「給与だけで就職先を選んだのは正直間違いでしたね。金融機関はご承知のように規制業種であり、企業間の競争が緩いのです。やはり企業間の競争が厳しい産業、会社内で競争を仕掛ける企業の方がより多くの優秀な人材を育て、輩出するのではないでしょうか。リクルートのような企業がなぜ経営者を何人も輩出するのか、社会人になってしばらくしてから分かりました。もっと言うと、最初の数年でどういった仕事の仕方をするのかは、その後にも影響すると思います。私自身、今も金融機関のノリを引きずっているところがありますから」
就職前にもっとも優先順位の高かった「給与」について、今、A氏はどのように考えているのでしょうか。
「起業したら、金融機関ほどにはとてもではないですがもらえませんよ。ただ、自分で仕事を作っていく楽しさは常にありますし、今はお金よりもそちらの優先度の方が高いですね。どうやって事業を作っていくのかは試行錯誤ですが、若いうちにこのプロセスを身に着ける方が、今後の自分の糧にもなると思っています。3年で辞めるにしても、最初の就職先でビジネスの仕方や周りの巻き込み方を身につけられる環境があれば良かったんですけどね」
「ただし」とA氏は加えます。
「仕事で受注できなかったり、売上が思うように立たない時は、サラリーマンをして安定的に給与をもらえる環境は良かったなぁと思うことがあるのは事実です。まあ、自分で起業を選んだので、そんなことを言っても始まりませんけどね」
「好きなことを突き詰めること」と「安定」とでうまくバランスをとるのは、そう簡単ではないようです。
まとめにかえて
いかがでしたか。給与だけで最初の就職先を選んだA氏の考えは十分ではなかったかもしれません。ただ、たとえ後悔する選択をしてしまったとしても軌道修正は可能だ、ということも、A氏の例は示しているのではないでしょうか。
給与は仕事を選ぶ上では重要な要素ですが、長い時間を費やすことも事実です。大切なことは選択する際のバランスだといえるかもしれません。
LIMO編集部