2023年もいよいよ折り返し。今年もあっという間に月日が流れていきますね。

しかし、月日が流れても日本人の給料はここ30年間横ばい状態です。シニア世代が受け取る年金額も、2023年度は若干引き上げられたものの「増えた!」とは言いがたい状況です。そのうえ、社会保険料や税の負担は増える傾向にあり。

世代を問わず「ゆとりある暮らし」を実感できている人はいるのでしょうか。

今回は、年金受給世代の暮らしぶりを確認するともに、年金から天引きされるお金についても整理します。ゆとりのある老後生活に向けた資金づくりについて考えるきっかけにしていければと思います。

1.「日本の公的年金制度」について再確認

日本の公的年金は、1階部分の国民年金と、2階部分の厚生年金から成り立つ「2階建て」構造です。

出所:日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 被保険者のしおり」(令和5年4月)、厚生労働省「日本の公的年金は『2階建て』」をもとに、LIMO編集部作成

1.1 国民年金

国民年金は、原則、日本に住む20歳以上60歳未満の全ての人が加入対象となります。年金保険料は一律ですが、毎年度見直しが行われます。ちなみに、2023年度は1カ月あたり1万6250円です。

加入対象となる40年間(480カ月)、保険料を全て納めた場合には国民年金を満額受給することができます。未納期間がある場合は、満額から未納期間分が差し引かれる仕組みになっています。

1.2 厚生年金

会社員や公務員など、国民年金に上乗せして加入するのが厚生年金です。厚生年金の保険料は報酬によって算出されるため、年収がアップすると年金保険料も高くなります。厚生年金保険料は、勤め先の事業所と折半して負担する形で、毎月の給与から差し引かれます。

厚生年金は、加入期間や現役時代の年収によって受給額を決定。国民年金に上乗せして支給されます。

2. 厚生年金「月15万円超」の女性はどれほどいるのか

厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の受給額は月平均で14万3965円です。

厚生年金は男女別に見ると大きな差があります。男性の平均16万3380 円に対し、女性の平均は10万4686円。平均月額の男女差は約6万円です。

現役時代の年収や、厚生年金に加入して働いていた期間の長さが、老後の年金額に直結していることが如実に表れています。

いまのシニア世代が現役のころは、女性の専業主婦率も高く、育児や子育てと仕事の両立が今よりもはるかに難しかった時代でもあります。

現在は女性の総合職も珍しくありません。働き方の男女差は縮まりつつありますから、私たち現役世代が老後の年金を受け取るころには、男女の年金格差も小さくなっていることが推測されるでしょう。

次は、女性の厚生年金月額のデータを見ながら、ひと月15万円以上を受給している女性は全体の何割くらいいるかを見ていきましょう。

2.1 【厚生年金】女性の年金月額階級別の老齢年金受給者数のデータ

出所:厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

• 15万円以上~16万円未満:15万5836人
• 16万円以上~17万円未満:11万2272人
• 17万円以上~18万円未満:7万6925人
• 18万円以上~19万円未満:5万2191人
• 19万円以上~20万円未満:3万7091人
• 20万円以上~21万円未満:2万4351人
• 21万円以上~22万円未満:1万6322人
• 22万円以上~23万円未満:1万444人
• 23万円以上~24万円未満:6549人
• 24万円以上~25万円未満:3719人
• 25万円以上~26万円未満:2081人
• 26万円以上~27万円未満:1047人
• 27万円以上~28万円未満:488人
• 28万円以上~29万円未満:196人
• 29万円以上~30万円未満:135人
• 30万円以上~:361人

*上記の数字には国民年金部分を含みます。

厚生年金を受給する女性のうち、ひと月15万円以上を受け取る人は約9%。ほんの一握りですね。厚生年金で15万円をもらうのはなかなか困難であるということがうかがえます。

3. 年金からの天引き

厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の受給額は月平均で約14万5000円ですが、それらのすべてを受け取ることができるわけではありません。

実は、年金についても税金や保険料などが天引きされるため、額面と手取額が異なります。ここからは年金から「天引き」されるものについて説明していきます。

3.1 所得税

年金が一定額以上になると、所得税が課税されます。年金収入から各種控除を差し引いた金額に対して所得税がかかります。

例えば、65歳以上で収入が年金だけの場合、158万円以内であれば所得税がかかりません。公的年金等控除(110万円)と基礎控除(48万円)を差し引くと、課税対象額が0円になるからです。

3.2 住民税

住民税も所得税と同じく、天引きされます。前年の収入に対してかかる税金なので、こちらも確定申告を忘れないようにしてください。

3.3 介護保険料

2000年に誕生した比較的新しい制度で、40歳以上の人に支払義務があるのが介護保険料です。年間18万円以上の年金を受給している人はこの制度の対象となりますので、厚生年金受給者のほとんどの方が天引き対象となる制度です。

3.4 健康保険料(国民健康保険・後期高齢者医療制度)

65歳以上で会社の保険に加入しない場合は国民健康保険に加入することとなります。また、75歳以降に加入する後期高齢者医療制度の保険料も年金から天引きとなることがあります。

4. 年金以外の老後の資金作りとは

今回は、厚生年金で15万円以上受け取れる女性がどれくらいいるのか?と、年金から天引きされるお金について具体的に整理しました。

厚生年金の年金額は、現役世代の稼ぎと年金加入期間によって決まります。まずは年金月額15万円をもらうことの難しさが見えてきたのではないでしょうか。また、仮に受給額が15万円に届いたとしても、税金や保険料が天引きされます。実際にもらえる金額は、額面とは異なることを踏まえて、老後資金の準備を進めていく必要があるでしょう。

老後に、だいたいどれくらいの年金を受け取れるかは、「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で確認できます。将来の受給見込額を把握することが、老後に向けた資金作りの第一歩になるといえるでしょう。

参考資料

足立 祐一