株式取引などと異なり、FX取引は24時間365日相場が動いています。ただし、時間帯によっては相場の動きに特徴もあります。さらに、曜日や月によっても、相場の動きに傾向があります。それぞれ注意すべきポイントや、どのようなタイミングで参加すべきかをまとめました。
目次
1 「為替市場」は24時間365日動いている
2 日本では月曜日の早朝から土曜日の早朝まで、いつでも取引ができる
3 日本にはない「サマータイム(夏時間)」に注意
4 日本のFX会社でも、月曜3時から取引可能なところも
5 毎日「ニューヨーククローズ」で区切る
6 「ニューヨーククローズ」はシステムメンテナンスの時間
7 スワップポイントは「ニューヨーククローズ」をまたぐたびに付与される
8 スワップポイントの付与は2営業日後
9 世界の3大市場は「東京」「ロンドン」「ニューヨーク」
10 それぞれの市場で重要なタイミングがある
11 参加者が多く流動性が高いロンドン時間を狙いたい
12 曜日によって相場の活況度合いが異なる
13 FX市場には月ごとにも動きに特徴がある
14 まとめ/流動性が高く、トレンドが発生しているときを狙う
1 「為替市場」は24時間365日動いている
「FX(エフエックス)」は、「Foreign eXchange(外国為替:がいこくかわせ)」の略です。為替について、新聞などでは「○日の東京為替市場で、円相場が反発した」などと書かれることがあります。「東京為替市場」はどこにあるのでしょうか。実は、為替市場は、東京証券取引所などのように、特定の場所はありません。
通貨の売買は銀行などの金融機関同士が電話などを通じて行います。テレビニュースなどで、テーブルを囲んで、マイクに向かって値段を叫んで取引している様子を見たことがあるかもしれません。テーブルの周りに座っているのは金融機関から指示を受けている為替の仲介業者(ブローカー)のディーラーです。
このように銀行などの金融機関が通貨を売買する市場を「インターバンク市場」と言います。インターバンク市場は、世界中で休みなく動いています。中東のイスラム教の国では土日は休日でないため、土日も市場は動いています。また、イスラム教の暦では1月1日は新年の始まりではありません。つまり、24時間、365日、世界のどこかでFX取引が行われています。
ただし、各地域で取引が活発になる時間があります。当然ながら各地域の朝から夕方までです。そこで、各地域で取引が活発な時間帯を「○○外国為替市場」と呼びます。1日で見ると、時差の順で、ニュージーランドの「ウェリントン外国為替市場」、オーストラリアの「シドニー外国為替市場」、以下、「東京」、「シンガポール」、「ドバイ」、「フランクフルト」、「ロンドン」、「ニューヨーク」などと続いていきます。
2 日本では月曜日の早朝から土曜日の早朝まで、いつでも取引ができる
FXのレートは誰が出しているのでしょうか。答えは、FX会社です。FXには株式市場のように取引所はありません。このため、取引は、FX業者と個人投資家との相対(あいたい)取引になります。相対取引とはその名のとおり、FX業者と投資家が直接取引をすることです。店頭取引とも言います。
FX業者はインターバンク市場の「カバー先」と呼ばれる金融機関と提携し、カバー先のレートを見ながら、自社の顧客にレートを提示します。インターバンク市場は土日も含め、24時間、常に世界のどこかの市場が開いています。
ただし、インターバンク市場でも、土日に取引をする金融機関は少数です。このため、日本のFX会社でも、土日は取引ができないところがほとんどです。一般的に、月曜日の早朝(午前6時~7時ぐらい)~土曜日の早朝(午前5時~6時ぐらい)までが取引できる時間となっています。ただし、これ以外に、毎日一定時間(数分~30分程度)、メンテナンス時間を設けているFX会社もあります。
3 日本にはない「サマータイム(夏時間)」に注意
FXの取引時間について、注意すべきポイントがあります。それは、海外では「サマータイム(夏時間)」があることです。「サマータイム(夏時間)」とは、日の出の時刻が早くなる時期に時計の針を進めて、明るい時間を有効に活用しようというもの。米国では「デイライト・セービング(Daylight Saving Time (DST))」 と呼ばれています。
サマータイムの実施時期や実施地域は国によって異なります。米国、カナダ、メキシコ(一部を除く)は、3月の第2日曜日~11月第1日曜日がサマータイムとなっています。欧州(一部を除く)では、3月最終日曜日~10月最終日曜日がサマータイムです。オーストラリア、ニュージーランドでもサマータイムがあります。ただし、南半球のため、日本の秋から冬にサマータイムになります。
サマータイムの期間中は、海外の市場が動き出すのが1時間早くなります。FX会社でも取引可能な時間が1時間早くなります。経済指標の発表の時間なども1時間早くなりますので注意が必要です。
4 日本のFX会社でも、月曜3時から取引可能なところも
日本のFX会社は、土日は取引ができません。月曜早朝から取引可能になります。多くのFX会社では、標準時間(冬時間)は月曜日の7時~、サマータイム(夏時間)は月曜日の6時~が取引時間です(いずれも日本時間、以下同)。
中には楽天証券のように、標準時間は7時10分~、サマータームは6時10分~というところもあります。
外資系のFX会社の中には、取引時間の開始が早いところもあります。英国のIGグループ系のIG証券は、標準時間は月曜日6時~、サマータイムは月曜日5時~が取引時間です。
さらに取引時間が早いところもあります。デンマークのサクソグループ系のサクソバンク証券は、標準時間は月曜日4時~、サマータイムは月曜日3時~が取引時間です。前述したように、為替市場は24時間動いています。ニュージーランドのウェリントンは南半球にあるので、日本の秋から冬の間が逆にサマータイムになります。サマータイムの日本との時差は4時間です。日本の3時にはウェリントンは7時です。
早朝から取引ができるということは、収益の機会も多いということになります。特に、金曜日に相場が大きく動いたときや土日に突発的なニュースが起きた場合などには絶好の機会になるでしょう。むろん、急な値動きに対するリスクヘッジにもなります。
5 毎日「ニューヨーククローズ」で区切る
為替市場では、24時間取引が行われています。保有するポジションはずっとそのままというわけではありません。実は毎日区切りがあります。多くのFX会社では、ニューヨーク市場が終わる米国東部時間17時(米国が標準時間のとき日本では7時、サマータイムのとき同6時)を1日の区切りの時間としています。
米国東部時間17時のことを「ニューヨーククローズ」と呼びます。ポジションを保有した場合、決済するまでは、この「ニューヨーククローズ」をまたいで、保有ポジションを翌日に自動的に繰り越します。これを「ロールオーバー」と言います。
たとえば月曜日に新規にポジションを建てた場合、決済またはロスカットなどが行われなければ、火曜日、水曜日と順にロールオーバーされていきます。一週間の区切りになるのは、土曜日の早朝の「ニューヨーククローズ」です。日本のFX会社では土日は取引が行われませんので、「ニューヨーククローズ」時点のレートで取引が止まり、月曜日の朝にまたロールオーバーされます。
ここで注意しなければならないのは、日本のFX会社では土曜日の早朝から月曜日の早朝まで取引はできませんが、為替市場はその間も動いていることです。土日に予想とは逆の方向にレートが大きく動いた場合、月曜日の早朝にロールオーバーしたとたんにいきなりロスカットになるといったこともあります。週末をはさんでポジションを持ち越すときは注意が必要です。
6 「ニューヨーククローズ」はシステムメンテナンスの時間
日本の多くのFX会社では、「ニューヨーククローズ」でロールオーバーを行うため、その前後をシステムメンテナンスの時間としているところがほとんどです。たとえば外為どっとコムでは、火曜日~金曜日の毎日6時55分~7時10分がシステムメンテナンスの時間です。土曜日は6時55分~8時30分がシステムメンテナンスの時間です(いずれも米国標準時間の場合)。システムメンテナンスの間は取引ができません。また取引ツールにログインできない場合もあります。
7 スワップポイントは「ニューヨーククローズ」をまたぐたびに付与される
FX取引では、通貨の間の金利差により、スワップポイントと呼ばれる金利差調整額を受け取ったり、支払ったりします。高金利の通貨を買って低金利の通貨を売ると、スワップポイントを受け取る事ができ、逆に高金利の通貨を売って低金利の通貨を買うとスワップポイントを支払うことになります。
ほとんどのFX会社では、ポジションを保有したままニューヨーククローズをまたぐ(ロールオーバーする)タイミングでスワップポイントが付与されます。 ただし、FX会社によって、ロールオーバーとスワップポイントの付与の仕方は以下のような違いがあります。確定申告にも影響します。
(1)ポジション損益もスワップポイントも決済しなければ確定しないFX会社
(2)ポジション損益は決済しないと確定しないが、スワップポイントは毎日確定するFX会社
(3)ポジション損益もスワップポイントも毎日確定するFX会社
(3)の場合、未決済ポジションは、ロールオーバー時に値洗いされてそのときのレートで再度新規建を行います。このため、毎日損益が計上されます。これにより投資家が自分自身でポジションの決済を行っていない場合も、確定申告が必要です。
(2)のFX会社の場合、スワップポイントだけが毎日口座に振り込まれてきます。出金もできます。(1)のFX会社の場合、損益やスワップポイントは損益報告書(年間取引報告書などと呼ばれることもあります)に記載されません。このため、決済していないポジションの評価損益やスワップポイントは課税対象になりません。
8 スワップポイントの付与は2営業日後
インターバンクのFX取引では、取引が成立すると、2営業日後に資金の受渡しが行われます。資金の受渡しが行われる日のことを「受渡日」(バリューデート)と呼びます。
たとえば、月曜日にポジションを保有した場合、2営業日後の水曜日が受渡日になります。月曜から火曜へポジションを持ち越した場合は受渡日が水曜から木曜に1日分繰り延べられるので、1日分のスワップポイントが受け取れます。水曜から木曜へポジションを持ち越した場合には、受渡日が金曜から月曜と土日をはさんで3日分繰り延べられるので、3日分のスワップポイントが受け取れます。
9 世界の3大市場は「東京」「ロンドン」「ニューヨーク」
為替市場は24時間365日動いています。ただし、相場が活況な時間帯とそうでない時間帯があります。活況な時間帯とはもちろん、市場に参加する人が多い時間帯です。
3大市場と呼ばれるのが、「東京外国為替市場」「ロンドン外国為替市場」「ニューヨーク外国為替市場」です。と言っても、前述したように、それぞれ取引所のようなものがあるわけではなく、東京、ロンドン、ニューヨークの金融機関などが活発に取引を行う時間帯といった意味合いで、どの市場も午前9時~午後5時ぐらいまでの間です。
ただし、ロンドンではロンドン証券取引所の取引時間が8時~16時30分なので、ロンドン市場は8時から活況になります。米国標準時間の場合、日本とロンドンの時差は9時間、ニューヨークとの時差は14時間です。ロンドンの8時は日本の17時、ニューヨークの9時は日本の23時です。サマータイムのときは1時間早くなります。
10 それぞれの市場で重要なタイミングがある
為替の3大市場は「東京外国為替市場」「ロンドン外国為替市場」「ニューヨーク外国為替市場」ですが、それぞれの市場で重要なタイミングがあります。
東京外国為替市場
- 9時55分…仲値
「仲値(なかね)」とは、金融機関が外国為替取引をする際の基準となるレートのことです。TTM(Telegraphic Transfer Middle Rate)とも言います。金融機関がその日に適用するレートになるため、レートを上げたい金融機関とレートを下げたい金融機関が大きな資金を投入し、相場が活況になります。
特に、五十日(ごとおび)と呼ばれる、5、10、15、20、25、30日と月末は、締め日などの決済が集中するため、実需として外貨の売買が増えます。仲値での駆け引きも活発になります。
- 15時…東京オプションカット
「オプションカット」とは、通貨オプションの権利行使のための締め切り時間(カットオフタイム)のことを言います。通貨オプション取引とは、通貨を将来の決められた期日までに特定の価格(権利行使価格)で買う権利、または売る権利を売買する取引です。締切時間の直前は、オプションオーダーが集まるレートに収束するため、取引が活発になります。
ロンドン外国為替市場
- 16時(日本時間1時:標準時間/日本時間0時:サマータイム)…ロンドンフィックス
「ロンドンフィックス」は、ロンドンにおける仲値のような時間です。この時間のレートがその日に適用されるレートになるため、値動きが激しくなります。
ニューヨーク外国為替市場
- 8時30分(日本時間22時30分:標準時間/日本時間21時30分:サマータイム)…米国指標発表
米国では重要な指標の多くが8時30分に発表されます。毎月第1金曜日に発表される雇用統計などは非常に注目される指標であり、その結果次第で相場が大きく動きます。
- 10時00分(日本時間24時00分:標準時間/日本時間23時00分:サマータイム)…ニューヨークオプションカット
ニューヨーク市場の通貨オプション取引の権利を行使する最終的な締め切り時刻(カットオフタイム)です。売買が活発になります。
11 参加者が多く流動性が高いロンドン時間を狙いたい
「東京外国為替市場」「ロンドン外国為替市場」「ニューヨーク外国為替市場」、それぞれに売買が活況になる時間とそうでない時間があります。
ではどの時間帯でトレードをすべきでしょうか。おすすめはロンドン時間です。ロンドン外国為替市場は世界で最大の市場で、取引高のシェアは世界の35%を占めると言われています。まさに世界の金融センターです。
ニューヨーク外国為替市場はロンドンに次いで約20%のシェアです。東京外国為替市場のシェアは6~8%程度にすぎません。そういう点では、東京時間は取引参加者も少なく、「相場があまり動かない時間」です。香港やシンガポールの市場と合わせた「アジア時間」全体として見ても、大きなトレンドになるよりは、レンジでもみ合うことが少なくありません。
一方で、アジア時間は流動性が低いため、要人の発言などで急に相場が一方向に動くことがあり注意が必要です。ロンドン時間に入ると、多くの投資家が参加することから方向感も出て、判断もしやすくなります。また、アジア時間で動かなかった相場が急に動き出したり、アジア時間でじりじりと一方向に動いていたものが一気に反転したりします。
ニューヨーク時間に入ると、相場を動かす材料が一気に多くなります。米国の指標の発表のほか、要人の発言、さらに米国株式市場の動向などに神経質に反応して相場が乱高下することも珍しくありません。ボラティリティはあるものの方向感の見極めが難しいところです。
こういった点から、FX取引初心者のうちは、ロンドン証券取引所の寄り付きの8時からロンドンフィックスの16時ぐらいまでの間で取引するほうが判断しやすいでしょう。参加者が多く流動性が高いほうが、方向感が出やすいからです。
12 曜日によって相場の活況度合いが異なる
FX市場では、一日の時間帯だけでなく、曜日によっても相場の活況度合いが異なります。背景にはFXトレードの場合、短期取引をする人が多いことが挙げられます。特に大きな金額を動かす金融機関などのプロのトレーダーは、リスクを抑えるために週末にポジションを閉じてしまいます。
このような背景があるため、月曜日は様子見になりやすくなります。特に東京時間の月曜日は、ロンドン勢もニューヨーク勢も日曜日の深夜で休んでいます。参加者も少なく流動性も低くなりがちです。
ただし、週末に大きなニュースがあり、レートが窓をあけて始まるようなことになると、月曜の朝から活発に動くこともあります。
火曜日~木曜日は、徐々に資金も流入してきて動きが活発になります。特に、重要な経済指標が発表されるようなときには、大きなトレンドになることがあります。
金曜日は参加者も多くボラティリティも高いものの、乱高下しやすいだけに注意が必要です。木曜日までに大きく儲けているトレーダーは、リスクを冒して大きな投資をする必要がありません。一方で、木曜日までに損をしているトレーダーは、金曜日に取り戻して終わりたいと狙っています。価格が上昇したと思ったら利益確定の売りが一気に出たり、要人の発言などをきっかけに急に動き出したりします。なかなか難しいところです。
13 FX市場には月ごとにも動きに特徴がある
時間帯、曜日の違いだけでなく、FX市場には月ごとに見ても動きに特徴があります。
1月
欧米勢にとっての新年。年末に手仕舞いしたポジションが再び建てられる。1月が円高だと1年を通して円高と、1月の相場が1年の相場の推移となりやすい。
2月
3月決算の企業がドル売り傾向に。米国債利払い月。
3月
日本企業決算月。1年の中でもっとも活発に。
4月
日本企業の新年度。輸出企業の実需でドルが買われる。
5月
ファンド中間決算月。米国債利払い。
6月
欧米勢中間決算。国内はボーナスシーズン。
7月
夏休みで参加者減少。
8月
米国債利払い。夏休み。
9月
日本企業決算月。欧米勢の下期のスタート。
10月
大きな材料がなく。乱高下しやすい。
11月
ファンド決算月。米国債利払い。
12月
海外企業の円売り。ボーナスシーズン。クリスマス。
このように季節性で円高・円安になる場合があるので注意しましょう。さらに、12月のクリスマスなど相場の参加者が極端に少なくなる時期には無理をしないことが大切です。
14 まとめ/流動性が高く、トレンドが発生しているときを狙う
ここまで、FXの取引時間や流動性、ボラティリティなどについて説明してきました。FXで勝つためのセオリーの一つは「大きなトレンドに付いていく」ことです。逆に流動性が低く、狭い値幅でもみ合っているときに飛び込んでも失敗になりがちです。
1日、1週間、1年の間の特徴を理解した上で、流動性が高く、トレンドが発生しているとき、さらに自分が得意な流れのときに参戦するようにするといいでしょう。
上山 光一