3連休明けに一気に強まった解散総選挙ムード

9月16~18日の3連休が明けると、日本国内では一気に衆議院の解散総選挙のムードが高まりました。

今秋の解散総選挙の可能性が全くなかったわけではありませんが、7月以降は北朝鮮による軍事挑発行動への懸念が高まり、また、日露首脳会談や国連総会などのイベントも相次いでいたため、不意を突かれたという感は拭えません。これは、解散の可能性が高まったことを受けて、野党各党が慌てて選挙対策に取り組んでいることを見ても分かります。

4年間の任期満了に伴う衆議院選挙は戦後わずか1度のみ

日本の国会は衆議院と参議院から成り立っています。そのうち、参議院議員は6年間の任期があり、3年毎に半数が改選されます。参議院には解散がありませんので、選挙日程は非常に分かりやすくなっています。

一方、衆議院議員にも4年間という任期が規定されていますが、解散があるというのが参議院との最大の違いです。そして、衆議院が解散されるのは、内閣不信任案が可決された時(注:内閣総辞職という選択もある)、もしくは内閣総理大臣が解散権を行使する時に限られます。

なお、解散権という名称は憲法上で正式に存在しないのですが、一般的には浸透していると考えられます。

また、衆議院議員の任期は4年間と規定されていますが、戦後23回行われた総選挙のうち、任期満了に伴う総選挙はわずか1回(1976年)のみです。つまり、衆議院に解散は付きものと言えるのです。

日経平均株価は大幅上昇で年初来高値更新、「選挙相場」の始まり

さて、前置きが長くなりましたが、今回、3連休の間に解散総選挙の可能性が急速に高まったことを受けて、連休明けの東京株式市場は大幅高となりました。日経平均株価は一時3連休前の終値比+411円高まで買われ、終値も同じく約+2%上昇して1カ月半ぶりに20,000円台を回復したのです。

この日は、NY市場の上昇や円安進行、そして、一連の北朝鮮リスクの低減など好材料が多かったのは事実です。しかしながら、他の海外市場に比べて高い上昇率などは、衆議院の解散総選挙が大きなプラス材料になった可能性は高いと考えられます。いわゆる“選挙相場”(または“解散総選挙相場”、“解散相場”とも称します)が始まったと見ていいでしょう。

いわゆる「選挙相場」とはどういう意味なのか?

「選挙相場」とは、簡単に言うと、(総選挙の対策用に)目新しい経済対策や構造改革が打ち出されるのを先取りする形で株価が上昇する相場を言います。また、一般には、この選挙相場は衆議院選挙のみに用いられ、参議院選挙では使いません。

これは、前述した通り、参議院選挙はスケジュールが明確なため、選挙運動が始まる頃には、そうした選挙対策効果を既に織り込んでいるからです。似た事例かどうかわかりませんが、米国では大統領選挙の前年に株価上昇が見られることが知られています。大統領選挙に向けて出てくると期待される経済効果を織り込むためと言われています。

唐突感が強い過去の解散総選挙は全て自民党の圧勝

一方、衆議院の解散は、やや唐突に起きるケースが少なくありません。最近の例では、2005年の“郵政民営化解散”や2012年の“近いうち解散”等が該当します。

また、少し前になると、1986年の“死んだふり解散”や1980年の“ハプニング解散”なども含まれるでしょう。そして、これら唐突感が強い解散後に実施された衆議院選挙は全て自民党が大勝利、しかも歴史的な圧勝を遂げているのが特徴です。さて、今回はどうでしょうか。

2014年の“アベノミクス解散”から強まった事前リーク

実は、前回2014年の解散総選挙から、この選挙相場に変化が見られ始めています。それは、衆議院解散が各メディアによって大々的に事前報道され、実際に議会解散時にはサプライズがほとんどなくなっていることです。

2014年の衆議院解散日は11月21日でしたが、新聞各紙が“決定事項”として一斉に報道したのは11月9~10日であり、一部メディアは既に10月下旬から示唆していました。当時、安倍首相は何もアナウンスしていませんでしたが、首相周辺からリークされたと考えられます。

その結果、解散当日までの1カ月間に株価は+17%の大幅上昇となったにもかかわらず、解散日から選挙当日までは横ばいという結果でした(注:日経平均株価の終値)。解散当日には、選挙相場のみならず、自民党の勝利まで織り込まれたと考えられます。

さらに、選挙当日まで株価上昇が見られなかったのは、前回(2012年)以上の勝利は難しいことを反映していたと見るのは、行き過ぎた分析でしょうか。

“選挙相場に乗り遅れるな!”の進軍ラッパには注意

今回も同じ傾向が見られます。もし、各種報道通りに9月28日に解散したとしても、何のサプライズもありません。逆に、前回のパターンに従えば、その解散当日に向けてさらなる株価上昇が期待できることになります。

いずれにせよ、3年ぶりに訪れる(既に訪れた?)選挙相場です。選挙と株式市場の動きを追いかけるのも興味深いと言えます。ただし、“選挙相場に乗り遅れるな!”という類の“進軍ラッパ”には十分注意したほうがいいでしょう。

LIMO編集部