奨学金制度が抱える問題
教育機会の平準化を目的としている我が国の奨学金制度の問題点は、貸与型奨学金が多いため、奨学金を利用した学生が返済に追われる、または返済困難に陥ることです。
貸与型奨学金は借りた金額と利子を払うことになるため、卒業後の生活次第では借金地獄に陥る可能性も秘めています。
社会に出た時点で多額の借金を背負い、返済のために半ば強制的に労働を強いられる状況は、先進国の有り様として問題があるのでは?という声も。
奨学金制度の実態に基づく問題点や課題は以下のとおりです。
- 貸与型奨学金が多く、給付型奨学金は少ない
- 返済が困難な場合の救済制度が現状では不十分
- 返済に伴う利子負担が大きい
2024年からスタートする新制度は、奨学金が抱える課題を少しでも解消しようとして施行される制度です。
とはいえ、もう少し大胆な制度改正を行っても良いのでは?という見方もあります。
教育費の目安
金融広報中央委員が運営する知るぽるとより、私立や公立の学校に通った場合の、それぞれの教育費の目安をみていきます。
- オール公立:1043万円
- 大学だけ私立:1261万円
- 高校から私立:1415万円
- 中学校から私立:1690万円
- 小学校から私立:2456万円
- オール私立:2547万円
オール私立とオール公立の教育費の差額は、およそ1500万円もあります。
特に教育費がかかるのは私立小学校となっており、ついで私立大学です。
教育資金計画と子どもの学習計画は、早い段階からある程度想定しておいたほうが良いでしょう。
一般的に奨学金制度は高校や大学の教育機関において整備されていますが、私立の小学校や中学校に進学する際の助成金制度もあります。
奨学金の計画を立てる場合、どの教育期間から私立を選択するのかが重要です。
私立中学校と公立中学校の教育費は、100万円近い差があります。
高校に比べて中学の教育費に大きく差がついている理由として、中学校が義務教育の範囲内であり、より高い教育レベルを求める人が多いということも含まれているかもしれません。
現状では、経済的理由による教育機会の不平等が中学生の段階で成立してしまう可能性が高いです。
文科省は「私立小中学校等に通う児童生徒への経済的支援に関する実証事業」の名目で、修学支援制度を実施していましたが、令和3年度をもって終了しました。
義務教育の範囲内とはいえ、中学教育にも奨学金制度の充実を図っても良いのではないでしょうか。
奨学金のまとめ
今回の修正案では、より多くの世帯で奨学金制度の恩恵が受けられるように、制度を活用できる世帯の年収上限が緩和されました。
中間所得世帯も奨学金の恩恵を受けることができます。
また、大学院の授業料後払い制度は、日本では手薄な研究職への支援拡充となるでしょう。
減税の私学と公立の授業料の差を見ると、貧富の差が拡大するに連れて、教育機会の平等は望めなくなります。
奨学金制度は、さらに制度をあらためて、誰でも使いやすい制度へ刷新してほしいところです。
参考資料
- 文部科学省「安心してこどもを産み育てられるための奨学金制度の改正(令和6年度~)」
- 金融広報中央委員会「子どもの教育費、どう準備する?」
- 文部科学省「私立小中学校等に通う児童生徒への経済的支援に関する実証事業について」
LIMO編集部