iDeCoは税制優遇を受けながら老後資金を用意できる私的年金の一種です。
所得税・住民税を圧縮できるなど、メリットの多い制度ですが、一方で60歳まで掛金や運用益を引き出せないというデメリットもあります。
今回はそんなiDeCoのメリットとデメリットを詳細に解説するとともに、iDeCoをおすすめしない人の特徴についても解説します。
iDeCoの利用を検討している人はぜひ参考にしてください。
1. この記事を読んでわかること
- iDeCoのメリット
- iDeCoのデメリット
- iDeCoをおすすめしない人の特徴
【注目記事】つみたてNISAの銘柄はいくつ買うべき?おすすめの投信の組み合わせも紹介【元機関投資家・CFP監修】
2. iDeCoとは
iDeCoは税制優遇を受けながら老後資金を用意できる私的年金の一種です。
具体的には毎月5000円以上の任意の掛金を拠出し、その掛金で投資信託などの金融商品を運用します。
掛金と運用の結果得られた利益は60歳以降に一括ないし年金形式で受け取ることができます(金融機関によっては一括と年金の併用も可能)。
3. iDeCoのメリットは?
iDeCoのメリットは掛金の拠出時や運用時に以下のような税制優遇を受けられる点にあります。
- 掛金が全額所得控除の対象となる
- 運用によって得られた利益を非課税で再投資できる
- 受け取り時にも税制優遇が受けられる
iDeCoは毎月拠出する掛金が全額所得控除の対象となるため、所得税や住民税を圧縮できます。
また、通常投資の利益には約20%の税金がかかりますが、iDeCoの運用益は非課税となります。
さらに、60歳以降に掛金及び運用益を受け取る際には退職所得控除や公的年金等控除の対象となります。
このようにiDeCoにはさまざまなメリットがあり、2023年3月末時点で約290万人が加入しています(加入者数はiDeCo公式サイト「業務状況」より)。
4. iDeCoのデメリットは?
iDeCoにはさまざまなメリットがある一方、デメリットもあります。
iDeCoの主なデメリットは以下の3点です。
- 運用する商品によっては元本が保証されない
- 60歳になるまでは原則掛金も運用益も引き出せない
- 手数料がかかる
それぞれ詳しく紹介していきます。
4.1 1. 運用する商品によっては元本が保証されない
iDeCoで運用できる商品の多くは元本変動型の投資信託です。
元本変動型とは元本(iDeCoでは掛金)が成績次第で増えたり減ったりする金融商品のことです。
大きなリターンが期待できるメリットがある反面、元本割れによって損失を抱えてしまうこともあります。
一方、iDeCoには元本確保型の商品も用意されています。これは元本が減ることはない金融商品のことです。生命保険、損害保険などが該当します。
ただし、元本確保型は大きく増やすことは難しく、長期的に資産を大きくするのであればあまりおすすめできない運用商品です。
4.2 2. 60歳になるまでは原則掛金も運用益も引き出せない
iDeCoは60歳になるまで掛金と運用益を引き出せません。つまり、毎月拠出する掛金の流動性が極端に低くなるということです。
流動性の高い普通預金のようにいつでも引き出すことができなければ、以下のような突発的な事態に対処できない可能性が出てきます。
- 冠婚葬祭による出費
- 子供の進路の変更
- 家電の故障による買い替え
このようにiDeCoにはお金をロックしてしまうという負の側面があることも忘れてはいけません。
4.3 3. 手数料がかかる
iDeCoの利用には各種の手数料がかかります。
例えば、SBI証券のiDeCoでかかる主な費用は以下の通りです。
費用 |
金額 |
対象者 |
加入時/移換時手数料 |
2829円 |
加入者・移換申込者 |
口座管理手数料(毎月) |
171円 |
加入者(掛金拠出者) |
給付事務手数料等(振込1回につき) |
440円 |
給付を受ける者 |
出所:SBI証券「iDeCoをはじめる・移換する 手数料・その他費用」
とりわけ注意が必要となるのが口座管理費用であり、毎月171円の費用がかかってきます。金融機関によっては600円近くになるところもあるので、綿密なコスト計算が必要です。
また年金形式で受け取る予定であれば、受け取りのたびに440円が費用としてかかってくることも念頭においておくべきでしょう。
【関連記事】SBI証券のメリットとデメリットを解説!どのような個人投資家に向いているのか【CFP監修】
5. iDeCoをおすすめしない人の4つの特徴
ここまでの内容をまとめるとiDeCoは以下のような方にはおすすめできません。
- 収入が少ない人
- マイホームや結婚式といったイベントを控えている人
- 転職や起業を検討している人
- 貯金が少ない人
それぞれ詳しく解説します。
5.1 1. 現在収入が少ない人
学業のために正社員からパートへ移行した方など、現状収入が少ない人にはiDeCoをおすすめしません。iDeCoの節税メリットである課税所得の圧縮効果が少ないためです。
基本的に収入が多い人ほど課税所得が多く、その課税所得に基づいて算出されるのが所得税及び住民税です。そのため、収入が少ない人であれば掛金の所得控除参入による所得税や住民税の圧縮効果は小さいですし、非課税の方であればなしとなってしまいます。
また、iDeCoは原則60歳までは掛金や運用益を引き出せないため、収入が少ない方のなかにはこの点をデメリットと感じる方もいるでしょう。
現時点で収入が少ない方は、資産の流動性を犠牲にしてまでiDeCoをやるべきかどうかの検討をおすすめします。
5.2 2. マイホーム購入や結婚式といったイベントを控えている人
マイホームの購入や結婚式といった多くの出費をともなうイベントを控えているのであれば、iDeCoはおすすめできません。
iDeCoは60歳まで掛金と運用益を引き出せないためです。
こうした多大な出費を控えている時期に資産の流動性を犠牲にすべきではないでしょう。
iDeCoのスタート時期をよく検討すべきです。
5.3 3. 転職や起業を検討している人
現在、転職や起業を検討しているのであればiDeCoはおすすめできません。
転職や起業によって収入が一時的にであれストップする方は多いでしょう。
とりわけ起業したてであれば、最初の数カ月間はまったく仕事がないことを覚悟しなければいけませんし、売掛金の入金までは1~2ヶ月待たなければいけません。
このような時は、収入がストップする事態に備えて、手元にできるだけお金を残しておくと良いでしょう。
iDeCoは転職後数ヶ月、起業した方は事業が軌道に乗ってから検討することをおすすめします。
5.4 4. 貯金が少ない人
現在の貯金が少ない人にはiDeCoはおすすめできません。
iDeCoは主な運用商品が元本割れの可能性がある投資商品であることや、原則60歳まで掛金及び運用益を引き出せないことから、余裕資金で取り組むべき制度です。
特に新卒で会社員になりたての社会人の方などは貯金が比較的少ないでしょうから、まずは収入が数ヶ月ストップしても問題ないだけの貯金があるかを確認してからiDeCoに取り組みましょう。
6. iDeCoは60歳以降の老後不安をなくしたい人が検討すべき制度
今回はiDeCoをおすすめしない人の特徴を紹介してきました。
iDeCoは緊急資金としての貯金がある程度あり、かつ仕事が安定してある人であればぜひとも利用を検討したい制度です。
老後2000万円問題に代表されるように「自分の老後は自分でみる」時代へ突入しています。そのための手段としてiDeCoの活用を検討してみましょう。
なお、iDeCoで毎月4万円を拠出して投資信託を30年間運用した場合、年率3%の比較的ローリターンな結果であったとしても、最終的な資産は2330万9475円になります(1年複利計算・手数料は考慮しない)。
公的年金に加えて私的年金のiDeCoで豊かな老後を目指してみてはいかがでしょうか?
なお、iDeCoを利用するのであれば専用の口座開設が必要です。
金融機関ごとに手数料や商品ラインナップが異なるので、よく比較してから利用先を決めるようにしましょう。
7. まとめ
- iDeCoは節税しながら金融商品の運用で老後資金を形成する私的年金
- 所得税や住民税を圧縮できるほか、利益が非課税になるなどのメリットがある
- 一方で60歳まで掛金と運用益を引き出せないため、資金に余裕のない人や大きな出費が控えている人にはおすすめできない
参考資料
MeChoice編集部