絶好調な日本の株式市場-2017年10月の衆議院議員選挙の結果も踏まえ、株式市場は大きな変調もなく堅調に上昇を続けている。外国人投資家も日本株に改めて注目しつつある中、今後私たちは資産形成の中で日本株をどのように見ていけばよいのだろうか。今回は日本の中小型株ファンドで良好な運用実績のあるアセットマネジメントOne株式会社の株式運用グループで国内株式戦略運用チームの岩谷渉平氏に話を伺った。

中小型株ファンドはアクティブファンドの代表例

一口に投資信託といっても大きく2つある。ひとつはポートフォリオマネージャーが銘柄を発掘し投資先を選定し運用するアクティブファンド。もう一つは、株価指数などの動きに連動する動きを追い求めるインデックスファンドだ。

岩谷氏が運用するのはその中でも成長期待の大きなベンチャー企業などを中心とし、上場企業の中でも時価総額が比較的小さな中小型株を中心に組み込むアクティブファンドだ。中小型株ファンドは、株価の値動きの大きな銘柄も多い。時価総額の大きな銘柄を組み込む大型株ファンドもあるが、岩谷氏が運用するファンドはアクティブファンド中のアクティブファンドといえる。

一般的には、アクティブファンドはインデックスファンドに対して割高な信託報酬を支払っても株価指数などを上回るパフォーマンス(アルファとも呼ばれる)を求める金融商品だ。

信託報酬とは運用会社、販売会社、信託銀行といった投資信託を提供する関係者が投資家から得るフィーのことである。仮にポートフォリオマネージャーが株式市場よりも高いリターンを実現し投資家に還元できるのであれば、それらに対するフィーは正当化できるという考え方がある。

アクティブファンド vs. インデックスファンド

ただ、アクティブファンドにも投資家が期待するパフォーマンスを出せない商品がある。もっと言うと、運用するにあたってパフォーマンスが上回るべきベンチマークを超えていないファンドも実際には存在する。

そのような中、投資家にも「市場並みのパフォーマンスでも良いから信託報酬が安い投資信託」を求める傾向が強くなってきている。インデックスファンドはそうした投資家の需要を背景に拡大しているのだ。

たとえば、株価指数が長期的に上昇するトレンドにあるグローバル株式のインデックスファンドを長期で保有すれば資産形成ができるという考え方もその中の一つだ。

株式投資で大きな運用成績を出す秘訣

株式市場並みの運用パフォーマンスでもよいという割り切りもできる一方、日本株式の投資信託でリターンを追求し、その果実を得ているファンドがあるのも事実だ。

たとえば岩谷氏が担当してきた「DIAM新興市場日本株ファンド」の2007年11月29日から2017年5月31日の約10年程度の運用パフォーマンスは驚異的だ。2007年11月29日を10,000とすると、2017年5月31日には96,992と、約10倍になっている。TOPIXの配当込みのパフォーマンスは、同じ基準で見ると12,596である。

その岩谷氏を中心とした運用チームが2017年9月から「厳選ジャパン」を新たに設定し、運用を始めた。運用チームリーダーである岩谷氏は言う。

「たとえば、東証1部上場企業の過去10年の騰落率を見ると、株価が倍以上になっている銘柄は全体の約30%程度存在します。運用パフォーマンスを上げるためには、調査によってそうした銘柄にたどり着く確率を上げて行けばよいわけです」

投資家にとって10年は長い。ただ、時間を味方につけることでこうしたパフォーマンスを体験することができるともいえる。

一部の投資家の嗜好がインデックスファンドに向かっていることは認識しつつも、岩谷氏は続ける。

「株式投資の面白みをアクティブ運用する投資信託を通じて知って欲しいですね」

アセットマネジメントOne株式会社 岩谷渉平氏

人間が運用で機械に勝てる領域とは

では、人間が運用するアクティブ運用の魅力はどこにあるのだろう。

岩谷氏の見方はこうだ。

「機械は膨大な過去データを正確に分析することができます。ただ、企業の変化は非連続であることもあり、過去を分析したからといって未来を正確に見出せるわけではありません。また、企業の変化は財務データだけから見えてくるものではなく、定性的な変化も見逃せません」

そうしたアプローチで今回設定した「厳選ジャパン」では20銘柄程度に絞って運用をしていくそうだ。

ファンドマネージャーからすればポートフォリオに含まれる銘柄はできるだけ分散し保有しておきたいところだが、そこを20銘柄程度と絞り込んでいるのが印象的だ。

凄腕ファンドマネージャーの頭の中

では、岩谷氏の「銘柄にたどり着くまでのアプローチ」とはどのようなものなのか。

「『DIAM新興市場日本株ファンド』で大事にしていたのは、投資先企業がいわゆる社会課題の解決に寄与するかどうかという視点です」と岩谷氏は言う。

社会課題の解決に取り組む企業は産業構造を変えるきっかけともなりえるし、またそのトレンドの中で中心的役割を担うことも多い。結果、事業として成功し業績の拡大も期待できるというロジックだ。

投資家と対話し資産形成を身近に

これまで、いわゆる“顔の見える運用”では独立系運用会社が注目されることが多かったのではないだろうか。

日本を代表する大手運用会社であるアセットマネジメントOneでも今後は「厳選ジャパン」において岩谷氏を中心に運用に関係するファンドマネージャーらがコミュニケーションを図っていくという。

今後も運用実績とともにどのような情報発信とコミュニケーションを「厳選ジャパン」チームがしてくれるかに運用業界の注目が集まりそうだ。

LIMO編集部