還暦が近くなると「老後の資金」や「老後に必要な生活費用」を意識し始める人もいるでしょう。
「老後資金2000万円問題」が少し前に世間を騒がせていましたが、実際のところ還暦を迎えた60歳代の貯蓄額はどのくらいなのでしょうか。
本記事では、プルデンシャル ジブラルタ ファイナンシャル生命保険株式会社(以下、PGF生命)が調査した、還暦人における貯蓄データを参考に、60歳代の貯蓄について解説していきます。
還暦人が考える、老後生活における必要な生活費もあわせて紹介しているので、参考にしてください。
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60歳代の還暦人の貯蓄額はいくら?格差が広がる結果に
PGF生命の「還暦人の貯蓄額」に関する調査では、還暦人の2023年の平均貯蓄額は3454万円となりました。
前年と比較すると332万円の増加傾向となっており、近年の値上げラッシュや不安定な社会情勢の影響から、将来への不安感が強まったことで、貯蓄をする意識が高まっているのかもしれません。
一見、平均額だけをみると60歳代の多くが「老後資金2000万円」を貯蓄できていると思ってしまいますが、金額別のデータをみるとそうではないようです。
PGF生命の同調査によると、2000万円以上の貯蓄がある人は全体の約3割で、貯蓄が300万円未満の人は約4割と、貯蓄額の格差が広がる結果となりました。
上記の結果をみると、老後に向けて十分な貯蓄をしている人よりも、貯蓄ができていない人のほうが多い傾向にあります。
総務省の調査データによると、2004年以降、高齢就業者数は18年連続で増加し続けており、2021年には過去最多の909万人になっています。
高齢就業者が増加している理由はさまざまですが、その1つとして、老後資金が十分ではないため還暦を迎えてもなお「働けるうちは働いておこう」という考えの人が多いと考えられます。
老後の生活で必要な最低限の金額とは?年金だけで暮らしていけるのか
PGF生命の同調査では、「生活費として最低限必要だと思う金額(ひと月あたり)」に対し「平均19万円」という結果になりました。
前年と比較すると、2718円の増加です。
近年続く物価の高騰や値上げラッシュから、家計への負担を考慮し、最低限必要な金額が増えているのではないかとうかがえます。
では、最低限必要な生活費を想定した「19万円」は、年金受給だけでまかなえるのでしょうか。
厚生労働省年金局が発表した調査データによると、60歳代以降の厚生年金保険と国民年金の平均受給額は下記の結果となりました。
公務員や会社員など、厚生年金受給者の場合は月額平均で約14万3000円の年金を受給できますが、最低限必要な生活費を想定した「19万円」には到達していないことがわかります。
さらにフリーランスといった国民年金のみの受給者の場合は、平均で約5万6000円ほどしか受給できず、最低限必要な生活費を想定した「19万円」からは、さらに遠のく受給額となります。
受給できる年金額と最低限必要な生活費を想定して、不足する費用は「老後の貯蓄から補填」または「就労して補う」ことが一般的でしょう。
「老後の生活が不安」「老後資金の具体的な目安が分からない」という方は、平均的な貯蓄額の割合を参考に、自身の年金額と老後の生活費をシミュレーションして、貯蓄額の目安を検討してみることをおすすめします。
60歳代の貯蓄額に格差が生じる結果に。老後の生活はどうなるのか
本記事では、PGF生命が調査した「還暦人における貯蓄データ」から、60歳代の貯蓄について解説していきました。
平均の貯蓄額は3454万円ですが、2000万円以上の貯蓄がある人は全体の約3割、貯蓄が300万円未満の人は約4割と、貯蓄額の格差が広がる結果となりました。
現在の厚生年金受給額は平均で約14万3000円、国民年金受給額では平均で約5万6000円となっており、貯蓄なしで生活していくには少々厳しいように思えます。
老後生活に向けて準備を進めたい方は、まず「いつまで働くのか」「老後に最低限必要な金額はいくらか」を明確にして、そこから年金受給額で不足する金額×老後の年数で、おおよその貯蓄額の目安をシミュレーションしてみると良いでしょう。
参考資料
- 総務省「統計からみた我が国の高齢者」
- 厚生労働省年金局「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- プルデンシャル ジブラルタ ファイナンシャル生命保険株式会社「2023年の還暦人(かんれきびと)に関する調査」
太田 彩子