転職情報サイトなどで「ビジネスレベルの英語力」「TOEIC800点以上」などと英語力を条件にする求人情報を見かけて「こんなの無理だ…」と思った経験がある人もいるでしょう。しかし実際のところ転職に英語は必要なのでしょうか。今回は転職経験者や外資系企業勤務経験者などの話をまとめてみました。
「英語が転職に必要」なのは業務に英語が不可欠な人たち。その理由とは
A氏は外資系金融機関に10年近く勤務していました。A氏に英語が転職の際に必要であったかどうかを聞きました。
「外資系だったので、日本と海外とのやり取りはメールにしてもボイスメッセージにしてもすべて英語でした。もちろん外国人の上司や同僚との会話は英語がベースです。同僚の中には日本語ができる外国人という人もいましたが、極めてレアケースですよね。英語ができないと始まりません」
また、国内IT企業から欧州に本社がある外資系IT企業に転職したB氏は次のように指摘します。
「英語については、ポジションや職種によって求められるレベルが異なります。一般社員ならメールの読み書きができる程度でよいこともあります。一方、マネージャー以上であればビジネスレベルの英語が必須です。上司に報告するのに必要なレポートや打ち合わせは英語が標準です。また、マーケティング部門などでは必ずといってよいほど英語での面接があります。面接官が海外にいる場合はテレビ会議で面接が行われます」
国内電機メーカーから国内機械メーカーに転職したC氏は、日本企業への転職でありながら意外な理由で英語力が有利に働いたといいます。
「転職先は海外事業比率や外国人従業員比率が高く、海外赴任経験があり英語も話せる私は有利だったと思います。どちらかというと、英語よりも海外での(英語を使う環境での)業務経験の方が重視された気もしますが」
このようにみると、職種や業種によるということはありますが、各氏ともに社内のコミュニケーションに英語が求められており、英語が操れることで転職が可能になった、また有利になったといえるでしょう。
英語にかける時間がもったいない? 他に伸ばすべきスキルはないのか
では、転職のためだけに英語に磨きをかける必要はあるのでしょうか。
前出のA氏は「職種や業種によっては海外とのやり取りもないでしょうし、教養のためだけに英語を勉強するのはビジネスパーソンの時間の使い方としては効率が悪いのでは」と指摘します。
「インターネットで世界中の情報にアクセスできるようになった今、英語を自由に操れれば情報を入手しやすいのは間違いありません。ただ、国内で仕事をするのであれば、会計や金融知識等のスキルを上げていく方が実際のビジネスシーンで使用する場面は多いのではないでしょうか」と続けます。
A氏は外資系金融機関に勤務する前までは海外大学院へ留学する準備をしており、出願に必要なTOEFLやGMATなどのスコアをたたき出すために数年間を要したといい、これを「もったいない時間の使い方だった」と考えているようです。
「TOEFLは毎月試験が受けられるのですが、スコアが出るまでは彼女との旅行はおろか遊ぶ時間もほとんどなかったですね。また、GMATでは論理力などを見極める試験もあるので、英語だけを勉強すればよいという感じでもありませんでした。決して無駄にはなっていませんが、今となってはもっとやるべきことがあっただろうと思います」
「英語ができるだけ」で年収2,000万円台!?
では、スキルアップを考えたときに英語の優先順位は低くてもよいのでしょうか。
外資系金融機関での勤務経験があるD氏は「年収を上げることが前提なら、英語のスキルアップは効率が良い」と話します。
「正直なところ、外資系企業には『英語ができる』というだけで他のビジネススキルはそれほど高くない人も多いと感じていました。もし、少し英語ができてビジネスで勝負して負けない自信があるのなら、外資系企業に転職すると日本企業にいるより早く出世できるでしょうし年収アップも可能かもしれませんよ。日本企業では考えられませんが、英語ができるだけで年収2,000万円をもらっている人が周りにゴロゴロいましたから」
まとめにかえて
いかがでしたでしょうか。一口に英語といっても、なぜ取り組むのか、その目的は考えておく必要がありそうです。
もちろん英語を実際のビジネスシーンで使用する必要がある人は、常に英語力を高める努力が求められるでしょう。ただ、そうでない人には英語を磨くのにどれほどの時間を要するのか、その時間を犠牲にすることで失うものはないのか、他に伸ばすべきスキルはないのか、そういったこととの比較も重要だといえそうです。
一方で「日本人は英語は苦手」という状況を利用して、英語ができないと入れない会社、たとえば外資系企業に入社し、ビジネススキルで勝負を仕掛けるという考え方もあります。そこで成功すれば日本企業よりも高い年収を手にすることができるかもしれません。
LIMO編集部