2023年5月26日に発表された、木村工機株式会社2023年3月期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:木村工機株式会社 代表取締役社長 木村惠一 氏
会社概要
木村惠一氏:まず、会社概要についてご説明させていただきます。当社は1947年に伸銅品の卸売業として設立し、1953年に空調機器の製造販売業を開始してからは業務用空調を中心に事業を展開してきました。本社は大阪市にあり、大阪城の近くに位置しています。8つの営業拠点と3つの製作所で日本全国をカバーしています。
沿革
沿革についてご説明します。当初は大阪市にて空調機(エアハンドリングユニット)とファンコイルユニットの製造販売を行っていたのですが、工場が手狭になってきたため、1961年に八尾製作所を開所しました。1981年には天井埋め込みタイプのファンコイルユニットを発売し、これがグッドデザイン賞を受賞しました。
1983年から工場向けの空調機開発に注力し、工場用ゾーン空調機の製造販売を開始しました。1988年頃からは制御システムの内製化を開始し、1990年に河芸製作所を新たに開所しました。1998年には楕円管熱交換器を開発しました。この熱交換器(コイル)が当社の大きな強みとなります。
2009年頃にヒートポンプ製品(直膨式エアハン)を開発しました。ヒートポンプ製品は、当社の売上の6割を占めるまでに成長し、制御システムや楕円管コイル、ヒートポンプ製品などの新技術の拡大とともに、売上も拡大していきました。
2022年には高井田工場を新設稼働しています。
事業領域
当社の事業は業務用空調機器の開発・製造・販売を主としており、その領域はスライドに記載のとおりです。左下の産業空調分野の領域は、大規模工場・食品工場・精密機器工場・低温倉庫など、右下の商業空調分野の領域は大型店舗・商業施設・オフィスビルなどです。
中央上の保健空調分野の領域は、医療、福祉施設・学校・図書館・ホテルなどで、これらの領域でそれぞれの特性にあった製品を提供しています。
業界と事業の流れ
当社は建設業界との関わりが深く、ゼネコンからの発注を受けたサブコンが、当社の主要取引先になります。施主から注文を頂戴するケースもありますが、サブコンや商社経由が売上の上位を占めています。
サステナビリティの取り組み
サステナビリティの取り組みについてご説明します。当社は「空気のちからで社会を豊かにする」をスローガンに「エコ」と「ウェルネス」の視点で「社会課題の解決」に真摯に取り組み、社会と自社の成長を目指しています。同時に「自社の変革」を推進し、高い対応力を持ったレジリエンスな体制の構築を目指しています。
具体的にはガバナンス・コンプライアンス・リスクマネジメントを基盤とし、4つのアクションを実践していきます。
「エコ ソリューション」では、省エネを追求した環境にやさしい製品の開発とその普及により社会課題の解決に取り組みます。「エコ トランスフォーメーション」では、再生可能エネルギーの活用などにより自社の変革に取り組み、責任あるものづくりができる体制を構築します。
「ウェルネス ソリューション」では、健やかで衛生的な環境づくりに必要な製品の開発や提案により空気質の価値創造を図ることで、社会課題の解決に取り組みます。「ウェルネス トランスフォーメーション」では、ダイバーシティ、健康経営、ステークホルダーとの協働などにより、自社の変革に取り組み、いきいきと働ける環境を構築します。
【新製品】斜平形楕円管熱交換器(コイル)
エコソリューションの取り組みの中から新製品である「斜平型楕円管コイル」をご紹介します。熱交換器は空調機の中核部品です。当社は1953年のベースボードヒーターの製造をきっかけに空調メーカーへと歩み始めました。それ以降、空調機の最重要部品であるコイル(熱交換器)の研究・改良を重ね、開発してきました。
主なコイル開発として、伝熱管を楕円形状にした「楕円管コイル」で低圧損を実現しました。こちらはこの先の高効率・省エネ空調の基礎となる部品となりました。
さらに熱交換効率を上げるため内側に溝加工を施したヒートポンプ製品用の「溝付き楕円管コイル」を開発しました。2023年には「斜平形楕円管コイル」を新たに開発し、独自の斜平構造で高風速、低圧損化を実現しました。
これらコイルの開発により、これからも環境への負荷を抑えながら、空気質の向上を目指していきます。
【新製品】空調機自己診断情報検索システム
次に、ウェルネストランスフォーメーション関連でDXを活用した新たな取り組みについてご説明します。当社の制御コントローラー「マイティリモコン」に自己診断コード(二次元コード)機能を搭載することで、空調機器の利便性を高めました。
自己診断情報検索システムでは、エラー発生時に、マイティリモコンに自己診断情報が二次元コードで表示されます。この二次元コードをスマートフォンカメラで読み込むことで、「想定原因」や「対処方法」などをスマートフォンで検索することができます。お客さま自身がこの検索情報に従って操作することで、設置先でいち早く状況を確認し、適切な対応をとることが可能となります。
同時に、エラー情報は当社にメールで送信され、エラーログがデータベースに保管されるシステムとなっています。このシステムにより、早期復旧をサポートし、さまざまな環境や用途で使用される業務用空調機器の信頼性向上に寄与するとともに、メンテサービス作業の働き方改革に貢献します。
なお、こちらの機能は今後社内管理システムとの連動を想定し、さらなるサービス向上、品質向上を図っていきます。
財務状況 損益計算書
それでは、2023年3月期本決算の概要についてご説明します。売上高及び各段階利益についてはスライドに記載のとおりです。
事業環境としては、コロナ禍で抑制されていた経済活動が正常化に向かう中で、サプライチェーン対策による生産体制の国内回帰等も加わり、設備投資需要が回復してきました。
一方で、海外の電子部品等の供給制約は改善傾向であるものの、一部の部品では未だ継続しています。
設備投資の状況ですが、製造部門では高井田新工場の稼働、八尾製作所内の一部建て替え完了に加えて、主工場棟及び管理棟の建て替えを現在進行中です。
また、サステナビリティの一環として、2050年カーボンニュートラルに向け、省エネ製品の開発と製造に伴うCO2排出削減のため、積極的に取り組んでいます。
直近3期の業績推移
売上高・営業利益については、2021年3月期から続いたコロナ禍で停滞していた設備投資等の回復により、コロナ禍以前に近い状況まで復調してきました。
2023年3月期 営業利益
営業利益の詳細について前期と比較すると、売上高が伸長したことに加えて、製造工程の見直しによる原価低減、価格改定等への取り組みにより売上総利益が増加しました。
販管費については、人件費は増加したものの、新システム導入等、各種DXによる効率化を推進し、その他経費の圧縮を図ったことで増加を抑制することができました。
財務状況 貸借対照表
貸借対照表についてご説明します。流動資産は前年比8億2,100万円、10.4パーセント増加しています。これは現金及び預金において、高井田工場倉庫棟の建設費用を一部自己資金にて充当したこと及び自己株式の取得により9億1,100万円減少した一方で、第4四半期の売上増加による売上債権残高が増加したことによるものです。
固定資産については、前年比16億9,100万円、23.3パーセント増加しています。これは八尾製作所工場棟の完成により4億2,900万円増加したこと及び八尾製作所の主工場棟と管理棟及び高井田工場倉庫棟の新築工事を開始したことによるものです。
流動負債については、前年比11億9,600万円、32.9パーセント増加しています。これは受注増加に伴う仕入の増加により仕入債務が5億2,900万円増加したこと及び棚卸資産増等に伴う運転資金増加のための短期借入金が6億3,000万円増加したことによるものです。
固定負債については、前年比5億3,500万円、11.8パーセント増加しています。これは八尾製作所一部建て替えのための借入金が3億8,800万円増加したことによるものです。
純資産については、前年比7億8,100万円、11.2パーセント増加していますが、これは利益金額の増加によるものです。
財務状況 キャッシュ・フロー計算書
キャッシュフローの状況です。概要としては、工場関係の設備投資により投資活動の支出が増加し、その資金を営業活動で得られた資金、借入及び期初現金の取り崩しで賄いました。
現金及び同等物は、前事業年度より9億1,100万円減少の13億3,800万円となりました。詳細について、営業活動の結果得られた資金は主に、税引前当期純利益14億2,600万円、売上債権の増加額11億5,000万円、棚卸資産の増加6億6,900万円、仕入債務の増加5億2,900万円、減価償却費3億7,300万円等によるものです。
投資活動の結果使用した資金は主に、有形固定資産の取得による支出19億6,600万円等によるものです。
財務活動の結果得られた資金は主に、短期借入金の増加額6億3,000万円、長期借入れによる収入5億5,000万円、自己株式の取得による支出1億6,600万円、長期借入金の返済による支出1億4,700万円、配当金の支払額9,200万円等によるものです。
2023年3月期 分野別・方式別売上高
分野別・方式別の売上高の状況についてご説明します。まず分野別ですが、当社では、産業空調、商業空調、保健空調の3つの分野に区分して事業展開しています。
産業空調分野については、設備投資意欲の回復によって、暑熱対策や結露対策向けの空調機器導入が堅調に推移したことと、精密機器、食品関連においてルーフトップ外調機や工場用ゾーン空調機が好調で、前年比14億5,000万円増加の61億1,500万円となりました。
商業空調分野については、食品スーパーなどの「換気」ニーズの高まりから結露対策が必要となり、その解決策として外調機導入が進行しました。特に大型ショッピングセンター等が好調で、前年比4億5,200万円増加の20億9,200万円となりました。
保健空調分野については、病院・老健関連が堅調に推移し、前年同水準で着地しました。今後はホテル需要が期待されます。
次に方式別ですが、冷温水式、ヒートポンプ式ともに伸長しそれぞれのシェアは昨年とほぼ同水準でした。
2023年3月期 製品別売上高
製品別の売上高の状況についてご説明します。冷温水式エアハンドリングユニットは産業分野を中心に新築案件が堅調でしたが、全体的には前年とほぼ同水準で着地となりました。冷温水式ファンコイルユニットは設備更新需要を中心に大幅に増加しました。
空冷HP式空調機&外調機は、新築案件が大きく増加したことで、特にルーフトップ外調機が好調で大幅に増加しました。工場用ゾーン空調機は、暑熱対策への必要性から、上期は工期先送りの影響もありましたが、下期に回復し、通期では大幅な増加となりました。
その他の区分はその他の製品や部品、工事を含んでいます。当期は、水冷ヒートポンプ式空調機外調機などの環境負荷の少ないカーボンニュートラルに資する空調機システムの売上が堅調で増加となりました。
受注状況
受注状況をご説明します。受注高は前期から順調に推移し、前年比20.6パーセント増加しました。受注が増加した要因は、コロナ禍により強化された換気により結露等の問題が表面化してきたことで、その改善策として外調機を導入する傾向が出てきたことが挙げられます。さらには、近年の高温多湿傾向から標準的な外調機には留まらず、高機能な外調機を求める傾向が高まってきたことも挙げられます。
受注残高は、受注高増加及び受注から売上までの期間が長期化したこともあり、前年比69.9パーセント増の65億1,900万円となりました。
産業空調分野では、工場用ゾーン空調機やルーフトップ外調機を中心に受注が増加しています。商業空調分野では、商業施設における「換気/カビ対策」を目的とした製品を中心に受注が増加しています。保健空調分野では、病院・老健施設関連の受注が増加しています。
このような環境のもと、前半の受注は堅調に推移しましたが、建設業界における資材不足等による工期の後ろ倒しの影響で受注残が積み上がる状況がみられました。しかし、後半は各社間の工期調整も進み、期末に向けて工期が安定してきたことで売上計上が進みました。
株主還元
利益配分については、将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、継続的に安定した配当を実施していくことを基本とします。
内部留保資金については、今後予想される経営環境の変化に対応すべく、市場ニーズに応える技術開発、製造体制強化等、将来の事業展開に活用していきます。
当事業年度の配当については、上記方針に基づき1株当たり40円の配当を実施する予定です。この結果、当事業年度の配当性向は14.0パーセントとなりました。また、当事業年度においては11万7,000株の自己株式の取得を実施しています。
なお、2024年3月期に係る剰余金の配当予想は、1株当たり40円、配当性向は13.4パーセントとなります。
今後も、経営基盤の強化と自己資本利益率の維持・向上に取り組むとともに、企業価値の持続的成長を図っていきます。
業績予想 2024年3月期 通期
経済情勢は、コロナ禍で抑制されていた経済活動が正常化に向かう中、サプライチェーン対策による生産体制の国内回帰等も加わり、設備投資需要が回復していくものと考えられます。
業界の市場環境としては、新型コロナウイルスの影響により「換気」の重要性が再認識されましたが、単純な窓の開放や換気扇による換気などでは、結露やカビの問題が生じることが明確となったことで、外調機の有用性が大いに認知されてきました。一方で、部材価格の高騰や供給不安等は今期も継続しており、工期の先送り懸念はまだまだ残っています。
このような中、売上高予想は、前年比6パーセント増の124億円で過去最高売上を予定しています。
一方で、利益予想については、八尾製作所新棟関連の経費増、インフレ懸念による原材料価格動向、地政学リスク、大都市部の再開発の一服感等、先行き不透明な状況が続くと想定し、前年比微増を予定しています。
2024年3月期 業績予想 分野別・方式別売上高
分野別の業績予想はスライド左側のグラフに記載のとおりです。産業空調分野では、高井田新工場に設置した「陽圧換気空調システム」のさらなる認知に努め、引き続き人ならびに製品、設備機器等に対する環境改善を中心に積極的な営業活動を展開していきます。商業分野では、熱回収や制御技術の高度化による省エネと省スペースの営業提案を積極的に進めていきます。保健分野では、加湿・換気・熱回収を重視したエコ&ウェルネスで営業を展開していきます。
2024年3月期の当社の事業展開としては、「環境配慮型の一体型外調機/空調機」「当社独自の省エネシステム/製品」「新型熱交換器の活用によるコンパクト化製品」など、当社独自の製品及び今回の新製品を武器として積極的な事業展開をすることで、脱炭素社会の実現に貢献していきます。
その他の取り組みとしては、「高井田新工場のモデル工場として運用継続」「八尾製作所の順次建て替えを推進」を行っていきます。
以上、簡単ではございますが、2023年3月期の決算説明を終了します。最後までご覧いただき誠にありがとうございました。