飲み過ぎがつらい忘年会シーズンが近づいてきた

少し気の早い話になりますが、そろそろ忘年会のシーズンです。実際、予約を取り始めた店も少なくないようですから、幹事役の方は早めに行動を起こした方がいいかもしれません。

さて、忘年会に限ったことではありませんが、飲み会が休みなく続いたり、激しく飲んで二日酔いになったりした時、翌朝は大変つらい思いを経験した人も多いでしょう。これは、アルコール飲料(エタノール)を自身の代謝以上に摂取したために起きる現象で、胃や内臓、とりわけ、肝臓に大きな負担がかかっていることを意味します。

シジミの味噌汁は二日酔いに最も効く飲食物の1つ

こうした飲み過ぎで苦しむ人向けに、コンビニや薬局では様々なドリンク剤が販売されています。特に、休みたくても仕事を休めない社会人の方々は、藁にも縋る気持ちで購入したことがあるのではないでしょうか。

ところで、こうした市販のドリンク剤以外でも、二日酔いに効く飲食物は数多くあります。その効果がよく知られているものの1つがシジミであり、シジミの味噌汁が最適という報告もあります。

シジミが多く有するオルニチンが肝臓によく効く

シジミは淡水域や汽水域に生息する小型の二枚貝です。シジミはオルニチンというアミノ酸を多く含みますが、このオルニチンは、人の肝臓においてアンモニアの代謝を助長して解毒作用を促進する効果があります。俗にいう“オルニチン効果”です。

このオルニチン効果に着目したサプリメントも次々に登場しており、“1粒でシジミ〇〇個分のオルニチン”といった類の宣伝コピーが浸透しています。

こうしたサプリメントも十分有効と思われますが、おすすめはシジミの味噌汁でしょう。これは、味噌に含まれるレシチンと言う物質にアルコールが脂肪として蓄積されるのを防ぐ働きがあるほか、クルクミン(ウコンなどに含まれるポリフェノールの一種)の吸収率を高める作用もあるためです。したがって、シジミの味噌汁を飲めば、二日酔いの影響を軽減することが期待できるというわけです。

国内の内水面漁業(川や湖での漁業)はピーク時の2割に激減

さて、そのシジミですが、国内での漁獲量が激減しています。

昨今、魚が獲れなくなったというニュースをよく聞きます。確かに、今年もサンマやシャケ(秋鮭)などが記録的な不漁となっているようであり、ブリ漁なども不振に陥っていると報道されています。

実は、こうした海で獲る漁(水産用語では「海面漁業」と呼びます)だけでなく、国内の湖や川での漁(「内水面漁業」と呼びます)も大幅減少を強いられているのです。

2016年の海面漁業の漁獲高はピーク時(1984年)に比べて▲72%減、一方の内水面漁業はピーク時(1978年)比で▲80%減です。海面漁業とは異なり、内水面漁業には中国や台湾などによる乱獲の影響はありません。やはり、国内においても貴重な水産資源が枯渇に向かっていると考えざるを得ないのでしょうか。

シジミの漁獲量は46年間でピーク時から▲83%減

その内水面漁業に含まれるシジミも例外ではありません。2016年のシジミ漁獲量は9,583トンでしたが、これはピークだった1970年(56,144トン)の17%水準に過ぎません。つまり、この46年間で▲83%減に落ちこんでいます。

そう言われてみると、子供だった頃に比べてシジミ汁を飲む機会が少なくなったと感じる人も多いのではないでしょうか。このままでは、将来国内産のシジミ汁を飲めなくなるという危機を感じずにはいられません。

近年、漁業関係者の努力で最悪期を脱しつつあるシジミ漁

ただ、漁業関係者の長年にわたる地道な努力により、シジミ漁は大底を脱した可能性があります。具体的には、稚貝を一定の大きさになるまで管理して放流する、植物プランクトン増加やアオコ発生抑制など生育環境の整備、休漁日の増加などによる資源確保です。

シジミの産地として有名な宍道湖(島根県)では、こうした取り組みを早くから行った結果、いまだピーク時にほど遠いとはいえ、漁獲量回復を成し遂げました。そして、こうした取り組み効果は、全国の数字にも表れてきています。

直近10年間を見ると、年によってバラツキはありますが、シジミ漁獲量は概ね10,000トン前後で安定しています。少なくとも、減少トレンドに歯止めがかかった印象があります。一方で、シジミ以外の内水面漁業はこの10年間で約▲35%減という不漁に陥ったままです。

宍道湖は夕日の美しさでも知られる

将来に食文化を残すためにも資源確保は待ったなし

シジミ汁は、二日酔いに効くことが注目されたのは最近ですが、古く江戸時代から庶民の食卓に並んできた料理です。日本の代表的な食文化の1つでもあります。将来、シジミ汁が普通に飲めるように、資源確保に努める必要性を再認識すべきでしょう。

LIMO編集部