3. 「厚生年金」から天引きされるもの4つ

いまのシニア世代の厚生年金の平均月額を見てきました。個人差が大きい厚生年金は、”自分は”どれくらい受給できるのかを「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認することができます。

ただし、現役世代の方が確認できる年金額は、あくまでも現時点の加入記録に基づく「予測」の範囲内となります。年金受給開始直前と受給開始後の毎年1月・6月に郵送される「年金振込通知書」で1回に支払われる「年金支払額」の確認が可能です。

出所:日本年金機構「年金振込通知書」

年金振込通知書には「額面」や「天引き項目」、「実際の年金額」が記載されています。ここで正確な「手取り額」を知ることができるのです。

厚生年金から、どのようなものが天引きされているのでしょうか。確認していきましょう。

3.1 厚生年金から天引きされるもの【その1】:介護保険料額

40歳から支払いが始まる「介護保険料」は、年金からも天引きされます。介護保険料は、一生涯支払い続ける必要があります。
保険料は所得と住んでいる地域によって異なるため、自治体のホームページなどで確認しておきましょう。

3.2 厚生年金から天引きされるもの【その2】:国民健康保険料・後期高齢者医療保険料

介護保険料と同様に、国民健康保険料や75歳以上になると後期高齢者医療保険料が年金から天引きされます。
こちらも所得と住んでいる地域によって保険料がことなるため、自治体のホームページなどで確認しておきましょう。

3.3 厚生年金から天引きされるもの【その3】:所得税額および復興特別所得税額

社会保険料と各種控除額(公的年金等控除、基礎控除など)を差し引いた後の額に、約5%の税率を乗じたものが所得税として天引きされます。

3.4 厚生年金から天引きされるもの【その4】:個人住民税

個人住民税も天引きされます。所得税と同様に、社会保険料と各種控除額(公的年金等控除、基礎控除など)を差し引いた後の額に対して住民税が課税されます。

4. 「厚生年金」月額15万円の手取額は?

公的年金から天引きされるものについて確認してきました。年金から天引きされること自体、意外だったという方もいるかもしれません。

年金にも「額面」と「手取り額」があることを理解しておけば、老後に慌てることはなくなるでしょう。

ご参考までに、厚生年金の男女全体の平均受給額が「14万3965円」でしたので、約15万円として「月額15万円の手取り額はいくらになるのか」を確認しておきます。

想定:月額15万円=年額180万円、社会保険料は16万円

◯所得税:180万円ー公的年金等控除110万円ー基礎控除48万円ー社会保険料控除16万円=6万円
   6万円✕5%=3000円

◯住民税:180万円ー公的年金等控除110万円ー基礎控除43万円ー社会保険料控除16万円=11万
 6万円✕10%(6%+4%)=6000円(所得割)
 6000円+5000円(均等割)=1万1000円

年額180万円の厚生年金に対してかかる税金は年額で1万4000円、社会保険料は16万円なので合計で年17万4000円、「月額1万4500円」が天引きされることになります。月額15万円から1万4500円が天引きされると手取り額は13万5500円です。

「月額15万円の厚生年金の手取り額は約13万5000円」

その他の控除があるなど個々で事情は異なりますので、ご参考程度に見ておきましょう。15万円もらえると思っていた年金が、いざ1万4500円も減ってしまうと老後のマネープランが狂ってしまう方もいるのではないでしょうか。

ひと月あたり約1万5000円なら、年間で18万円もの誤差が生じてしまいます。昨今の物価上昇で多くの世帯が貯蓄の必要性を感じたかもしれません。老後を迎える時には、インフレや不足の事態にも対応できるよう、ゆとりをもった備えが必要でしょう。

5. 年金だけに頼らない資産形成を。

本記事では、いまのシニア世代の厚生年金受給額と、年金から天引きされるものについて確認してきました。

平均受給額は男女全体で約14万4000円、女性においては約10万5000円でした。決して十分といえる金額ではないでしょう。

いまのシニア世代がそうであるように、老後生活が始まってから再び物価上昇の波が訪れることも考えられます。

さまざまなケースを想定して、老後に慌てることのないよう備えておきたいですね。

資産形成は、早めに始めることがポイントです。時間をかけることで、無理のない金額でゆっくり資産を積み上げていくことができます。

本記事をきっかけに、ぜひ「老後への備え」の第一歩を踏み出してみてください。

参考資料

和田 直子