先週行われたFOMCで、遂に10月からのテーパリング(量的金融緩和縮小)開始が発表され、加えて年内利上げの可能性も高まりました。一方、市場はリスクオンの状態を維持。金融政策の変更がどのタイミングで市場に影響を与えるのか注目されます。

先週の為替市場振り返り

先週は19~20日にFOMCが開催され、イエレンFRB議長がテーパリングの開始決定を発表しました。

市場では事前に織り込み済みでしたが、金融市場は10月より新しいステージを迎えることになります。また、年内の利上げの可能性も高まったため、テーパリングの影響とともに今後の金融市場のテーマとなる見込みです。

個別通貨ペアでは、先々週後半からの円が売られる展開が継続し、ドル/円は一時112.7円台にまで上昇。週の取引は112円付近で終了しましたが、直近高値の114円を目指す値動きとなりました。

ドルインデックスを見るとレンジ的な値動きであり、実際に9月第1週まで高値更新を続けていたユーロ/ドルは2週続けてレンジ相場を形成しています。先週の相場の主役はクロス円通貨が担うことになったと言えましょう。

ドル/円の過去6カ月間の推移

リスクオンでVIX指数が再び歴史的安値水準に

一方、米国の株式市場は高値更新を続けています。恐怖指数とも言われるリスク指標のVIX指数も下落し、遂には5月・7月に記録した歴史的安値である10ポイント割れの水準に到達しています。

また、VIX指数同様にリスク指標と言える金価格(XAU/USD)も下落が継続しています。

VIX指数と金価格から、金融市場はリスクオンの状態となっていると言えますが、10月からのテーパリング開始は織り込み済みということもあり、先週の段階では金融市場のトレンドに大きな変化は生じていません。

ただし、米国株式市場ではナスダック指数はダウ平均、S&P500ほどの高値更新はなりませんでした。バブル状態が指摘されることのあるナスダック指数が、今後、再度高値更新となるのか注意する必要があるでしょう。

今週の見通し

今週は大きな指標発表等のイベントはありません。24日にドイツの総選挙が行われましたが、メルケル首相の率いる与党が議席を減らしたものの勝利しており、影響はほとんどないと考えられます。

懸念事項はやはり北朝鮮問題です。金融市場では北朝鮮問題への反応が限定的になりつつありますが、米朝間の非難合戦がエスカレートしており、遂には北朝鮮が太平洋上での水爆実験の可能性を示唆する事態に。これが万が一現実になれば、そのインパクトはこれまでとは比較にならず、為替市場に対して大きな影響が生じます。

個別の市場では、114円を目指しつつあるドル/円の動きが見所です。ドル/円にとって114円は5月・7月にも反応しているサポート&レジスタンスであり、114円まで上昇すれば、そこでいったん上昇がストップする可能性が高いと言えます。

ただし、7月高値と9月安値の50%の戻しを既に達成しており、反落の可能性も高くなりつつあります。

また、先週後半には日米ともに株価指数の高値更新がいったんストップしています。今週は引き続き株式市場が高値更新を続け好調を維持するのか、それともテーパリング発表等の影響が生じることになるのか、株価動向にも注意したいところです。

まとめ

FOMCにおけるテーパリング開始決定は予想通りとはいえ、今後の影響がどのように生じるかはまだ不透明です。ただし、米国発の資金が溢れ出ていた状態が終焉を迎えるため、資金の流れがいずれは変化を迎えることになります。

高値更新を続ける株価指数や、下落するVIX指数および金価格の状態から、足元はリスクオンの状態です。この状況がどこまで継続するのか、為替市場のみならず、株式市場や商品市場などの状況を見ながら、変化の兆候を逃さぬよう注意したいと思います。

石井 僚一