2. 厚生年金保険の加入条件とは
そもそも、厚生年金保険に加入できるのはどのような人なのでしょうか。
加入できるのは、常時従業員を使用する会社に勤務している70歳未満の方で、次の資格要件を満たす方です。
- 就業規則や労働契約などに定められた一般社員の1週間の所定労働時間および1月の所定労働日数の4分の3以上ある従業員
- 一般社員の1週間の所定労働時間および1月の所定労働日数が4分の3未満であっても、短時間労働者の資格取得要件をすべて満たす方
2016年10月から、短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大が実施されました。
このため、正社員、契約社員のみならず、短時間で働くパートタイマーやアルバイトの方なども、資格要件を満たせば被保険者になります。
厚生年金に加入すると必然的に保険料の支払いが発生するため、手取り額が減少してしまうことに。
そのため、配偶者の扶養内に納められるよう、勤務時間を調整しながら働く方もたくさんいます。
ただし、近年ではこうした「年収の壁」を是正する動きもあるため、厚生年金加入者は増える可能性があります。
手取りが減るというデメリットはあるものの、将来の年金額が増えることや、健康保険に加入することで保障が拡大する点はメリットといえるでしょう。
3. 厚生年金はいくらもらえる?受給額の計算方法
では、決して少なくない「厚生年金保険料」を納めた結果、将来の老齢厚生年金はいくらもらえるのでしょうか。
老齢厚生年金は「報酬比例年金額」と「経過的加算」と「加給年金額」の合計で決まります。
このうち、「経過的加算」とは20歳前もしくは60歳以降に加入した厚生年金保険について、定額分の厚生年金に加算される金額をいいます。
また「加給年金額」とは、65歳未満の配偶者や18歳未満の子どもなどのうち、一定の要件を満たす家族がいる場合に加算される金額です。
こちらは個人の状況によって異なるため、ここでは「報酬比例年金額」の計算式を確認しましょう。
3.1 報酬比例年金額の計算式
報酬比例年金額の計算式は次のとおりです。
- 2003年3月以前:平均標準報酬月額×7.5/1000×2003年3月以前の加入月数
- 2003年4月以後:平均標準報酬額×5.769/1000×2003年4月以後の加入月数
2003年4月以後は、賞与も含めた平均標準報酬額を用いて計算するようになりました。
両期間にまたがる場合は、それぞれで計算した合計額となります。
例えば2003年4月以後に30年間「標準報酬額40万円」で加入し続けた場合、
40万円×5.769/1000×360ヶ月=約83万円
と計算できるため、将来の老齢厚生年金は83万円が目安となります。
もし老齢基礎年金を満額受給できる場合、年額の合計は約162万5000円となるでしょう(2023年度の場合)。
4. 厚生年金の受給額目安(年収ごとの早見表つき)
ここまでの内容から、将来の厚生年金の金額は、現役時代の年収や加入期間が大きく影響することがわかりました。
この章では、年収ごとの年金額の目安を早見表で確認しましょう。
ただし年収と標準報酬額は異なるため、必ずしも一致するわけではありません。あくまでも目安としてご確認ください。
4.1 早見表(年収ごとの年金額の目安)
2003年4月以後に厚生年金保険に加入したとして、年収ごとの年金額の目安を早見表にまとめました。
※昭和21年4月1日以前に生まれた方については、給付乗率が異なります。
※あくまでも概算のため、実際の受給額とは異なるケースがあります。
※2023年度新規裁定者の満額の老齢基礎年金を含みます。
年収だけでなく、加入期間も重要になることがわかります。
年収が低い人だけでなく、会社員としての期間が短い人(途中で独立したケースなど)は、年金額が少なくなる可能性もあるでしょう。
では、実際に今のシニアはどれくらいの厚生年金を受給しているのでしょうか。
次章では国民年金の金額と合わせて年金額の平均を確認しましょう。
5. 厚生年金と国民年金の受給額平均
現在の60歳以上が受給する「厚生年金と国民年金」の金額について、厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から確認してみます。
なお、厚生年金の金額には国民年金の金額も含まれています。