勤務先にテレワーク制度があるのは雇用者の14.2%
ITなどを活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方である「テレワーク(リモートワーク)」。言葉そのものを耳にするようになったのはかなり前ですが、働き方改革が叫ばれる中で、これまで以上にクローズアップされてきたようにも感じられます。
国土交通省が2017年6月に公表した「平成28年度 テレワーク人口実態調査」によれば、勤務先にテレワーク制度等があると回答したのは、雇用者全体のうち14.2%。現時点ではまだまだ少なく、また、制度があっても対象者が限られるというケースも多いようです。一方「全員がテレワーク」という会社も出てきています。今回は、この会社で働くAさんに話を聞きました。
「全員がテレワーク」。あるベンチャー企業の社員が感じたメリット・デメリット
Aさんは大手企業から「みなし労働時間制」「全員がテレワーク」というベンチャー企業に転職。普段は自宅やシェアオフィスなどで仕事をし、業務上のやりとりはメールやチャット中心で行っているそうです。やるべきことに集中できる現在の仕事環境はとても柔軟性があり、効率的だと感じているそうですが、全員が顔を合わせることが滅多にない現在の仕事ならではの悩みもあるとAさんはいいます。
柔軟な働き方ゆえ? 仕事に追われる
「朝のラッシュ時間帯に電車に乗らなくてよいですし、歯医者さんなどの予約も取りやすいですね。平日の昼間に動きやすいのは大きいです」と、Aさんはテレワークによる日常生活でのメリットをあげます。一方、その柔軟性がマイナスに働くこともあるようです。
「パソコンとインターネット環境があれば、いつでもどこにいても仕事ができてしまうので、深夜、早朝、休日問わず仕事のやりとりがあります」と、Aさん。仕事に追われ、落ち着かないようですが「誰も見ていないので、自分を甘やかすと仕事の効率がどんどん落ちてしまいそうで不安です」とも話します。
急いでいるのに連絡がつかない!?
いつでも仕事のやりとりがあるという反面、顧客や取引先からの要望や問い合わせがあったときに限って関係するメンバーと連絡がつかないこともあるそうです。「全員が時間を自由に使っているからこその問題点かもしれません」とAさんは分析します。
Aさん自身は何か連絡があった時に対応できなかったら、と考えるとオフの時間も気になってしまうそうです。「切り替えと割り切りができないとずっと仕事にとらわれてしまう怖さがありますね」。
細かいニュアンスが伝わらない
Aさんの会社ではコミュニケーション手段として、メールやSlackなどのチャットツールを活用しています。相手の仕事を邪魔しないのがこれらのツールのメリットですが、デメリットを感じる時もあるとAさんは話します。
「一声かければ済むのに文章を書くのは面倒ですね(笑)。まあ、これは大した話ではありません。一番困るのは、ニュアンスが伝わらないときでしょうか。込み入った案件で見落としが起きたり、誤解による手戻りが出たりします。ごくまれにではありますが、行き違いからメールの応酬になった時などに、記録に残るものでそんな言い方しなくても…というようなやりとりもありますね。これは前の会社でもありましたから、テレワークに限らない話なのですが」。
飲み会が減り自由な時間が増えた分、孤独に悩む
全員がテレワークのAさんの会社ではミーティングがあっても終わればその場で解散し、メンバーで飲みに行くことなどはほとんどないそうです。
「昔は終電間際まで残業していた人たちと飲みに行き、結局自腹でタクシー、といったことを繰り返していた時期もありました。お金はかかるし身体にもよくありませんよね。今はそれがないので助かります」。
逆に今は「一日中誰とも会話しない日がある」とAさんは苦笑いします。「今の会社では『もっとミーティングの数を減らそう』というメンバーもいますが、個人的にはこれ以上減ってほしくないですね。非効率だったのかもしれないし、特に戻りたいとも思わないけれど、みんなで集まってワイワイ仕事していた日々が時々懐かしくなります…」。
まとめ
いかがでしたか。「全員がテレワーク」という珍しい事例ではありますが、ここで起きている出来事には、今後テレワークが普及していった際に生じる課題が含まれているのかもしれません。
「平成28年度 テレワーク人口実態調査」では、テレワークのプラス効果として、「業務効率が上がった」(49.4%)「自由に使える時間が増えた」(44.3%)という回答が多くあがった一方、マイナス効果として「仕事時間(残業時間)が増えた」(46.5%)という回答も多く見られたようです。みなさんは、テレワークについてどのようにお考えでしょうか。
LIMO編集部