業績への慎重な見通しと減配が一段安要因か

2023年の4月末~5月初にかけて両社の年度決算が発表されました。

2022年度(もしくは2023年3月期。以下2022年度に表記を統一)の決算は堅調でしたが、これはこれまでの四半期決算から織り込まれていたので材料視されず、むしろ2023年度の慎重な見通しと減配予想が株価の下落材料になったと考えられます。

両社に共通して言えるのは、大手海運の共同出資で運営されているONE社の業績悪化の影響を受けていることです。

両社ともONE社は持分適用会社にあたりますが、たとえば日本郵船ではONEの業績が反映される定期船セグメントの通期経常損益は前期比▲7223億円のマイナス寄与となる予想となっています。

一定の市況改善により黒字は確保できるものの、前期比では大幅な減益要因となる見込みです。

これも一因として両社とも配当予想を大幅に引き下げており、日本郵船が120円(2022年度は520円)、商船三井は180円(同560円)となっています。

こうした業績見通しや減配方針が5-6月にかけては株価の重しとなったと考えられます。

いくつかの市況改善が株価反発の手掛かりか

6月以降、両社の株価は上向き始めていますが、いくつかの指標の下げ止まりや改善が作用していると考えられます。一つは円安で、【図表2】をみると特に6月に入ってからの円安進行が株価上昇の一因になったと思われます。

【図表2】ドル円為替と両社の株価推移:2023年4月28日~2023年7月31日

出所:各種資料をもとに筆者作成

また海運市況では、【図表3】によればコンテナ船運賃が下げ止まりを見せています。

【図表3】

出所:各種資料をもとに筆者作成

以上の市況改善や下げ止まりが、両社の株価の回復の一因となっていると思われます。

両社に考えられる主な株価リスクとは

日本郵船Webサイトの「リスク情報」や商船三井Webサイトの「リスク管理」を参考にすると、次のような要因が株価に対する重要なリスク要因となりそうです。

  • 市況変動リスク
  • 重要な事故・情勢悪化等による影響
  • 自然災害や伝染病などのリスク

特に為替や資源価格、船賃の変動リスクは、年初来の株価の変動要因の一つにもなっているように、株価に短時間のうちに反映されやすい要素です。市況動向は資源価格や為替であれば日々確認できるため、株価への反映も早いでしょう。

また、事故に伴う荷物や船自体への破損・汚損なども業績に影響を与える可能性があります。関連して特定地域の情勢悪化により航路が制限されたり、物流量が減少したりすることで業績悪化をもたらす可能性もあります。

近年のコロナ禍にもあるように伝染病や自然災害による影響もリスク要因となります。

特定地域に立ち入れない、災害により港が使用できないなど直接的な影響が出うるほか、特定の地域向けもしくは特定の物品の荷捌き増減が業績に変化をもたらす可能性もあります。