6月15日は2ヶ月に1度の年金支給日です。

さらに、2023年度分の年金の初回支給日とあって、その受給額には注目が集まっています。

というのも、厚生労働省が2023年1月20日に公表した2023年度(令和5年度)の年金額の例によると、年金月額は3年ぶりにプラス改定となっているのです。

物価高において、年金の増額は嬉しく感じるものでしょう。

ただし、実際の受給額は個人で異なるものです。さらに「物価上昇ほどには年金の増額率は高くない」という現状もあります。

国民年金と厚生年金の本当の年金月額や、改定の背景を見ていきましょう。

1.【6月支給分から!】2023年度は国民年金と厚生年金が増額

厚生労働省によると、2023年度の年金額の例は次のとおりとなります。

出所:厚生労働省「令和5年度の年金額改定についてお知らせします」

  • 国民年金(老齢基礎年金):6万6250円(1人分)※1
  • 厚生年金:22万4482円(夫婦2人分※2)

※1 2023年度の既裁定者(68 歳以上の方)の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額 6万6050円(対前年度比+1234 円)
※2 平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43万9000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準

年金は、偶数月に前月までの2ヶ月分が支給されます。

つまり、2023年4月と5月分は6月15日に支給されるため、初回支給日として注目されているのです。

2. 3年ぶりの増額でも「実質目減り」となった年金

年金が3年ぶりに増額となった背景には、昨今の物価上昇が影響しています。

2023年度の参考指標は以下のとおりとされています。

  • 物価変動率:2.5%
  • 名目手取り賃金変動率:2.8%
  • マクロ経済スライド(※)によるスライド調整率:▲0.3%
  • 前年度までのマクロ経済スライドの未調整分:▲0.3%
  • 2~4年度前(直近3年度平均)の実質賃金変動率:0.3%

※公的年金被保険者の変動と平均余命の伸びに基づいて、スライド調整率を設定し、その分を賃金と物価の変動がプラスとなる場合に改定率から控除するもの

2023年度の物価変動率は2.5%、賃金上昇率は2.8%の上昇。しかしマクロ経済スライドが働いたことにより、改定率は2.2%にとどまります。

つまり、物価上昇率には追いついていないため、増額とはいっても「実質は目減り」といわれているのです。

これは年金制度を維持するために必要な制度のため、仕方のない側面といえるでしょう。

3.「厚生年金」実際の支給額はいくらか

ここからは、実際の年金受給額を見ていきます。

厚生労働省が2022年12月に公表した「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、まずは2021年度末時点の厚生年金の支給額を見ていきましょう。

厚生年金は収入によって保険料が決まるため、多く稼いだ人、長く働いた人は必然的に支給額が高くなる傾向にあります。

そのため、個人差に注目してみましょう。