50歳代でも焦る必要ないのが新NISA

現行のつみたてNISAでは、年間の投資枠の最大40万円を最長20年積み立てて、2000万円の資金を作るには、年率が8.5%必要です。

年率8.5%で20年間運用するというのは、現実的ではないでしょう。そのため、老後資金2000万円作るためにはiDeCoなどを併用する必要がありました。

しかし、iDeCoは原則20歳から60歳未満が対象となっており、掛金の限度額もあるため、始めるのが遅い場合は十分な資金を作ることが難しくなります。

新NISAは年間の投資枠の最大が360万円(成長投資枠240万円+つみたて投資枠120万円)なので、最短5年で非課税保有限度額の1800万円に達することができます。

年率2%の運用でも積立から6年で2000万円を超えます。そのため、遅く始めても新NISAだけで、2000万円の資金を作ることが可能です。

ただ、年間360万円投資できる人は限られてくるので、50歳なら月10万円を15年間、55歳なら月15万円を10年間積み立てるのが2000万円を達成するための無理のない範囲だと思います。それでも厳しい場合は、期間を長くすれば、積立金額は抑えることができます。

運用を続けながら資産を取り崩すと資産寿命が延びる

新NISAには期限がないので、運用を続けながら、少しずつ取り崩して老後の生活費に充てることができます。

たとえば、老後資金の2000万円を65歳から毎月10万円ずつ取り崩していった場合、何も運用をしなければ、81歳7ヵ月で資金が尽きてしまいます。

ただし、【図表4】をみて分かる通り新NISAで年率3%の運用を続けながら取り崩していった場合は、88歳1ヵ月まで資産の寿命が延びます。

【図表4】老後資金2000万円を取り崩した場合の資産寿命

出所:SMBC日興証券「金融電卓」を使用しての試算結果をもとに筆者作成

公的年金だけでは生活費が足りない場合、iDeCoや個人年金保険などで補う方法もありますが、その場合、これらの年金は雑所得となるため、所得税がかかります。

また、所得に応じて社会保険料が計算されるため、年金が増えると保険料も上がります。

NISAで作った資産を取り崩す場合は、所得にはならないため税金はかからず、社会保険料が上がることもありません。

NISAは運用益が非課税になるだけでなく、このようなメリットもあることを知っておくと、老後の生活設計に役立つでしょう。

これから夏の長期休暇をとられる方も多いと思いますが、今回の記事を参考に、2024年からの新NISAに向けた運用を考えてみてください。

参考資料

石倉 博子