NHKの連続テレビ小説「らんまん」第13週のサブタイトルは「ヤマザクラ」。日本固有種のサクラの原種で山に自生し、昔から人々の暮らしに深く関わってきた落葉高木です。
ドラマでは馴染みの呉服屋に咲くヤマザクラが病気と聞き、主人公の万太郎は元気な枝を接ぎ木して新しい苗を作ります。古き良きものを受け継いだ、新しい時代への移り変わりを感じさせるワンシーン。
今回はヤマザクラの魅力や育て方を紹介します。
【NHK朝ドラ】『らんまん』第13週に登場する「ヤマザクラ」ってどんな植物?
- バラ科サクラ属
- 落葉高木
- 原産地:日本
- 樹高:15~25メートル
- 開花期:3月下旬~4月中旬
- 花色:淡いピンク・白
- 参考価格:400~700円前後(3号ポット苗)
ヤマザクラは山地に自生する野生のサクラです。オオシマザクラ・オオヤマザクラ・カスミザクラ・クマノザクラとともに、原種サクラのひとつに数えられています。
現代では「お花見のサクラ」というと「ソメイヨシノ」ですが、江戸時代に品種改良でソメイヨシノが登場する以前は、ヤマザクラなどの原種サクラを観賞していました。
ヤマザクラの花はやや遅めの4月中旬が見頃。ゆっくりしたペースで生長するので、発芽から開花木になるまで5~10年もかかるといわれています。寿命は200~300年ほど。
サクラの中では比較的樹高が高く、大きいものでは30メートルにも。材質が硬く反りも少ないので、高級家具の上質な木材として利用されてきました。
日本人は暮らしにおいてサクラとの関りが深く、サクラには「豊穣の神様」が宿ると信じられていました。暦がなかった時代にはヤマザクラの開花などを頼りに、種まきや田植え作業を開始。
奈良の吉野山では、かつて役行者(えんのぎょうじゃ)が1本のヤマザクラにご本尊を刻んだことから、御神木として信仰されました。以来吉野山一帯にはつぎつぎと桜が植えられ、今に至っています。
【NHK朝ドラ・らんまん】「ヤマザクラ」の魅力は?
小ぶりで野性味のある花
ヤマザクラの花は直径3センチほどの大きさ。色は白または淡いピンクですが、自然変異で縁が鮮やかなピンク色のもの、淡いピンクから白っぽく変色するもの、散りぎわにピンクがやや濃くなるものなどさまざま。
品種改良された現代のサクラと比較すると、1枝に咲く花数も少なめです。やや地味な印象ですが、野趣あふれる花姿には心ひかれるものがあります。
花と一緒に開く葉
花が咲き終わった頃に若葉が出るソメイヨシノとは違い、ヤマザクラは葉と花が同時に開くのが大きな特徴。若葉は赤紫色・黄緑・褐色など色とりどり。花が散ったあとはほかのサクラと同様に緑になります。
開花時期に葉か出ているかどうかで、ヤマザクラなのかソメイヨシノなのか一目で見分けがつくでしょう。
開花後にできる黒い実
ヤマザクラは花が咲いて散ったあと、5~6月にかけて実もなります。実は直径7~8ミリほどで、色は黒褐色。人間にとってはおいしい実とは言えませんが、ヒヨドリなどの野鳥はこの実が大好物です。
サクラの花が散ると物寂しい気持ちになってしまいますが、ヤマザクラは鈴なりになる実が楽しめるのも魅力のひとつです。