2023年7月28日に開催された「第6回社会保障審議会年金部会」では、2025年に予定される公的年金制度の改正において遺族厚生年金制度を見直すことを検討しました。

検討項目の1つが、支給対象者に関する「夫だけ55歳以上ルール」です。

この記事では、「夫だけ55歳以上ルール」の見直しについて解説します。

共働きの夫婦が増える中、年金制度における男女格差が是正されるか注目されます。

1. 遺族厚生年金の男女格差

まず最初に、年金制度の概要と「夫だけ55歳以上ルール」について確認しましょう。

1.1遺族年金の概要

遺族年金には、遺族基礎年金と遺族厚生年金があります。

遺族基礎年金は、高校卒業までの子どもがいる場合などに支給されます。

また、所定の条件を満たせば、遺族厚生年金も支給されます。

子どもが独立した後、遺族である配偶者に支給されるのは遺族厚生年金だけです。

ただし、遺族厚生年金が支給されるのは、死亡した人や配偶者が一定要件を満たす場合に限られます。

死亡した人の要件は、「厚生年金加入中の死亡」、「保険料納付要件を満たした人が死亡」、などです。

遺族基礎年金や遺族厚生年金の死亡者の要件に男女格差はありませんが、遺族厚生年金の受給者については男女間で要件が異なります。

1.2 夫は55歳以上でないと遺族厚生年金が受けられない

遺族厚生年金が受給できるのは、死亡した人によって生計を維持されていた配偶者や子ども、父母、孫、祖父母のうち優先順位の高い人です。

優先順位が最も高いのは配偶者です。

ただし、妻については年齢条件がないのに対し、夫については「配偶者の死亡当時55歳以上」という要件を満たさないと遺族厚生年金の受給権は発生しません。

これが、遺族厚生年金の「夫だけ55歳以上ルール」と呼ばれるものです。

さらに、55歳の夫に受給権が発生しても実際に遺族厚生年金を受け取れるのは60歳になってからです。

夫の老齢厚生年金額が多く65歳以降の遺族厚生年金が全額支給停止になれば、受給期間は60歳から65歳までの5年間しかありません。