銀行口座と連携し、自動的に貯金ができるアプリ

家計簿アプリやクラウド会計ソフトを提供するマネーフォワードが9月19日、自動貯金アプリ『しらたま』の提供を始めました。

『しらたま』のネーミングは、銀行の口座とアプリを連携することで「(しら)ずにお金が(たま)る自動貯金」を表しているそうです。

『しらたま』の貯金方法は毎月決まった額を積み立てるほか、日々の支払いで生じた「おつり」を貯金する方法があるのが大きな特色です。

提携したクレジットカードで買い物をすると、あらかじめ設定した金額(100円、500円、1000円など)との差額を「おつり」と見なして貯金します。たとえば、設定額が500円で、クレジットカードを使って460円の買い物をした場合、40円が自動的に貯金されます。

現時点では『しらたま』と連携できる金融機関は住信SBIネット銀行のみです。つまり、『しらたま』を利用するには同行の口座開設が必要ですが、今後は対応金融機関との連携を拡大していく予定だそうです。

家計簿アプリが急成長している背景にAPI開放あり

マネーフォワードは9月29日に東証マザーズに上場予定です。主力サービスの一つが、口座の残高や出入金の履歴などをスマホで確認できる家計簿アプリ『マネーフォワード』です。

家計簿アプリ市場では、同社の『マネーフォワード』だけでなく、Zaim社の『Zaim(ザイム)』、マネーツリー社の『Moneytree(マネーツリー)』などがいずれもユーザー数を急速に伸ばしています。

もちろん、過去にもパソコン用の家計簿ソフトなどが数多くありました。ケータイとPCを連携させることができるソフトもありました。これらのソフトを使っても「続かなかった」という人が多いのではないでしょうか。過去の家計簿ソフトと最近の家計簿アプリの違いはどこにあるのでしょうか。

大きな特長は、最近の家計簿アプリは、スマートフォンなどの端末で複数の銀行口座を閲覧し、情報を一元管理できることです。

その背景には、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)と呼ばれる技術仕様の普及が進んでいることが挙げられます。銀行がAPIをアプリに開放しているため、家計簿アプリで銀行口座の残高や入出金を照会できるのです。

冒頭に紹介した自動貯金アプリ『しらたま』はさらに、情報を閲覧できる閲覧系のAPIだけでなく、外部サービス内から振込などの更新を可能とする更新系のAPIも活用することで、専用口座での貯金(入金)を実現しています。

金融機関のAPI開放が進むことでサービスの拡充が期待される

APIはソフトウエア間などでのデータ連係を可能にする仕様です。交流サイト(SNS)などで、投稿への「いいね!」の数が他のサイトで閲覧できたり、ユーザーデータを他のアプリで利用したりできるのもSNSサイトがAPIを開放しているためです。

ただ、個人情報の管理や安全性の観点から、多くの銀行はAPIの開放には慎重でした。が、2017年5月に成立した改正銀行法で、家計簿アプリなどのフィンテック事業者について登録制の導入を決めたほか、金融機関に対してAPIに接続できるよう努力義務が課されました。これらを受けて、フィンテックの分野でも、今後サービスの拡充が進みそうです。

前述した家計簿アプリや自動貯金アプリのほか、買い物のおつりを計算し、その分を自動でファンド(投資信託)に投資できるTORANOTEC社の『トラノコ』なども登場しています。

このほか、クレジットカードのポイントで積み立て投資ができるサービスを、クレディセゾンやインヴァスト証券(カード発行はジャックス)が始めています。

APIの活用で、貯金や投資がより身近になりそうです。

下原 一晃