今週から7-9月期の米企業決算の発表が本格化します。今回は、米企業決算のポイントを整理し、セクター別の動きや株価見通しの注目点をお伝えします。

米企業決算は5四半期連続増益、ただし伸び率は鈍化

米調査会社ファクトセットによると、S&P500構成銘柄の7-9月期の利益は10月6日現在で前年同期比+2.8%と予想されています。

ただ、事前予想は低めに見積もられる傾向にあり、過去5年を平均してみると実際の業績は予想よりも3%程度高くなっています。たとえば、4-6月期は+6.4%の見通しに対し、実績は+10.3%となっています。したがって、7-9月期の最終的な利益は6%前後の増益となることが見込まれています。

プラスとなれば増益は5四半期連続となりますが、1-3月期の+13.9%、4-6月期の+10.3%からは伸び率が鈍化することになりそうです。

ハリケーンの影響で金融が減益だが、影響は一時的

セクター別の利益ではエネルギー(+110.6%)が異次元の伸びとなり、情報技術(+8.8%)、不動産(+6.8%)、素材(+3.8%)と続き、この4業種が平均を上回っています。

エネルギーの急回復は、前年同期が異例に低かったことが影響しています。エネルギーを除く10業種に限ると利益は+2.8%から+1.0%に低下して、かなり厳しい数字となります。

ヘルスケア(+2.5%)、資本財(+2.2%)、生活必需品(+1.6%)は全体の平均には届いていませんが、エネルギーを除くと平均以上のパフォーマンスとなります。

その一方で、通信サービス(-1.4%)、公益(-2.2%)、一般消費財(-2.8%)、金融(-7.8%)の4業種は減益となる見通しです。金融はサブセクターの保険(-51%)が足を引っ張っており、保険を除くと+3.5%と平均以上の伸びとなります。また、金融を除くと全体の平均も+2.8%から+5.1%へと上昇します。

保険の不振はハリケーンの影響による一時的なものですので、利益の伸び鈍化を数字通りに受け止める必要はなさそうです。また、2017年10-12月期は+11.1%、2018年1-3月期は+10.5%と業績の持ち直しが見込まれています。

海外比率の大きさが業績に直結

7-9月期の特徴として、海外売上高比率が業績と連動している点が挙げられています。

たとえば、S&P500の構成企業の利益見通しは+2.8%ですが、海外比率が50%以下の企業に限ると-0.1%とわずかながらも減益となってしまいます。その一方で、海外比率が50%以上の企業は+7.9%とその差は歴然としています。

背景としては、世界経済が米国経済よりも堅調なこと、為替がドル安となったことが指摘されています。

経済協力開発機構(OECD)によると、世界経済の成長率は2016年の3.0%から2017年は3.5%、2018年は3.7%となる見通しです。一方、米国は2%程度のさえない成長が続く見通しとなっており、最近はドル安傾向ということも手伝って、海外での売上高比率の高い企業の業績が好調となっています。

1年後の株価目標は7.0%上昇、年初来の騰落率は情報技術がトップ

1年後のS&P500の予想値は2730.57と、10月5日現在の2552.07を7.0%上回る見通しです。

実際の株価の動きを見ると、S&P500の年初来の騰落率は9月29日現在で+12.5%、セクター別では情報技術(+26.4%)とヘルスケア(+21.6%)の2強を、素材(+15.7%)と資本財(+15.1%)が追う展開となっています。

その一方で、エネルギー(-8.2%)が唯一マイナス圏に沈んでいるほか、通信(+3.7%)、資本財(+5.8%)の伸びが低調となっています。

7-9月期に限ると、S&P500の+4.0%に対し、情報技術(+8.3%)、エネルギー(+6.8%)、素材(+6.0%)、資本財(+5.8%)と、海外売上高比率の高い業種が上位に顔を並べています。

一方、一般消費財(-1.3%)、不動産(+1.1%)、生活必需品(+1.4%)、通信サービス(+2.3%)、公益(+3.1%)と海外比率の低い業種の株価は低調で、ヘルスケア(+3.7%)も減速しています。

海外売上比率は全体の平均が30%、情報技術(59%)、素材(47%)、エネルギー(43%)、資本財(39%)の4業種が平均を上回り、海外依存度の高い業種となります。一方、通信サービス(4%)、公益(5%)、不動産(17%)、ヘルスケア(18%)、金融(24%)は海外依存度の低い業種となります。

減税とハリケーンの影響との綱引き?

セクターローテーションを考えるのであれば、業績見通しが良く、海外売上比率も高いエネルギー、情報技術、素材、資本財がオーバーウェイトの候補となりそうです。

一方、業績見通しが芳しくなく、海外売上高比率も低い、一般消費財やヘルスケア、生活必需品は避けたほうが無難となりそうです。

業績以外では、減税による企業収益の改善への期待とハリケーンによる一時的な利益の落ち込みとの綱引きが想定できるかもしれません。

また、堅調な海外経済とドル安の恩恵で海外売上高比率の高い業種の株価が好調でしたが、税制改革への期待とFRBによる追加利上げ観測からドルの下落にも歯止めがかかっている点にも留意が必要となりそうです。

株価のバリュエーションは割高、慎重な見方も

最後にバリュエーションをチェックしてみましょう。S&P500の予想PER(株価収益率)は18.0倍と、5年平均(15.6倍)や10年平均(14.1倍)を上回っており、割高感への警戒は引き続き強いものがあります。

たとえば、9月米連邦公開市場委員会(FOMC)前のCNBCフェド・サーベイでは、2017年末のS&P500指数を2515と予想しており、10月の株価は年末の予想を上回って推移しています。企業アナリストに比べるとフェド・ウォッチャーは株価の行方にかなり慎重となっていることが分かります。

今週は12日にシティ・グループとJPモルガン・チェース、13日にバンク・オブ・アメリカとウェルズ・ファーゴと、主要金融機関の決算が発表されます。また、知名度の高いところでは、11日にブラックロック、デルタ航空の発表があります。

さらに、13日には9月米消費者物価指数(CPI)と9月米小売売上高という注目度の高い経済指標も発表されます。インフレ率の上昇で利上げ観測が強まるようだと金融には追い風、自動車を中心に小売が堅調となれば一般消費財に買いが集まることになりそうです。

LIMO編集部