9月29日は「福が来る」で「招き猫の日」
9月29日は「くる(9)+ふく(2・9)」ということで、「招き猫の日」とされています。飲食店などで、商売繁盛を願って招き猫を飾っているのを見かけることもあります。
猫は奈良時代に、ネズミを退治する役に立つ動物として伝わったと言われていますが、害獣のネズミを退治するだけでなく、福を呼ぶ存在として扱われるようになったのはどうしてでしょうか。
東急電鉄世田谷線の「幸福の招き猫電車」
東京・世田谷の三軒茶屋~下高井戸間を、東京急行電鉄(9005)の世田谷線が走っています。昔は、渋谷~二子玉川間を、玉川線(通称、玉電)が走っていました。元々は、多摩川の河川敷の砂利を都心に運ぶために作られた線で、玉川線の本線といくつかの支線がありました。
本線は1960年代に廃止されましたが、支線の1つが世田谷線として残り、今に至っています。最近はかなり減ったと思いますが、今でも当時の名残で、世田谷線のことを玉電と呼ぶことがあります。
今年は玉電開通110周年にあたります。それを記念して、9月25日から「玉電開通110年 幸福の招き猫電車」というデザイン車両が走っています(2018年3月まで)。
記念するデザインがどうして招き猫なのか。それには理由があります。
世田谷線沿線の豪徳寺は招き猫発祥の地
世田谷線の沿線に、豪徳寺というお寺があります。江戸時代、世田谷線のあたりは、彦根藩の井伊家の所領でした。今年のNHKの大河ドラマ『おんな城主 直虎』では、柴咲コウさんが演じる井伊直虎が主人公ですが、彼女が育て上げたのが、後に徳川四天王の一人として彦根藩の藩祖になる井伊直政です。
2代目藩主の井伊直孝は井伊直政の子です。ある時、世田谷で鷹狩りに出かけた帰り道、当時小さな寺だった豪徳寺の住職が飼っていた白猫が、井伊直孝を寺に招き入れました。すると、その直後に激しい雷雨が起きたそうです。雷の難を逃れることができた井伊直孝は、この白猫に感謝をし、寺への寄進を行い、さらには井伊家の菩提寺としました。
白猫が寺に福を招いたということで、それ以降、「招き猫」として崇められるようになり、いつしか豪徳寺は招き猫発祥の寺とされるようになりました(他にも、浅草の今戸焼など、招き猫の発祥地については諸説があります)。
なお、藩主を手招いたこの白猫が、滋賀県彦根市のキャラクターとして人気を博した「ひこにゃん」のモデルになっています。「ひこにゃん」の経済効果を考えると、この白猫は、現在でも富を手招いているように思えます。
ペットとしての存在感が増す猫
ところで、猫は犬と並ぶペットの代表格です。「ペットを飼うなら犬? それとも猫?」というのはよく聞く議論ですが、最近では、猫のほうがペットとしての相対的な存在感が高まっているようです。
一般社団法人ペットフード協会の「全国犬猫飼育実態調査」によると、過去5年の飼育頭数は、犬は減少する一方、猫はほぼ横ばいで推移してきました。犬の減少により、2016年には犬と猫の頭数はほぼ並ぶところまできています。
犬の減少は、屋外犬の頭数減少によるところが大きいようですが、生涯必要経費の差というお金の面での要因も考えられそうです。
上の調査によると、生涯必要経費は、犬が120.9万円(平均余命14.36歳)、猫が80.9万円(同15.04歳)となっています。
猫の方が寿命は長く、必要経費が安いということは、猫の方が手間いらずで飼いやすいということになりそうです。これは、飼育している犬の約86%が純血であるのに対し、猫の約85%は雑種であるということも背景にあるのでしょう。
猫が招く経済効果
少し前、「ネコノミクス」という言葉がマスコミで取り上げられました。猫の飼育のための必要経費は言うに及ばず、猫関連グッズの販売や猫カフェの利用等々を加えると、「ネコノミクス」の経済効果は2.3兆円を超えるという試算もあるようです。
ペット関連は、モノ消費の性格だけでなく、コト消費の性格も持ち合わせています。上の表を見る限り、猫の飼育頭数は今後大きく伸びるとは考えにくいかもしれません。
それでも、猫のために費やす時間が増える可能性があり、それに関連するサービス等の部分では消費が伸びる余地が残されているように考えられます。
「招き猫」というだけあって、今のところ、犬よりも猫の方が経済効果を招く力は強いかもしれません。