「遺族年金制度」のひとつである遺族厚生年金は、男女によって受給要件に違いがあることをご存じでしょうか。
受給要件に差があるのは「夫は仕事、妻は家庭」という、言わば専業主婦である世帯が、以前までは多かったことが要因の1つとして考えられます。
しかし、厚生労働省の「共働き等世帯数の年次推移」では、共働き世帯の増加に伴い専業主婦世帯が大幅に減少傾向を見せています。
本記事では、遺族厚生年金の男女差について、概要や実態調査をもとに解説していきます。
1. 遺族年金とは?遺族厚生年金の男女差問題について
「遺族年金」とは、国民年金または厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方が亡くなった際に、その方が生計を維持していた遺族が受け取れる年金です。
遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類が存在し、亡くなった方の年金の加入状況などによって、両方またはどちらかの年金が支給されます。
遺族年金は、亡くなった方の年金の納付状況や受け取る側の年齢、優先順位など、受給要件をすべて満たしている場合に受け取ることが可能です。
しかし、遺族年金の1つである「遺族厚生年金」の受給要件には男女で違いがあります。
たとえば、夫が亡くなった場合に妻が30歳以上であれば遺族厚生年金を受給できますが、妻が亡くなった場合は夫が55歳以上でないと遺族厚生年金を受け取れないのが現状です。
上記のように男女で受給要件が異なっており、仮に同じ年収で同額の年金保険料を支払っていた場合でも、受け取れる遺族厚生年金の金額に差が生じてしまいます。
2. 「遺族厚生年金の受給額」の男女差
ブロードマインド株式会社は、子育て世帯で現在就業している人を対象に「遺族年金の男女差に関する実態調査」を実施し、2023年6月9日に公表しました。
調査概要は下記のとおりです。
- 調査概要:「遺族年金の男女差に関する調査」
- 調査方法:インターネット調査
- 調査期間:2023年3月27日
- 有効回答:全国のお子様を持つ20歳~59歳の就業している男女 1000人
結果によると、65.6%の人が遺族厚生年金に男女差があることを「知らなかった」と回答しています。
受給対象である人の半数以上が認知していないことから、受給要件の男女差に対する認識はあまり広まっているとは言えません。
共働きをしている世帯が多い現代では、万が一妻側が亡くなった場合の経済的な影響は大きいものであるため、今後は上記問題点の認識を広げるだけでなく、要件自体の改善案も求められているとうかがえます。