのような生活をしているのかをみていきましょう。
総務省の家計調査によると、世帯年収1000〜1250万円の世帯人数の平均は3.40人となっており、子どもを持つ世帯が多いようにうかがえます。
持ち家率は85.5%で、全体の平均である80.2%より高い傾向にあります。
平均消費支出は42万2121円となっており、全体の平均が29万865円であることから、毎月13万円ほど多く使っていることがわかります。
夫婦で力を合わせることで世帯年収1000万円超は12.6%に
本記事では、年収データの割合から「年収1000万円超」に到達する難しさについて解説していきました。
「年収1000万円超の会社員」の場合は4.9%ですが、「世帯年収1000万円超」の場合は12.6%であり、約8世帯に1世帯は年収が1000万円超であることがわかります。
現代では、以前よりも共働きが主流となっているため、夫婦で働いている場合は世帯年収1000万円超は比較的実現がしやすくなっています。
調査データでは、貯蓄面・生活面ともに、平均よりも貯蓄が多かったり、生活にゆとりがあったりすることから、夫婦で協力し合って年収1000万円超を目指してみるのも良いでしょう。
参考資料
- 国税庁「令和3年分 民間給与実態調査」
- 厚生労働省「2022年 国民生活基礎調査の概況II 各種世帯の所得等の状況」
- 総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2022年平均結果-(二人以上の世帯)」
- 厚生労働省「令和2年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える」
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年以降)」
- 厚生労働省「令和5年度地域別最低賃金額改定の目安について」
太田 彩子