3. 在職老齢年金制度による支給停止に注意

60歳以降に仕事をしながら厚生年金を受け取る(「在職老齢年金」といいます)場合、給与と年金額に応じて年金額の一部または全部が支給停止になる場合があります。

賃金と年金額の合計額が48万円を超える場合、48万円を超えた金額の半分が年金額より支給停止されるのです(ただし、老齢基礎年金は全額支給されます)。

なお、平成19年4月以降に70歳になった方が70歳以降も仕事をする場合は、厚生年金保険の被保険者には該当しませんが、在職による支給停止の対象になります。

在職老齢年金の支給停止においては、「基本月額」と「総報酬月額相当額」のふたつを理解しておくことが大切です。

  • 基本月額:年金月額(加給年金額を除く)
  • 総報酬月額相当額:(その月の標準報酬月額)+{(その月以前1年間の賞与額の合計)÷12ヵ月}

基本月額とは、加給年金額を除く年金月額のことをいい、総報酬月額相当額とは、その月の標準報酬月額にその月以前1年間の賞与の合計額を12ヵ月で除した金額を足した金額のことをいいます。

実際に、全額支給されるのか支給停止を受けるのかは、次のチャート図に従って判断することになります。

出所:日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」

年金が支給停止されないためには、基本月額と総報酬月額相当額の合計が48万円を超えないように調整することが大切です。

4. 70歳までの厚生年金加入は在職老齢年金制度に注意を

70歳まで働いて厚生年金保険料を支払うと、年金受給額を増額させることができます。増額される金額は平均標準報酬額や加入期間により決まりますが、老後の生活費を増やす方法のひとつとなるでしょう。

また、70歳まで厚生年金に加入すると、障害年金など手厚い保障が受けられることや配偶者の保険料の支払いをせずに済むなどのメリットもあります。

ただし、在職老齢年金制度による支給停止にならないようにするためには、調整しながら働くことがポイントになるでしょう。

参考資料

木内 菜穂子